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65. 新しい仕事は得意分野です(本編)


その日の朝食席で、エーダリアから新規の仕事の依頼を受けた。

ネアの狩りの女王としての名声を借りる形で、狩りに特化した新規の任務であるらしい。

本来であればガレンの魔術師の担当でしかるべきなのだが、場所がウィームであることと、性別上男性が不利になる獲物であるので、ネアに白羽の矢が立ったのだそうだ。


「と言うことは、その生き物は雌なのでしょうか?」

「………いや、雄だ」

「雄なのに、男性ばかりを誑かすのですね。不思議な種族ですね」

「………通常は、雌が男性を誑かす。その個体が特殊なんだ」

「エーダリア様、素人考えで申しますが、それは寧ろ、女性が近付くと怒り狂うのでは?」

「そ、そういうものなのか?」

「女性の私は、そやつにとって競合にあたるわけですから。明確な敵になりますね」

「成程……、奥深いものなのだな」

「エーダリア様は、女性を敵視しなかったのですね。心が広いです」

「待て、どういう意味だ?!」


ガレンエンガディンが過敏になってしまったので、ネアは業務のあらましをヒルドから教えて貰った。

ウィームの西の森に出る一頭の鹿が、夜な夜な男性を森に引き摺りこみバラバラにしてしまうのだそうだ。

かなり好みに煩い鹿らしく、犠牲者はいつも銀髪で容姿端麗の男性に限られていた。


「エーダリア様が危ない……」

「ええ、ですので万が一のことも考えて、エーダリア様は外出禁止にしております」

「いや、遭遇したら排除するくらいの能力はあるからな……」

「その牡鹿を見た者達は、陶然として、夢見心地で付いて行ってしまうそうですよ」

「エーダリア様は確実に危ないですね」

「ネア、お前の中での私の評価は一体どうなっているんだ………」

「綺麗な男性にめっぽう弱い方です」


当初、ウィームの兵達もさして危険視はしていなかったのだそうだ。

しかし階位の高い魔術騎士が一人犠牲になり、ガレンへの協力を仰ぐ形でエーダリアの元に再度情報が上げられた。

ウィームでの情報の集約は二通りあり、問題そのものの初期段階、その上で現場で対応可能なものについてはダリルを通してエーダリアに上げられる。

逆に現場での対応が難しい段階になると、リーエンベルクの騎士宛に通信が入り、その場でエーダリアに直通で情報が届くように精査されていた。

エーダリア自体が魔術の最高権威である為、ホットラインのようなものが設置されいるのだ。

今回はそのホットラインを通じての救助要請で、昨晩遅くに連絡が入ったらしい。


(この報告形態で成り立つってことは、現場が相当優秀なんだろうなぁ……)


指揮系統を現場にも置いているのは、中々に出来ることではない。

魔術の誓約における人材管理方法等で、ダリルが自分の息のかかった者達を配置し、かなり上手く采配しているそうだが、何かあったときに領土を治めきれる領主だからこそ、国はウィームの自由統治を黙認している。

また、エーダリア自身も何かあれば掌握が可能な範囲だからこそ、領民を自由にさせていた。


「現場が優秀なのは勿論ですが、ウィーム特有の気風というものもありますね」


ヒルドがそう説明してくれたので、ネアは詳しく教えて貰うことにした。

あえてその情報を必要とするような政治的な場面には遭遇したくないが、情報は多く持っていた方が便利なのは間違いない。


「ウィームの領民達は、現状の統治の不安定さを知った上で、この曖昧な自由を謳歌するべく、領内の保全にかけては並々ならぬ努力を惜しまない。領主が変われば、統治の在り方を大幅に変えなければならないと彼等は知っているのです。つまり、ウィーム領民にとって、自力で死守する程度にはエーダリア様は理想の領主なのですよ」


「成程、我が身可愛さにも頑張ってしまうくらい、ここは安定している領土なのですね」


「またその努力が可能である程度には、ウィームの領民は優秀ですから」


「確かウィームの学術基準はかなりのものなのですよね」


「王都の二倍以上の学術レベルが義務教育で課せられていますからね。ヴェルリアとは違い、教育費用というものもありませんので、不満が上がることもありません」


ヴェルクレアの各領土は、元の国家の特色を生かした運用が現在も生きている。

あえて統一を強化しないことで、これだけの大国を緩やかに統治している現王は、中々の切れ者なのだろう。

上辺だけの統一にこだわらず、協定というものの曖昧さを利用出来るのだから、柔軟な人物に違いない。


「まぁ、いざとなればディノが素敵な囮になってくれる筈なので、そこを退治しますね」

「ネア、どうしてネアが戦う想定なのかな?」

「鹿さんくらい、くしゃっとやってしまいます」

「ただの鹿ではないと思うよ。夜渡り鹿だろう」

「………ディノ、そやつは私に似ていますか?」

「誰かに似ていると言われたのかい?……似ているかなぁ……?」



まだ傷心気味のエーダリアを残し、ネア達は朝食を終えると件の森に向かうことにした。

名前の通りの特性があるのならば、日中の捕獲は難しいのだろうかと思ってそう訊くと、ディノは微笑んで首を振ってくれる。


「夜にしか人の姿に化けられないから、夜渡り鹿なんだよ。魅力的な男女の姿で人間や妖精を籠絡して、食べてしまうんだ」

「……本気でエーダリア様が危ないところでしたね。さくさく片づけてしまいましょう」

「うん。今回は牡鹿のようだから、日中に捕まえたいね」

「もしや、私のことを心配しているのでしょうか………」

「ご主人様……」


最近、ネアは魔物より恋愛禁止令を受けている。

学んできた恋の定義、苛立ちやハラハラ感を恋の始まりの症状として適応して考えた結果、複数名の該当者が出た為の予防策であり、ネア本人もかなり神経質にはなっているが、まさか鹿にまで恋をするつもりはない。


「ディノ、以前から言っていますが、動物系統は除外して下さい。森の賢者もです!」

「もしかして、畑の賢者は許容範囲だったのかい?」

「言い直します。木の実と恋をするつもりは金輪際ありません!」



しかしこの一時間後、ネアが見事に夜渡り鹿に恋をしたので、そこから暫くネアの発言の信頼度は地に落ちた。


冬の森は相変わらず静謐だった。

真っ白な雪と氷を這わせた見事な木々。

魔術の豊かな土地なので、ところどころに花々が見え、雪深い木々にも色鮮やかな木の実が実っていたりする。

お伽噺の森の様相に、幸せな思いで探索していた時に、その鹿は現れた。



「ディノ………」


ネアが、隣の魔物の腕を掴んで揺さ振るのも致し方ない。

名前や習性から推測していた夜渡り鹿は、しなやかで強靭な美しい牡鹿の姿であった。

さぞや堂々たる姿なのだろうと考えていたら、ディノが発見してくれた生き物は、大型犬くらいの大きさの、羊のようなもふもふの毛を持つ生き物だったのだ。


もふもふの塊の中に、辛うじて澄んだ黒い瞳と、半ば毛に沈んでいる立派な角が見える。

淡い灰色の毛皮に、柔らかなクリーム色に近い金色の胸毛。

是非にそのまま毛布になって欲しい、見事な色彩と質感である。


「ネア?」

「あのもふもふな子に恋をしました!抱きついても許してくれるでしょうか?」

「ご主人様、一度帰ろうか」

「ディノ、あの子がこっちを見ていますよ。クッキーをあげたら食べるでしょうか?」

「ネア、夜渡り鹿が食べるのは人間と妖精だけだよ」

「まぁ、撫でようとしたら噛み付かれてしまいそうですね。捕獲してからならば……」

「よし、ご主人様、一度落ち着こうね」


慌てた魔物がネアを持ち上げると、途端に鹿の目つきが険悪になった。

確実にネアに向けて憎しみを放出しているので、やはりお目当ては銀髪に擬態したディノなのだろう。

素敵毛布的生き物に一瞬で嫌われ、ネアはがっかりする。


「ディノにくっついていると、あの子に嫌われてしまいます」

「すぐに処分するからね」

「あっ、逃げて下さいもふもふ!」

「ネア、逃がしたら仕事にならないよ?」

「被害が出なければいいのならば、部屋の前にあるお庭で飼え…」

「ネア、餌を考えてご覧」

「………そうでした。エーダリア様がいなくなってしまいます」


渋々毛布を諦め、ネアは狩りのモードに切り替える。

胸が痛む話ではあるが、最悪あの毛皮は刈り取って愛でればいいのだと思い直した。

狩りのお作法は、とても残酷なものなのだ。


ネアを片手で抱き上げたまま、ディノはいとも容易く牡鹿との距離を詰める。

重さなど感じていないかのような優雅な動きに、鹿は、ネアが見ていてもわかるくらいに瞳を煌めかせてときめいていた。

ついつい、あまりの愛くるしさに心が揺れてしまうが、時折ネアの方を見ては別鹿のような険しく荒んだ表情になるので、その度に呪縛が解ける。


(そして、確実に敵として認識されてしまった)


あのファンシーな毛布動物に敵視されるのは、なかなかに心にくる。

悪足掻きで微笑みかけたところ、逃亡途中の鹿に牙を剥き出しにされた。


「微笑んで…」

「ネア、威嚇しているんだよ」

「失恋です。あんな鹿、狩り倒してやります!」


恋に裏切られた人間とは利己的なものだ。

ネアは傷心を狩りへの活力にし、己を奮い立たせる。

そして、その丁度いいタイミングで、ディノも夜渡り鹿を拘束してくれた。

どれだけ厄介な生き物だろうと、さすがに半ば真剣に追跡した高位の魔物には敵う筈もない。

雪の檻のようなものに四方を囲まれて、毛布動物はワンワン吠えていた。


「ん?………ワン?」


ネアは目を瞠り、どう聞いても犬としか思えない鳴き声に呆然とする。


「ディノ、これは鹿………?」

「角があるからね」

「寧ろ、角以外に鹿としての要素はありませんよね。羊に見える犬です」

「尻尾が鹿なんじゃないかな」

「……こちらの世界の鹿は、こんなふさふさの尻尾なのですか」


そこでネアは、ディノに下ろしてくれるように頼んだ。

極上の羊のもふもふを持ち、胸毛はミンクのようで、尚且つゴールデンレトリバーの尻尾を持つ生き物を、近くで見てみようとしたのである。

肩のあたりをばしばしと叩くだけの合図なのだが、普段は察してくれる魔物が、なぜかさっと目を逸らす。


「ディノ、自分で歩きます」

「禁止」

「また厄介なものを禁止にしてきましたね。ご主人様を解放して下さい」

「ネアは危ないから、今日はこのままだよ」

「意地っ張りになりましたね。私は公私混同する魔物は嫌いなので、部屋から巣を…」

「………下ろす」

「ディノは良い魔物ですね!」


きちんと出来たので三つ編みを引っ張ってやれば、ディノは嬉しそうに目を細める。

最近は自己主張も強くなってきたので、躾を強化しているところだ。

と言うか、ネアも諸事情により昨晩からかなり必死である。

よりにもよって、ディノは変態業界への参入をネアに強制してきたのである。

どのような世界なのかをショーで知ってしまったネアとしては、恐怖しかない。


(しかも、後半戦はウィリアムさんが目隠してくれたから知らないのに…)


前半だけでもあの破壊力なのだから、到底耐えられる世界ではなかった。

やはり、苦痛は苦痛としてしか考えられない普通の人間なのだ。


(なので、困ったものを強制される前に、上下関係を強固なものにしておかねば!)


「ネア、ちょっといいかい?」

「どうしました?………っ?!」

「お守り代わりにね」


注意を惹いておいて、上を見たネアにふわりと口付け、ディノは満腹の猫のように笑う。

またしてもしてやられたネアは、がすがすと手荒く地面を踏み鳴らした。

今日は朝から三度目なのだ。

祝福や親愛の情を超えて、これはもはや空襲の域と言わざるを得ない。


「おのれ、私は負けません!」

「うん、可愛い」

「頭にきたので、こやつを……………わ………」


その時、ネアは自分がこの鹿の特異性をすっかり失念していたことに気付いた。

この牡鹿は男性を好む生き物で、目下絶賛ディノにときめき中なのである。


(つまり、こやつ的には目の前で仲良くされてるようにしか見えなかったと…)


「ディノ、見る影もないくらいに恨みに満ち溢れているのですが……」

「おや、祟りものになったね」

「祟りもの……?」

「恨みが深過ぎると、獣はこうして魔術で穢れてゆくんだよ。凝りの竜のような成り立ちだね」

「………それは、もしや強化してしまったのでは」


げんなりして檻の中の鹿を見れば、少し怖くなってしまうくらいに雄叫びを上げている。

狂気じみた様子で雄叫びを上げては、ちらりとうるうるの瞳でディノを盗み見ているのが切ない。

灰色だったもふもふの毛皮から、青黒い炎のようなものが立ち昇っていた。


(恋する乙女と、嫉妬に狂った怪物、そして牡鹿)


何とも嫌な組み合わせだ。

一般論よりそう導き出したネアだったが、意外なところで純粋培養であるディノは、その組み合わせの悪さには思い至らなかったらしい。

その反動は、思いがけない形で現れた。



「おや?…………おっと、」


大きな硝子が砕けるようなものすごい轟音がして、ディノはネアを抱えたまま背後にふわりと飛び退る。

檻のようなものが破られたらしく、柵を構成していた雪の塊がばらばらと散らばる。

ディノは何て事はないようにしている飄々とした態度だが、黒煙の魔物の一件で学んでいたネアは、ぞっとして魔物の状態確認に入った。


「随分上等な妖精か、魔術師を食べたようだ。それにしても硬いな……」

「ディノ、怪我をしていたりはしませんか?」

「大丈夫だよ。ごめんね、ネア。少し浮かれていて油断してしまった」

「浮かれていたのですか………?」

「ネアを教育することに、かな」

「大変に遺憾ですので、その権限を早く捨てて下さい!」


そうこうしている間にも、崩れた檻の中から現れた祟りものになった夜渡り鹿は、もうもうと青黒い炎を大きくしている。

足元の雪が溶けないのが不思議だが、炎特有の放射熱も感じないので魔術の火なのだろう。


(あ。足がかなりぶ厚い……)


もふもふの下から覗いている足は太く、大型犬特有の頑強なぶ厚い足先だった。

しっかりと大地を踏みしめ、爪もかなり鋭い。

今更ながらに、これはかなり獰猛な生き物なのだろうと思い知る。

少しの緊張を高めて見守れば、頭の上で小さく笑う気配がした。

その微笑みの温度の低さに、向けられたのが自分ではないとわかっていてもネアもひやりとする。


途端に、大きく燃え盛っていた青黒い炎が弱まった。

炎につつまれた鹿が、じわりじわりと後退する。

その瞳に映るのは恐れだろうかと思って目を凝らせば、ネアは何とも言えない気分になった。


「ディノ、………鹿さんのやる気に燃料をくべているいるようです。ご機嫌で恥じらっていますよ?」

「何で喜んでいるんだろう……」

「素敵な生き物が、自分を見てくれているからでしょうか」

「わかるような気がする……」

「心が通じてしまいましたね」

「壊れてもいいくらいの圧はかけてるけど、やけに硬いんだ」

「もふもふめが硬い…………?」

「そう。魔術の浸透が悪いと言えばいいのかな。何か特化型の固有魔術を持っているのかもしれないね」


その言葉に、ネアは一つ思い当たる節があった。


「確か、数日前に食べられてしまった妖精さんが、固有魔術を持っていたようですよ」

「何の魔術だったかわかるかい?」

「貝殻の魔術だと聞いたのですが、わかりますか?」

「装甲系かな。では縫い取る方がいいかもしれない。ふうん、反撃するつもりなのかな…」

「痛っ!」


ディノの言葉の途中で、ネアは何か小さな硬いものがおでこに直撃した。

慌ててディノがその物体を手に取ったが、加害者はその隙にさっそうと走り去ってゆく。

どうやら、鹿の放った攻撃が大きな木を揺らし、上に実っていた木の実が落ちてきたようだ。

おでこに手を当ててふるふるしているネアを、魔物が一生懸命慰める。


「ごめんね、ネア。魔術の織りを流しているから、危害が加わるようなもの以外は、防壁を設けていないんだ。痛かったね」


その件については、以前にも言及されていた。

守護の微妙なラインというものがあり、全ての感覚をシャットアウトしてしまうのか、或いは微量な甘さを残すのかという悩ましさがあるのだそうだ。

その結果、ネアは頬にあたる雨粒を楽しむことが出来る代わりに、箪笥の角に小指をぶつければかなり痛いくらいのものは自己責任として享受している。

本人的にも、全ての感覚を取り払われてしまうのは逆に怖いので、このくらいは何てことはない。


(………ないのだけれど)


しかし、おでこにわざと木の実をぶつけられて心穏やかにいられるかと言えば、そうでもない。

赤くはなっていないと教えてもらったが、重要なのは、木の実をぶつけられたということなのだ。


(よりによって、小石並みに硬い木の実だった!)


ディノに見せて貰った胡桃くらいの大きさの木の実は、すべすべしているオリーブ色の外皮がとても硬い。

中の種が大きいのか、サイズの割には重量感がありいかにも当たると痛いというような実だった。


「ディノ、これは何の実でしょうか」

「石鹸の実だね」

「……………石鹸」

「さっきの鹿が弾いた攻撃が、上にある木の枝に当ったんだろう」

「…………いいえ、ディノ。あやつは、わざと私に木の実を落したのです」

「そうなのかい?木を倒そうとしているのかと思っていた」

「はい。ばっちり目が合いました。攻撃というより、私への嫌がらせです」


ディノが、ネアのおでこに注意をもっていかれた隙に逃げ出した夜渡り鹿は、周囲をくるりと見回しても見事に気配もなく消えている。


「では、ますます駆除しないとね。装甲の魔術だったら、書架にいる妖精の方が得意なんだけれど、どうしようかな」

「あら、ディノは苦手な感じですか?」

「滅ぼすのは簡単だよ。でも、ネアはあの毛皮が欲しいんじゃないのかい?」

「滅ぼすと毛皮もなくなってしまうんですね」

「跡形もなく消えてしまうからね」

「………むぅ」


つまり、それで攻撃に制限がかかっていたらしい。

見たばかりの見事なもふもふを反芻しつつ、ネアは首を傾げ低く唸った。

確かに素晴らしい色合いともふもふ具合ではあるが、木の実の一件で心穏やかに手触りを堪能出来なくなったような気がする。


「…………ディノ、先程のように捕まえることは出来ますか?」

「うん。それは簡単だけれど、飼うのは駄目だからね」

「いいえ。このままでは私の怒りは収まりません。報復します」

「え、ご主人様…………」


そもそも、この依頼は狩りの女王に与えられた任務であった。

魔物がすっかり過保護になってしまったとはいえ、ご主人様が頼ってばかりはいられない。



「あの鹿に、私の恐ろしさを知らしめてやります!」



拳を握ってそう宣言すると、なぜか魔物は頬を染めた。







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