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薔薇とオルゴール


「一時間だけですよ」


線引きを厳しく制定しないとディノが萎れてしまうので、ネアは微笑んで時計を確認した。

アルテアは、今日はダリルと並ぶ必要がないからか、彼らしい漆黒の燕尾服だ。

雪が降る中、彼が羽織っているのはスエードのような薄手の素材のコート。

ステッチには紫がかった黒い糸を使っており、背面のセンター内側にプリーツを取ったロングコートが、白い手袋に鮮やかに映える。

滅多に出回らない漆黒の氷竜の皮を使っているそうで、真冬でも温かいらしい。



「買い物で一時間なら、それ以外でもう少し融通しろよ」

「一時間で充分だろう」

「………シルハーン」



ネア達が訪れたのは、リノアールの向いにある、上等な蒸留酒を結晶化させたような、茶褐色半透明の石材で建てられた瀟洒な店だ。

以前、街歩きの際に説明されたところによると、この石材は非常に硬質な琥珀の一種であるらしい。

本来の琥珀は柔らかいものだが、これは建材に出来るぐらいに硬い。

その分高価でもあるので、店の外観だけで相応しくないお客を遠のかせる威力があった。

そもそも紹介状のないお客は入れないのだが、アルテアはドアマンとも顔見知りのようだ。

さらりと入店していく彼に続いて、ディノとネアも店に入る。


店内で出迎えた店員は、アルテアを見るなり冷静な表情の目の色だけを器用に変えて、一礼すると上の者を呼んできますと姿を消した。


「イブメリア当日に足を運ぶのは初めてだな」


少し複雑そうな顔で、アルテアが呟く。


「確かに上得意とは言え、祝祭当日に予定なさげに買い物しているのを見られるのは複雑ですね」


「お前、わざと言葉で説明しただろう?」


「……アルテアさん、私はスーツはいりません。お店で、お茶をするだけでも良かったのに」


「一階は、飾りで紳士ものだからな。奥に行くとお前が好きそうなものもあるぞ」



所謂ところの高級テーラーに見えるのだが、よく見ると所々に、雑貨や宝石類も並べられている。

先に入っていた夫婦が、漆黒の扉から奥の部屋に案内されているのを見て、ネアはこの前面の展示が、ただの包装紙であることに気付いた。

思わず入店してしまった一見客からすれば、ここはただの高級紳士服店なのだろう。



「本当は、どんなお店なのですか?」

「注文すればどんなものでも、だな」

「武器から政敵の首まで。アクス商会は何でも揃うよ。ネア、欲しいものがあれば遠慮なく言うといい」

「ディノ、私は欲しい武器も、首を落としたい政敵もいません……」



その時、ふわりと空気が薫った。

そうとしか言いようのない不思議な気配を揺らして、一人の背の高い男が目の前に立っている。

アルテアに慇懃に微笑みかけ、ディノを見て微かに目を細めた。


(あ、この人は、ディノの正体を知っているんだ)


先の言葉を考えるに、顧客として利用したことがあるのだろうか。

そう考えかけて、ネアは目の前の男の黒い瞳が、じっとこちらを見ていることに気付いた。



この世界の闇は、色鮮やかだ。

だから、初めてこちら側で、ひたりと暗いばかりのモノトーンの闇を見た気がする。

そんな印象の男だ。

腰までの長い黒髪に、神経質そうな銀縁の眼鏡。

細身の漆黒のスーツに、美貌の域に入る程に端正だがどこか影の薄い容貌。

アルテアが纏うような艶やかな黒ではなく、無機質に黒い。


(綺麗な人だけど、人形みたい)


だから、見つめられると少し緊張する。

けれど、ネアの緊張をよそにディノもアルテアも特に警戒する様子はない。

顔見知りらしいアルテアが、気安く声をかける。


「驚いたな。イブメリアも店に出ているのか?」

「勿論、私の店ですからね、ここにおりますよ」

「アイザック、今日は俺の買い物じゃない。……そうだな、九番の箱を出してくれ」

「驚きましたね。九番ですか」

「まぁ、イブメリアだからな」


またちらりと黒い瞳がこちらを向いて、ネアは微かに緊張する。

どうも苦手なタイプだなと思いかけて、このアイザックという店員の得体が知れないのは、親しみやすいくらいに平均的な美貌なのに、まったく内側が読めないからだと思い至る。


微笑みを浮かべても、それがすべて作り物に見えるから。


(アルテアさんのものとはまた違う……)


アルテアも、時折作り物めいた大仰な悪意や、わざとらしい劇的な仕草を纏う。

でも、瞳の色にはちゃんと動きがあって、その悪意やからかいを色鮮やかに滲ませているものだ。

ここまで綺麗に無ではない。


ひとまず、店外でこの店員を見たら、是非に関わらないようにしよう。



「本日は、祝祭の儀式ばかりでしょう?」


真紅の絨毯が敷かれた、外観と同じ琥珀作りの真っ直ぐな廊下を歩く。

その最奥に漆黒の見事な扉があり、アイザックはそれを開けた。


アルテアと同じ、白い手袋に包まれた手に漆黒の装い。

同じ色彩で、ここまで雰囲気の違う人というのも珍しい。

長い黒髪は揺れることもなく、ぴっちりと背中に張り付いている。


「まったくだ。レイラが逃げたりなんぞしなけりゃ、適当に顔を出してお終いに出来たんだがな。残り一日足らずとは言え、そろそろ監視役もうんざりだな」


「監視員がお入り用でしたら、ご手配しますよ?」


「頼みたいところだが、別件の見回りも兼ねているから遠慮しとくよ」


「なぜこちらを見るのでしょう?」


わざとらしく振り返られ、ネアは眉を顰める。

見回られる記憶はないし、騒ぎを起こすような予定もない。

大変に不本意な視線の順番であったので、本当に行く宛がないのなら、一時間の制限を延ばしてもいいかもしれないと思っていた細やかな好意は、このまま実行に移すことなく闇に葬り去ろう。


通された部屋は、やはり上客用のサロンのようなところだった。

深い琥珀色と、鮮やかな深緑を基調にしており、アクセントで深紅の薔薇が飾られている。

みっしりとクリスタルを詰め込んだシャンデリアは、小ぶりながら使っているクリスタルの量が半端ではない。

きらきらと光を散乱させる透明度の高さに、もしや特殊な宝石の類なのだろうかと感嘆する。

贅沢な織模様の天鵞絨張りのソファに、螺鈿細工の見事な机。

王宮の贅沢さとは違う、商人としての目で選び抜かれたもの達の素晴らしさだ。


(………部屋のドアノブにダイヤルがついてた……)


金庫を開けるようにカチリと音を立ててから九番と浮かび上がった扉を開けたので、もしや、ここは部屋自体が商品庫のような造りになっているのだろうか。


「九番ですと、二十一点程でしょうか。どのあたりをお出ししましょうか?」

「ひとまず全部出してくれ」

「かしこまりました」



アイザックが並べたのは、どれも一級の美術品ばかりだった。


月光とオーロラの結晶石を、緻密な聖堂の形に彫り上げ、その他の希少な宝石を薄く削って螺鈿細工にしたもの。


拳大の大きさの真紅の宝石は、その中で鮮やかなオレンジ色の炎が燃えており、宝石の内側の結晶がとろりと溶けている。

ぱちぱちと青白い火花まで上がるが、その全ては宝石の内側のことで、手に取ってもひんやりしていた。


見ているだけで複雑に色味が波打ち変わってゆく不思議な織物には、見事な刺繍と宝石の装飾。



その中でもネアが目を奪われたのは、文庫本サイズの四角い金色のオルゴールだった。

シャンパンのような淡い淡い金色の透明な結晶石の小さな箱で、両手で持ち上げられるくらいの大きさだ。


見事な彫刻を施した霧の結晶で内箱があり、黄金の石はその彫刻を透かして見せる。

そして、箱を開くとその中には、夜の霧を這わせた満開の庭園があった。

そう表現するしかないくらい、ミニチュアの見事な花々が咲き乱れている。

花には香りがあり、触れてはいないがほとんど本物の花と変わりなく見える。


(何て綺麗な薔薇なんだろう……)



その真ん中に、真紅の薔薇が咲いていた。


花びらをぎっしり詰めた、クラシックなカップ咲きの薔薇だ。

濃密な闇色の真紅とでも称するべき赤さは、しっとりと深くどこまでも麗しい。


蓋を開けると、複雑で美しいオルゴールが鳴り始め、その薔薇が蕾からほころび、大輪の花を咲かせるまでが繰り返される。



「………すごい、」


びっくりして魅入ってしまったネアの隣で、小さく笑う気配がある。



「アイザック、これにするぞ」


「……かしこまりました。お包みしますので、一度こちらにいただけますか?」


「それと、イブメリア用の貴腐葡萄酒があっただろう?一番いい年のを出してくれ」


「…………何やら、私は珍しい場面に立ち会っているようですね」


「稀有なものなのは確かだ。だから、滅多にないこともするだろうよ」


「成る程」



アイザックは、ネアが机に戻したオルゴールを丁寧に取り上げると包装の為に一度姿を消した。

いつの間かテーブルの上には、飲み物とチョコレートが置かれていて、グラスを傾けているアルテアの仕草で、ネアはそのことに気付く。



「………アルテアさん、あれはもの凄く高価なのでは?」


高位の魔物の価値観には、ディノでだいぶ免疫がついているものの、それでもあのオルゴールがとびきり貴重であることは、ネアでもわかる。

あの品物達は、その中から好きなものを選んでいいと言って見せて貰ったのだ。

いくら前言撤回は不名誉とは言え、こんな風にいきなりプレゼントを貰うばかりなのは気が引けると思いかけて、ネアはふと、そう言えば殺されかけたりと散々だったような記憶が蘇った。


とすれば、慰謝料代わりにさらりと貰ってしまうのもありだろうか。



(エーダリア様からも、顔見知りの魔物や妖精が何かを贈ってくれた場合は、出来る限り断るなって言われたような)


祝福や守護だけでなく、それが品物などであったとしても、一部の魔物や妖精達は、お気に入りの者に何かを与えるという行為をとても好むのだそうだ。

幾つか難点があり、それが決して良い品物だけとは限らないということと、ギフトを受け取ることによってその人外者との間に一種の繋がりが生まれてしまうことが懸念される。

今回は相手がアルテアだったので、大聖堂を出る前にこっそりディノに確認しておいた。

特に害はないので、好きなものを貰っておくといいという返答だったので、有難く貰うことにしたのだが……。


(………それでも、何だか気おくれしてしまいそうになる)


「気にしなくていい。元々、この部屋の商品は俺が取り置きしているものだ」

「と言うことは、アルテアさんが欲しかったものなのではないですか?」

「勿論気に入ったものを取り置きしているが、その全部を自分で使うわけじゃないからな」


少し心配そうにしているのがわかったのか、アルテアに手を頭の上に乗せられた。

頭を撫でるとかではなくただ乗っけられただけなのでむっと眉を顰めると、ディノが容赦なく払い落としてくれる。

大仰に肩を竦めて見せて、アルテアは小さく微笑んだ。

こういう笑い方をしていれば、彼も気安い知り合いのような顔になる。


「大丈夫だよ、ネア。もうアルテアの屋敷には入りきらないから」

「………もしかすると、お買い物に歯止めが効かなくなる気質の人…」

「人間と比較するな。総じて生きている年数が違うんだ」

「そう言われてみれば、そうですね。アルテアさんは、ご長寿の方でした」

「………おい、言い方」


魔物達が生きてきている年数を考えれば、その日々の中で出会う品物など想像出来ない程だろう。

ましてや彼等はどこにでも行けるし、ほとんどどんな物も手に入れられるような階位であれば、尚更に。

収集癖のある魔物がいたりしたら、そのコレクションは大変なことになっていそうだ。

こうして、販売店で取り置きをして貰うのは賢いやり方なのかもしれない。


(もしや、意外に遣り繰り上手?)


「お取り置きの間に売れてしまうこともあるんですか?」


ふと、そういう場合は戦争にでもなるのだろうかと不安になった。

ネアの質問に、アルテアは唇の片端を上げて愉快そうに笑う。


「手付金を払っているから、そういうことはないな。それに、ある程度の資産の運用もアイザックには任せている。俺が気に入りそうなものは、勝手にそこから仕入れていたりもするくらいだ」


「もはや、お店とお客というよりも深い関係ですね」

「…………どうしてお前が言うと、いかがわしく聞こえるんだろうな」

「私の所為にしないで下さいね。それは、アルテアさんにやましいところがあるからでしょう」


アルテアはとても反論したそうにしていたが、そこでアイザックが戻って来てしまったのであえて口を噤んだ。


「………わぁ」


アイザックの持ってきた包装に、ネアは思わず感嘆の声を上げてしまう。

漆黒の革張りの箱に入り、薄い青紫と孔雀色の薄紙に包まれたオルゴールは、グロス加工をした葡萄酒色の紙袋で渡され、持ち手に巻かれた琥珀色のリボンが上品だ。

アルテアが追加で注文していた葡萄酒は、琥珀色の半透明の紙袋に、木箱ごと、緩衝剤代わりの白い薔薇の花と一緒に詰められている。

上等な蝋紙のような琥珀の袋は、光の加減でかすかにきらきらと光りなんとも美しい。

持ち手の部分だけが柔らかな山羊革になっていて、この上なく贅沢な包装だった。


(すぐに解かれてしまう包装なのが勿体ないくらい。写真が撮れたらなぁ……)


「こちらの形で宜しいでしょうか?お届けも出来ますが如何いたしますか?」


「だそうだ、どうする?」

「持って帰ります!この素敵な袋を持ちたいです!」


冷静に言葉を発したつもりだったのだが、どうしても声が弾んでしまって、アイザックの唇が僅かに微笑みを深める。

そこでネアは、いっしょくたに返答してしまったことに気付いた。


「でも、葡萄酒は送って貰わなくても良いのでしょうか?アルテアさん、今日はお仕事では?」

「……ん?それもお前のだぞ?」

「葡萄酒も?」


当然のように戻されて、ネアは目を丸くした。

包装の具合だけ見ても、とても高価なものだとわかる葡萄酒だ。


「ああ。イブメリアの限定で生産されているものだから、ついでにな」


「これは、ついでというようなお品物でしょうか……。でも、とても嬉しいです。美味しくいただきますね!」


ほくほくと二つの袋を受け取ると、横からひょいとアルテアに攫われた。


「略奪………?」


「重いだろう。連れが持つのが普通だが、シルハーンに持たせるのも不安しかないからな」


「ディノはがさつではありませんし、こんな素敵なものをどうこうする悪い奴でもありませんよ?」


「さて、どうだろう」


ここで、ディノがくすりと意地悪に微笑んだので、ネアは目を細めた。


「ディノ、私の素敵な戦利品に悪さしたら、私はとても怒りますよ?」

「…………悪さはしないよ。ほら、持ってあげるから貸してご覧」

「なぜに私に手を出すのでしょう。お荷物はアルテアさんに…」


首を傾げネアの代わりに、一つ溜息を吐いたアルテアが二つの袋をネアの膝の上に戻した。

仕方なく、ネアはその袋のうちの一つをディノに手渡す。


「ネア、オルゴールは?」

「これは、自分で持ってゆきたいなと………」

「ネア?」

「………これもお願いします」


微笑んだ魔物の目がちょっと暗かったので、ネアは渋々そちらの袋もディノに持たせることにした。

一緒に居るとはいえ、これはアルテアからの贈り物であるので、あまり執着を見せない方がいいのかも知れない。

申し訳ない気持ちでちらりとアルテアを窺えば、神妙に頷いてくれた。

ディノのご主人様への許容の狭さについては、彼も着々と学んできたようだ。

貰いものをした上に、気まで遣わせてしまって大変に申し訳ない。



「私は失礼させていただきますので、どうぞゆっくりとされていって下さい」



如才なくアイザックが退出してゆき、ネアはお支払のやり取りが一切なかったことに驚いた。

資産運用も任せているようなので、そこからの引き落としなのかも知れない。


一通り落ち着いてから、ネアは、勿体ないの精神で目の前のグラスを取り上げた。

細長いグラスの中では細やかな泡が立っており、良い香りがする。


(ロゼシャンパンみたいな……)


このようなお店で出るものなので、期待をして飲んだ筈なのに、その期待を十二分に超えてきた。

ぱっと目を瞠って美味しさを公言する顔になったネアに、よしよしとディノが頭を撫でてくれる。

スープの時も思ったが、液体を摂取している時にこの行為は止めて欲しいものだ。


「それが、アクス商会のイブメリア限定のものだ。今年の分で薔薇のシュプリだな。なまじそこらの一流銘柄よりいいものを作るからな、重宝している。アイザックが甘党だから、毎回甘口が多いが」


「……シュプリ。発泡葡萄酒のことですか?」


この世界に来て、ずっと疑問だったことがある。

スパークリングやシャンパンに該当する単語が明確に存在しておらず、不思議だなぁと思っていたのだ。

英語に等しい単語も多いので、スパークリングでも通用はするが、なぜかみんな頑なに発泡葡萄酒という堅苦しい表現を使うので、少し表現し難いと思っていたところだった。


「人間はあまりそう言わないだろう。百年くらい前に、シュプリの魔物が大量虐殺を行ったからな」


「だから頑なに皆さん、発泡葡萄酒と言うのですね」


「響きが宜しくないと思わないか?」


「そうですね。しかし、そういう事情の忌み言葉のようなものであれば、我慢します」


「まぁ、次の世代がそろそろ育つだろう。前回みたいに、寝る間もなく働かされてて、暴走しないといいが」


「………それはもう、シュプリの魔物さん的には暴れてもいい理由なのでは」



ディノのように色の入らない、純白の髪を綺麗な指先が掻き上げる。

手袋を外したのだろうかと思いながら見ていると、鮮やかな赤紫の瞳がこちらを向いた。

ディノがそうであるように、良く見ればアルテアの瞳にも様々な色彩が散らばっている。

手袋を外した指先の爪は白い。

ふと、いつかの真夜中に見た彼の奇妙な眼差しを思い出した。



「そうだな。やはり、見返りは必要だろうさ。誰だって」

「むぐっ?!」


口の中にチョコレートを押し込まれ、ネアは咽そうになった。

突然の攻撃だったので、噛み付いてやる間もなく、指先は回収されてしまう。

押し込まれた紅茶と杏のお酒のチョコレートをもぐもぐと食べつつ、報復を誓った。


「………おのれ、次はありませんよ。指先を失くす覚悟で挑んで下さい」

「大丈夫だよ、ネア。次にこんなことをしたら、腕を切り落としておくから」

「………餌をやっただけで、とんだ荒ぶり具合だな」



溜息を吐き天井を仰いだアルテアを睨みながら、ネアはさてどうしたものかと悩む。

個人的に出かけたことがある以上、不義理はしない主義だ。

カードとささやかなイブメリアの贈り物は、まだ彼に渡せていない。

どこかでポケットにでも放り込んでおこうと、綺麗なバラ色のシュプリに口をつけた。






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