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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

飼い犬

―私の飼い犬は決して噛みつかない。裏切るのは―ある男の独白

作者: なり

 

 愛する人に本当のことを言われるよりも、だまされているほうがまだ幸せなときがある。


 ― ラ・ロシュフコー ―

(フランス貴族、モラリスト文学者)



 離婚した。

 妻が俺の浮気の全てを知っていたとようやく理解した。


 会社にも横領がばれた。もう少しで刑務所行きだったが妻がそれだけはなんとか許して欲しいと頭を下げてくれたので今、こうしてほとんどタダ働き程度で済んでいる。


 さびしくてさびしくて、悲しい。

 ずっと隣にいると信じていた妻も子も居ない。

 夜、くたくたになりながら帰宅して暗くて汚い部屋でコンビニ弁当をもそもそ食べる。

 安いビールを買って毎日、飲んでいても考えるのは過去の楽しかった事だけだ。


 昔から、俺は短く太く生きてさっさっと死ぬ人生をおくるつもりだった。

 …中学生だった頃に親父が事業に失敗して、それまでの環境が180度転換した。家庭は文字どおり崩壊して、親父とお袋の激しい喧嘩沙汰を毎日見てきた。


 高校からは遊びまくった。少し気のある素振りをすれば、女はこちらに好意を寄せてくる。恋愛ゲーム、そうゲームはあまりにも簡単でダチとどちらが先に女を落とすか賭けをしてさんざん遊んだ。



 傲慢で愚かだった、今はそう思う。



 妻には酷い事をした。今更、取り繕っても仕方がない。それだけの事をしてしまったのだ。 離婚してから、彼女の優しさを改めて思う。

 ずっと甘えていた、彼女なら俺が何をしても許してくれると思い込んでいた。


 ……いや、多分馬鹿にしていたのだ。どんなに遊んだとしてもコイツは俺にベタ惚れだから大丈夫だと。


 夜中に眠れず、携帯の中の妻や娘の写真を見る。娘はまだ幼くて女1人で育てるのには苦労するだろう。


 喧嘩もしたし、彼女が悲しんでいるのも理解していた。 ……妻は何時から俺を憎んでいたのだろう。愛情が憎しみに換わっていた事さえ俺には解らなかった。俺が逆の立場なら、もちろん憎むだろうが、彼女は最後まで隠しとおした。




 何時か許して貰えるかもしれない。娘にも会っていろんな事を一緒に過ごすことが出来たら……。


 外は車の音が煩い。部屋の壁が薄くて隣の音楽が勘にさわる。

 部屋の中にネオンの色が差し込んでバラバラに明るさが変化する。


 酔って寝転がりながら、思う。

 妻と子どもと俺が元どおりに幸せな家庭を……。 今度こそはちゃんと……

人生は本人の選択によって変化する。

幸せになるのも不幸になるのも本人次第。

難しいよね、最善の選択肢を選ぶのは。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつか仲直りできるといいですね
2019/10/01 13:31 退会済み
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