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我らが太古の星シリーズ

アンドロイド化

作者:尚文産商堂
惑星国家連合陸軍兵器研究所にて、その研究は始まったとされている。
正確な記録がないのは、すべて秘密裏に進められていたからである。
本書は、研究所所長である岩喜輝信(いわきてるのぶ)所長より命を受け、陸軍少佐である石切香也(いしきりかや)が作成した報告書を基にしている。
多少の誤謬、誤差、その他現実とそぐわない部分があるが、小説化する際に当たり、陸軍より不承認された部分なので、了承されたい。

アンドロイド化というべきか、実際には超長寿命を得るために行われた実験だった。
ガン化を行ったことにより寿命を延ばすものは、今なお実験中であるため、その代用としてのものでもあった。
本実験では、比較的安価な支出で寿命を伸ばそうと考える人々に向けて行うことを予定している。
ガン化の被験者は、今なお生きており、今年で約1500歳を迎えることになる。
感覚上、永久ともいえる寿命と引き換えに、ガン化を平衡状態にするための薬が今なお最高級品であることには変わりなく、かなりの資産家でないとこの方法を取ることはできない。

さらには、アンドロイド化をした兵を動員できれば、そのものたちは本当の意味での鋼の体を手に入れることができる。
これほど便利な兵隊はいないだろう。
どこまでも強く、並列化された意思を持ち、どのような状況であれ静観することができる兵士。
そのことは、軍の行動にも非常に有意義だろう。

陸軍兵器研究所にて、極刑が言い渡され収容されている囚人たちが集められていた。
「お前たちには、これから実験に協力してもらう」
囚人服を着ている人たちを、3人一組になるように、いくつかのグループにまとめた。
「では、実験を始める」
極刑が確定している被験者なので、どうとでもできると、上が決めたらしい。
このなかで、誰が生き残るのか、体質的問題、薬物の問題、その他さまざまな問題を加味して考えなければならない。

担当したグループには、殺人や強盗など、重罪を犯した人がいた。
大体のグループは、こんなやつらばかりだ。
「では、これから注射を打つ」
中身を一切知らさないまま、注射を打つ。
通常ならば、中身の効能などを話し、患者の許可をもらってから打つことになる。
だが、今回の相手はそんな悠長なことをしていたら殺される相手ばかりだ。
手錠や足かせで固定されていて動くことはないが、耳をかじりきられたら大変なことになる。
注射を打つのは、先ほど説明した理由もあり、ロボットが担当することになる。
あらかじめ、注射する薬剤さえ搭載しておけば、自動的に注射を行ってくれる便利な機械だ。
そうやって、一人一人に注射を打っていった。

「注射完了しました」
ロボットが、報告をしてくる。
「了解した。次の指示があるまで待機してくれ」
「了解です」
こちらがそういうと、ロボットはどこかへと移動をしていった。
充電でもしに行くのだろうと、勝手に考えた。

「注射してから1日以内に、何らかの現象が観測されるはずです。その兆候を見逃さないようにしなければ……」
「言われなくてもわかっている」
上司であり、今回の計画の総リーダーでもある沫樹林(まつきりん)少将が、言った。
「現状、安定しています。障害なども観察されません」
合成音声による定期報告が入る。
被験者たちは、全身くまなく確認するため、両手足首に血圧計、血流計をつけられており、たえず血液を観察できるように、右腕内側から一部の血液を常時観察できるように、カテーテルで引っ張りだしている。
それらの全ての情報を1時間に1回、自動音声による伝達が入ることになっている。
「報告、了解」
そのたびに、そう返さなければならないのが、面倒で仕方がない。
「そういえば、アンドロイド化したところで、どうなるんでしょう」
「生身の人間は、兵になれないっていうことだな。ただ、耐久性、持久性、瞬発力など、一切が謎なわけだから、このように実験を行われることになったんだよ」
沫少将が、その後こっそり教えてくれた。
「実は、このアンドロイド化は、その後の超長寿命研究へも役立たれることになっている。現在は、全人類の上位0.1%ぐらいの金持ちしかできないガン化による永久寿命を、より安く行えるようにするのが、目的の一つにある」
何か言おうと思って口を開くと、それを遮られてさらに続けた。
「他にも、治療方法が確立されていない病気などに対しても、アンドロイド化することにより、生きながらえさせることができる。もっとも、一定の年齢制限がかけられることは、すでに分かっているがな」
「治験者なわけですね」
少将はうなづいた。
機器を操作するために、盤へ近付く。
「さて、現状は一切変化なしだな」
少将は、画板に貼られている紙に何かをメモしている。
どうやら、現状を書くための用紙らしい。

最初に変化が訪れたのは、この班ではなかった。
別の部屋にある計器が真っ先に通常と違うことを知らした。
「始まったようだ」
すでに、防疫服を着て完全防護をしている人たちが部屋を封鎖している。
少将とともに、その部屋へ近付くことができず、監視している部屋へ戻る。
「どうなったんでしょう」
「アンドロイド化に失敗した…ようだ」
電話を持ちながら、話しかけてくる。
「どうやら、薬が合わなかったらしい。肝臓と肺にガスがたまって、破裂したそうだ」
「4室が破裂して……6室も不調らしいですね」
少将に聞くと、すでに話は知っていた。
「ああ、ついでに言うと、我々以外は何らかの不調を訴えているそうだ」
「最後の綱は、我々ということですか」
「まったく、こんな重責になるとは思ってもみなかったよ」
電話を置き、こちらを見てくる。
「誰も予想してなかっただろうな。DNA変質化ウイルスを導入した彼らだけが、いまなお正常ということか」
DNAに対して、あるウイルスを介して遺伝子を人為的に入れることで、皮膚を金属的に硬質化させようというものだ。
ラットの実験では、皮膚ではなく毛が硬質化し、ハリネズミのようになった。
人間ではどうなるのかはいまだにわからない。

丸1日が過ぎた時点で、残っているのはこの部屋ともう2、3部屋しかなかった。
「いまも続いている部屋は、基本構成が同じ部屋だ」
少将に言われなくても、十分に理解している。
「DNA変異を基調としている変更ですね」
「そうだ。やはり、DNA自体をいじると、何かしらの効果が得られるようだ。記録すべきことだな」
報告書に、似たようなことを書くのだろう。

さらに1週間経過した。
「現状維持……ですね」
「1週間たっても、一向に変化する兆しが見られないというのはどういうことだろうか……」
少将も、色々考えているようだ。
このあたりは、若いころのくせらしく、ずっと部屋を歩き回っている。
「血圧、皮膚、血管……何もかも変りありません」
「それぐらいみればわかる。問題は、何故変わらないかだ」
ぐるぐると狭い監視部屋の中を動き回られると、こちらも少し迷惑だ。
だが、そんなことは口には出さない。
後が怖いからだ。
「そこで問題なのは、この薬が正確に投与されているのかということだな」
「それは間違いありません。1日3回の注射時には、医務官および研究員立会の元、投薬量を正確に測り投与されます」
「では、何が問題だというのだ」
なにか、モゴモゴと言いながら部屋を歩き回る。
「……量を増やすか」
「ですね」
他に考えられる道はなかった。
医者のように医療の専門的な教育を受けているわけではないので、そのような結論に至るしかなかった。

量を倍にしてから1週間。
変化が現れた。
「皮膚の硬質化が始まっています。今は、ゾル状の物質のように少しもろいですが、いずれは鉄のようにしなやかで堅いものになると思われます」
「了解した」
少将への報告途中で、気になったことを聞いてみた。
「少将は、この実験が終わったらどうされるのですか」
「さて、どうしようか」
あまり深く考えていないようだ。
「それよりも、皮膚の硬質化が始まったということは、ラットの実験では約3日後には全身ハリネズミ化していたな」
「ええ、そうです」
「人間の場合は、それよりか遅くなると考えても、1週間ぐらいか……」
そのようなことをブツブツといいながら、ふたたび部屋の中を歩いていた。

1週間後、予測と同じ結果をたどっていた。
「だいたい、鉄の硬さに近付いてきました」
「問題は、人格がどうなっているかだな」
ロボットが、3人の麻酔用のマスクを取り外していく。
「運が良ければ、明日には起きているはずです」
「他の部屋は、すでに潰えた。この人たちだけが、残されている。これで失敗すると……」
少将は、何か脅すような声で話しかけてくる。
「そう言っても、成功するかどうかは、五分五分ですよ」
「……やってみなければわからないこともある。やってみたところでできないこともある。どうなるかは、神のみぞ知るって言ったところか」
どこか遠くを見ながら、少将は言い切った。
「それよりも、明日にならないとわからんとは。もっと早くわかる方法はないのか」
「いいえ、これが最も最善であり、唯一の道です」
本当は、別の道もあるのだが、面倒になるので言わなかった。

翌日、唯一起きたマッカリー・ウィルコップにガラス越しに話を聞く。
「調子はどうだ」
「……他の奴らは」
「死んだよ。この1カ月以内に、実験に参加した人たち全員がね」
「そっか」
あっさりとあきらめがついたようだ。
「それで、俺だけが生き残ったっていうことか」
「そういうことだ」
向こう側との話は、マイクを通して行われていた。
「それで、俺はこれからどうなるんだ」
「その体で、どこまで耐えれるかの耐久性のテスト行うことになる。9ZOL惑星へ向かい、どのような負荷に耐えれるのかを実験してもらう」
唾を床に吐き捨て、マッカリーは言った。
「つまりは、ていのいい人体実験っていうことか」
「将来にわたり、君の名前は残されるだろう。それだけは分かっている。これからのことは、我々ではなく、法務部の人たちに一任されることになる。おめおめ、脱獄するなどというばかげた考えはしないように」
「するもなにも、刑務所惑星じゃねえかよ。脱獄自体が不可能だと思うぜ」
苛立っているように見える。
だが、何か考えてるようにも見える。
「分かった」
堪忍したかのように、思いつめた表情で全身の力を抜いた。
「それで、調子のほどは?」
「まあまあだよ。どうってことねえさ」
はっきりと言い切った。
つまりは、何かを胸中に忍ばせているということなんだが、そのことを全く気付かせないようにしているようだ。
「そうか。ならば、引き渡さないといけないということだ」
そういうと、マッカリーがいる部屋の扉が開かれ、法務部の服を着た人たちが入ってきた。
「お疲れ様です」
少将が言うと、敬礼を返してきた。
「書類は、あとで回してください。彼を頼みましたよ」
「了解しました」
たったそれだけの会話だったが、言いたいことは終わったらしい。
そのままマッカリーが縛られているベッドごと、運ばれていった。

我々の話は、ここで終わる。
その後のことは、新聞や、他の人からのうわさで知ることになるだろう。
仕事も終わると、いつものように家でビールを飲んでいた。
「ふぅ……」
いつものようにビールを飲み干すと、天井のシミを見た。
いつのまにかできたそのシミは、日一日形を変えてるような気がする。
「さて、報告書の原案を……」
いつも使っているカバンから、報告書に書く分のメモを取り出す。
少将に書いたのを渡し、少将がまとめたものを議会へ提出するのだ。
内容は、上に書いた通りであった。

詳しいところがところどころぼかされているが、当時の人々からの聞き取りによって判明した分は、書かせて頂いた。
陸軍情報部報告書取りまとめ課課長、井羽航須(いわこうす)情報少佐。
報告書について、さまざまな情報を教えて下さった石切香也中佐。
1時間に1回はメールで質問を送り、そのたびに真摯に対応していただいた惑星国家連合軍務総省陸軍庁長官イワンフ・ゴルザレヌ陸軍大将。
あなた方がいなければ、この作品は書けなかった。
誠にありがとうございます。

最後になったが、この小説を穴があくほど見ていただき、訂正や書きもらしを指摘していただいた沫樹林中将。
あなたがいなければ、今でもこの作品は陸軍検閲課でとどまり続けていただろう。
それに、自分が書いている間にストレスがたまった時に癒してくれた三毛猫のタマとラブラドールのポチにも感謝を。
君たちがいなければ、おそらくベランダから裸で飛び出していただろう。

最後になったが、これを読んで下さった全員に感謝を。

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