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僕とボクの日常攻略 作者:水無月龍那

課題7:僕とボクの日常攻略

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課題7:僕とボクの日常攻略 2

 テオの一言で、リビングに降りたのは沈黙だった。
 説教する気は失せてしまっているし、テオとノイスちゃんの目的も分かった。
「ん……どうしたもんかな」
 思わず零れた言葉に、テオの首が傾く。
「何か悩みごと?」
「まあ、色々頭の痛いことが続いててね……」
 話してどうにかなることでは無いし、そもそもしきちゃんに承諾を得ないまま話すのもよくない。
 が。
「多分、ボクのせい、なんです……」
 彼女が静かに口にした。
「……?」
 テオが不思議そうな顔をする。
「ウィル」
「むつき」
「……ムツキ」
「良し」
「で。どうして彼女のせいなんだい?」
「それは……」
 と、しきちゃんに視線を向ける。彼女は「話して良いです」と答えるようにこくんと頷いた。
 だから僕は、二人に軽く説明をする。
 柿原に話した時のように、順を追って。
 夜の公園のこと。しきちゃんがこの家に住むようになった経緯。
 しきちゃんの過去と、その血の呪いの事。
 それで。
「それで……僕が、彼女にひどい八つ当たりをして」
「それは血のせい、なんだろう?」
「うん」
「で、今はノイスが刺したからその呪いが薄れてる……?」
 話が早い、と僕は頷いて台所に置いてるペットボトルに視線を向ける。
「うん。今は全体的な血の量が減ってるから。普通の人なら出血多量で死んでたところ」
「ウィルが吸血鬼で良かったね」
 訂正は諦めた。
「……そうね」
 テオの言葉にノイスは少しだけ残念そうに頷く。
「僕の身体は誰にも渡さないよ」
 僕はテオと向き合い、しきちゃんに言葉を向ける。
「うん。分かってる。俺もこの身体は不便だけど……捨てる気は無いから」
 テオも僕と向き合い、ノイスちゃんに言い聞かせるように頷いた。
「でも。お兄さ――」
「でも、テオ――」
 二人の言葉が重なって、ぴたりと止まる。
「うん?」
 僕とテオも一緒に隣を向く。
「……先に言いなさいよ」
「いえ、先に、どうぞ」
 二人ともぎこちなく先を譲り合う。
 僕とテオは、そのようを暫く見守ってみる。
 根負けしたのはノイスちゃんだった。
「分かったわよ。私が先に言うわ。テオ。貴方、日本に来て何回その身体縫い直してると思ってるの? そのままだと身体保たないわよ?」
「はは……そうだね。その時は。まあ。受け入れるよ」
「馬鹿!? 馬鹿なの!? もう一度言うわ! 馬鹿なの、テオ!?」
 ノイスちゃんは立ち上がり、捲し立てる。
「私は、わたしは……! テオに、一緒に居て欲しいから、一緒に居て嬉しかったから、身体を縫い合わせて、一緒に居て、ここまで着いて来てるのよ!? それなのに身体が朽ちてもいいですって? そうしたら……私――っ!」
 彼女の剣幕に思わずテオは黙る。
 僕としきちゃんも、彼女から視線を離せずにいた。
 その視線に気付いたのか、ノイスちゃんは「あ」と言うなり急に不機嫌そうな顔でぽすんとソファに座り直した。が、その顔は真っ赤だ。
 テオはというと。
「ノイスはどうしてそこまで俺の面倒を見てくれるのかな」
 彼女の顔が赤い理由を察せ無いままそんな質問を投げつけた。
 ノイスちゃんの顔が一層赤くなる。色白だから、赤と言うよりバラ色の頬、と言う言葉がよく似合うとか、少しだけ現実逃避じみた感想が浮かぶ。
 テオは昔からこう言うヤツだ。
 人への気遣いはできるくせに、察しも良いくせに。
 こういう所は途端に鈍いから、誰にでも優しい。
「だって、テオは……私を見ても怖がらなかった、初めての人だもの」
「……なるほど。そっか」
 テオは笑って彼女の頭をくしゃりと撫でる。
「ありがとう、ノイス」
「いーえ」
 そうして不機嫌そうな視線をしきちゃんへ向ける。
「座敷童さん」
「え、ボク、ですか……?」
「そーよ。ほら。私は言ったんだから、貴女も言いなさいよ」
 彼女の言葉にしきちゃんは少しだけ僕の方を向くように座り直す。
「お兄さんの中に居るあの人は……どうなっているのですか?」
 アイツの心配か、と少しだけもやっとしたのは見なかったことにして、そうだな、と答える。
「血と一緒に流れ出たみたいで随分存在は薄れてるかな。夢の中でも黒い影になってた。だから、今は前ほど辛くはないよ」
「そうですか。それでは、血が足りないのではありませんか?」
 首を傾げた拍子に灰色の髪がさらりと流れ、首にうっすら残った傷が見えた。
「血は……うん。確かに欲しいけどね」
 なんか罪悪感が。とは言えなかった。
 同時に、彼女の血が飲みたくて仕方が無くなりそうになる。
 が。
「ウィルは昔から女性の血、好きだって言う割にあんまり手をつけなかったよね」
 突然挟まれたテオの言葉に思考が止まった。
「え。そうなのですか?」
 しきちゃんがぱちりと瞬きをして問う。
「……テオ」
「うん?」
「そう言う余計な情報漏らすのやめようか」
「え。彼女を安心させようと思ったのに」
「……そうだね。うん」
 色々遅いんだよ。と文句を言いたい衝動はグッと堪えた。
 彼女の血はおいしくて。やみつきになりそうで。
 きっとあいつが居なければ、後でもらうと言ってしまいそうで――と、ふと気付く。
「……いや、しきちゃんから僕に呪いが移ってるんなら」
 もしかしたら、彼女自身にあいつはほとんど残っていないのでは。
 僕の中からも気配が薄れた今。その壁は無くなったのでは。
 しきちゃんを見ると、彼女は少し考えて、どうでしょう、と呟いた。
「ボクには、その人の気配が分かりません。だから……飲ませて良いのかも」
 わからないんです、と彼女はしゅんと視線を落とした。
「ん-。それなら、大丈夫じゃないかな」
 そう言ったのはテオだった。
「うん? どうして分かるのさ?」
「俺さ。君の魂の匂いを辿ってここに来たから」
「よし、ちょっと詳しく話そうか」
「え。うん。いいけど……」
 そうしてテオは僕の魂の匂いについて、話し始めた。
ノイスはツンデレであってほしい。
なんだかんだいってしきと仲良くして欲しいなあと夢を膨らませています。
その際、男性陣は放って置いても良いですから。
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