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僕とボクの日常攻略 作者:水無月龍那

課題3:僕とボクの体調管理

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課題3 幕間

 夜遅い街は相変わらず眩しい。
 ノイスは繁華街をテオと共に歩きながら、チカチカと光る看板に視線を上げる。
 多少はこの国の言語も勉強したし、滞在も長い。
 だから簡単な読み書きや会話は出来るようになった。
 それでも、見上げた看板に書いてある言葉の意味は分からなかった。
 まず問題なのはノイス自身の語彙が少ないこと。
 読めたとしてもそれが何を意味するのかは分からない。日本語という物はシンプルなように見えて複雑で、意味が多様で、おかしな位の情報をその中に秘めている。
 本当に理解するためにはもっと触れる必要があるに違いない。
「あれは……なんの看板なのかしら……」
 はて、と首を傾げて隣のテオに聞いてみようと振り返る。
 と、テオはどこか別の所を見ていた。
「ねえ、テオ?」
 声を掛けても彼は聞こえてないようだ。
「ねえってば」
 振り向かない。もう一度――と、口を開いた瞬間、彼の口元が動いた。
 笑顔だ。
 背の低いノイスには何も見えない。テオだけに見える何かが、嬉しいらしい。
「テオ、どうしたの?」
 何か見つけたの? と袖を引くと、彼はようやく気付いた様子で視線を下ろした。
「ああ。すまないね」
「もう、テオったらいつもそう。興味深い物を見つけたら周りが見えなくなっちゃうのよ」
 ただでさえ髪の毛で隠れてるのに、と頬を膨らますとテオは「そうだね」と笑った。
 くしゃり、と頭を撫でたその手がそっと背に添えられる。
「今日はもう帰ろう」
「? いいの?」
 時計を見ると、いつもより二時間ほど早い。
「うん、良いんだ」
 帰ろう、とテオはノイスの背を押す。
 そうして数歩歩くと、テオの手は背を離れた。

 □ ■ □

 宿に帰ってくると、テオはベッドの上で読書をし始めた。
「それにしても、今日は随分速く帰ってきたわね」
 テレビのチャンネルを回しながらノイスが問うと「うん、まあね」とテオは本から目を離さずに頷いた。
「やっと見つけたんだ」
「――え?」
 見つかったの!? と、思わずリモコンを放り投げ、テオのベッドへ飛び乗る。
 読んでいた本を取り上げ、その視線の下に潜り込む。
「見つけたって。ずっと探してた彼?」
「そう。ウィル。なんか体調悪そうだったけど、あの土に染みたような血の匂いは」
 間違いないよと頷いて「それにしても」と言葉を続けた。
「あの匂いだけはちょっとどうにかならないかな……。近寄りすぎると気分が悪くなる。あれじゃあしばらく近付けないな」
「じゃあ私がコンタクトしてみる?」
「そうだね……それが良いかな。まずは、あの匂いの原因を絶たないと」
 そうね。とノイスは考える。
 彼の言う匂いが血に起因するのなら。
「血を抜いてしまえば薄まるかしら?」
「ああ、それは良いかもね」
 テオはベッドに倒れ込んで言う。顔を覆っていた髪から、瞳が覗く。
「まずはウィルと話がしたい。でも、きっと彼は警戒するから――弱らせてからが良いな」
 うん、それがいい。とテオはくすくすと笑った。
「ただ」
「ただ?」
「この近所に居ることは分かったけど、詳細な場所までは分からない。だから――もう少し、絞り込まないとね」
「そうね。計画は周到かつ繊細に。行動は盛大かつ大胆に」
 さっき放り投げたリモコンをふわりと浮かし、自分の手元へ勢いよく飛ばす。
 それをぱし、っと受け止めて、ノイスはにっこりと笑った。
「大丈夫。うまくいくわ」
 そうしてチャンネルを再び回しながらノイスは「そういえば」と話題を切り替える。
「今日の散歩でとっても素敵な教会を見つけたの。小さいけれどもお庭がとっても綺麗なの」「へえ」
「ね。今度行ってきても良いかしら?」
 ノイスの声はとてもうきうきとしていたのだろう。テオがくすりと笑ったのが聞こえた。
「ちょっと。そこは笑う所じゃないわ」
「いや、なんだか楽しそうなノイスは久しぶりだと思って」
「そうかしら?」
「そうだよ。日本に来て興味深そうな事は多かったけど、そんな声は久しぶりだ」
 まるで。と一旦言葉を切って。
「そうだな。まるで――どこにでも居る少女みたいだ」
「あら。私、その通りよ? 失礼しちゃうわね」
 頬を軽く膨らませると、「気を悪くしたらすまないね」という声だけが悪気無さそうに返ってきた。
「それで……教会だっけ。まあ。うん。良いんじゃ無いかな」
 行っておいでよ。と言うテオの声は少しだけ眠そうだった。
幕間のふたり。

いかに便利に遠くにあるリモコンを取れても、妖怪リモコン隠しにはかなわない。
対象物が見えないとどうにもならない。
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