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ある旅人の手記 作者:まみや ろも
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プロローグ

旅に出よう。

そう、思った。



特に理由はない。


別に、会社の上司ともめているとか
失恋をしたとか
借金で首が回らないとか。


そういう訳でもない。



私好みの車が見つかったこと。

古いフィルムカメラを頂いたこと。

小さなテントを物置から発見したこと。

長年愛用していた自転車が壊れたこと。

長年愛読していた小説が完結したこと。



そのどれもが、旅に出る理由にはなっていない。
しいていえば、背中をほんの少し押してくれただけ。




行きたい所もある訳では無い。
つまり、目的地もない。
何かを見つけるつもりも無い。
もちろん、自分を探すつもりもない。




ただここから、次の場所へ。
そしてそこから、次の場所へ。







ここではないどこかからそこではないどこかへ。







朝起きて、ボヤけた天井を見ながら。






旅に出よう。

そう思った。
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