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91.ラッガナイト城塞防衛戦14 ~天罰~

「戦いが始まってから、結構時間が過ぎたでありますな」


飛んで来た魔法を剣戟で打ち払ったカーネは、ぽつりと言葉を漏らす。


それを、ものまねをギフトとするミミカが、


「過ぎたでありますなー!」


と繰り返した。


飛んで来た矢をワイヤーで絡め取りながらパラも頷く。


「太陽もかなり傾いて来たかな・・・? 3時のおやつの時間じゃない?」


「それも大事でござるが、この戦況はどんなものなのでござろうか。果たしてうまく行っているのでござるか?」


嫌がらせとばかりに大量のマキビシを投下しながらエルブも口を開いた。


城門前ではそれを踏みつけた兵士たちが痛みに悲鳴を上げる。


と、そこへ俊足のラピッダが戻って来た。


「そろそろ、そういう話題が出ると思うて直接、本部に聞いていたで。広域念話帯エロズィオーンだけやとよう分からんところあるしなあ。どや、聞きたいか?」


もったいぶる彼女の言葉に、回復要員のレナトゥスと影使いのシャッテンが頷く。


「もちろんです。まあ、神様のお考えになった計画ですからね。きっとうまく行っているでしょう」


「聞いてもいいけど、はてさて、どうだろうねえ。神様だからこそ失敗することもあると思うよぉ?」


正反対の意見を言う二人。


ラピッダは走って乱れた茶色の髪を乱暴に整えながら言った。


「まあ、一言で言えば、ウチらのトコも合わせて、全部の戦線が膠着状態や。ウチらが一番きっつい感じらしいで」


そうでありますか、とカーネが口を開く。


確かに死亡者こそいないが、重傷者はかなりの数出ている。


敵の攻撃が激しいのだ。


「ロウビル公爵のドクトリンは明快なのであります。物量を軸とした波状攻撃作戦であります。数で劣るわが軍の弱点を的確に突いているのでありまして、長期戦になればわが軍は疲弊して敗北すること必至、なのであります」


彼女の言葉に皆が頷く。


城門での戦いはカーネの口にした通り、間断かんだんなく押し寄せる公爵軍を、ホムンクルス王国側が何とかしのいでいる、という構図である。


長期戦になれば敗北。しかし現状は防衛に徹するしかないような状況。


敵の戦術に穴はない。


すなわち普通に考えれば慌てるべき場面のように思うが・・・。


「つまり、作成通り、っちゅーことやな!」


そうラピッダが口を開くと、カーネを始めとした全員が同意した。


「城門が破られない限りは問題ないのでござるよ」


「神様のご加護がありますから大丈夫ですね」


「弓も魔法も何とか凌げてるからね。時々ヒヤッとするのが飛んでくるけど」


「そこは任せておいて下さいよぉ、先輩。最大10体までいけますからねえ」


「任せておいてー!」


「ふうむ、ミミカのも合わせて20体であります。何とか今日1日くらいなら持たせられるのであります」


彼女たちはまるで敵に押されることが計画通りといった風に安心した表情を浮かべる。


「ただ、油断は禁物であります。戦場ではどんな意外なことが起こるかは分からないのでありまして・・・」


カーネがそう言いかけた時、慌てた様子で伝令兵が飛び込んで来た。


「たったったったっ、たい、たいへ、たいへッ・・・!」


「ちーとばっかし落ち着きいな。世の中なーんも事もなし、やで?」


ラピッダが息を切らしている少女の背中をさする。


だが、少女はもともと白い顔を更に青ざめさせて声を上げた。


「大変です! 挑発にのって一部の部隊が城門から降り、敵へ突貫しました!」


「なんですとッ!? どこのアンポンタン部隊でありますか!?」


カーネの悲鳴が辺りにこだまする。


伝令兵も同じくらい泣きそうな声で言った。


「それが・・・回復部隊の皆さんでして・・・」


それを聞いた回復部隊長であるレナトゥスは「あらあら」と少し困った表情をするのであった。


・・・

・・


「神様への罵詈雑言、もはや捨て置くことはできないゾ!」


天罰覿面てんばつてきめんですわ~」


レナトゥスの部隊は治癒系のギフトを備える少女たちで構成された、いわゆる回復要員の部隊である。


もともとカーネ連隊の一員であったレナトゥスが独立して組織した後方部隊であり、いわゆる衛生兵たちだ。


だが、この部隊には1つの特徴があった。


それはイッシを神様、レナトゥスを聖女様と崇めている点である。


イッシがミグサイドベリカ砦にて、いわゆる建国の選択を迫った時に、何人かの少女たちが熱狂的にそれを支持した。


プルミエがその筆頭だが、他にも何人かいる。


そのうちの一人がレナトゥスなのだ。


彼女は自分たちを「ただの生き物」だと初めて認めてくれたイッシを神と定義し、崇拝し始めた。


そして、それだけにとどまらずに少女たちの間でその考えを布教し始めたのである。


ほとんどの少女たちは首を傾げながらその主張を聞き流した。


だが、中にはその教えを本気で受け止める、おぼこい娘たちがチラホラといたのである。


そしてなぜか回復系のギフトを持つ少女にその傾向が多く見られ、どんどんと傾倒していった。


やがて熱心な布教者であるレナトゥス自身をも崇拝の対象とし、いつしか彼女のこと自体も聖女様、などと呼び始める始末であった。

更新が途絶えており申し訳ありません。

先が思い浮かばず、別作品を書いていました。

ホムンクルスについては、ゆっくりと更新させて頂きたいと思っております。


新作ですが、「異世界で山岳ガイドやってます。」というものです。

http://ncode.syosetu.com/n8208da/


毎日0時更新。

良ければ見てやって下さいませ。m(_ _"m)

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