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88.ラッガナイト城塞防衛戦11 ~ドラゴンの涙~

「そうであるか・・・。まあ合成獣キメラの方はマスター殿が片付けるのである。肝心の指揮はうまく行ったのであるか?」


「戦況も気になる」


マロンとクレールの質問にベルデは「むーん」と首をひねった。


「しきけんはーもらったけどー、けっきょくーやることなかったー。ろっそにーまるなげしてーかえってきたよー」


「でもよ、あいつ半泣きだったなあ」


スミレがニヤニヤしながら言うと、マロンが噴出す。


「ロッソはツンツンしてるわりにプレッシャーに弱いのである」


クレールは淡々と、


「良い経験。モニターだけじゃなく指揮力も持って欲しいと思っていた。今後大いに助かる」


「あとねーせんきょーはー、ぜんたいてきにーこーちゃくじょーたいー」


ベルデの報告にビブリオテーカが「うんうん」と頷く。


「つまり作戦通りってことよね。勝ちすぎても負けすぎてもダメよ」


「均衡状態を作る作戦だからな。ああ、あと兄様からの伝言があったんだ。しばらくコッチの指揮はできなくなるけど、とりあえずナハトの判断で動いて良いとさ。あと、アマレロ、マリゴールドとよく連携するように、とも言ってたな」


スミレの報告にタマモは微笑む。


「ナハトは我が主から信頼されておるのう。少し嫉妬するわい。で、その二人は何と言ってきておるのじゃ?」


「領民たちの戦況への理解はかなり楽観的。ロウビル公爵軍の優勢を信じきってるみたいだ」


ナハトの言葉にベルタンがニコリと笑った。


「うまく行っているみたいですね。でも、月に叢雲むらくも、花に風と言います。こういう時こそ邪魔が入り安いものですよ。さあ、引き続き警戒しましょう!」


彼女はそう言って、やはり遠くに一望されるラッガナイトを見る。


「分かっておるぞえ。じゃからわしがここにこうしておる」


タマモが尻尾を振りながら答えた。


だが、少女たちは気付かない。


遠くから自分たちの姿を観察する者がいたことに。


そして、その影がひっそりと姿を消したことに・・・。


・・・

・・


「地上戦は結構面倒くさいのう・・・」


アルジェのうんざりした声に、きしゃあああぁぁぁあああああ! とドラコが吠えた。


どうやら肯定のつもりらしい。


人間たちは物陰に隠れながらチクチクと矢や投槍などで攻撃して来る。


それがとても鬱陶しいのだ。


最初こそドラゴンの厚い鱗に弾き返されてばかりだったが、そのうち顔を狙い始めた。


そうなると話が違う。


ダメージの有無に関わらず、どんな生物でも顔に何かがまとわりつくのは気持ちが悪い。


それが例えドラゴンであってもだ。


その上、目は急所である。


何度目かの攻撃を受けて、たまらずドラコがデタラメな方向に火球を放った。


大きな建物が爆散し、物陰ごと消失する。


だが、今度は反対方向から矢が浴びせ掛けられた。


時には領民たちが投げる石つぶても混じっている。


「うおい、ドラコや! そんなに急に動くでない!!」


放り出されそうになりながらアルジェが叫んだ。


くぉおおおおん、とドラゴンが抗議するように鳴く。


「分かっておるがの・・・。じゃが、余りいきなり動かれるとじゃな」


彼女がそう言っている間にも、飛んできた投槍がドラゴンの口の中へ入った。


舌に刺さっただけでダメージはほとんどなかったが、本人にしてみればたまったものではない。


グオオォオォォォオオオオオンン!! と咆哮すると、槍が飛来した方向に火を放とうとする。


と、その時、一つの火球が注を舞い、ドラコの口の中へと飛び込んだ。


もちろん、ドラゴンが放ったものではない。待機組の魔法使いのものだ。


その効果は劇的だった。


それはドラゴンの口に突き刺さると同時に大爆発を引き起こしたのだから。


「どわぁぁあああああああああああああ」


アルジェはその衝撃にたまらずドラゴンの背中から転げ落ちた。


「あいたたたた。まったく何と乱暴なことをするのじゃ。ドラコや、大丈夫かの?」


「くえええええ・・・」


命に別状は無さそうであるが、若干涙目である。


「ふむ、まあ大丈夫そうじゃの。しかし軽く火傷して怯えておるのか・・・。負傷すること自体が少ないから慣れておらんのじゃなあ。貴重な戦訓と言ったところかのう・・・?」


彼女が渋い顔で唸っていると、数人の兵士が近づいて来た。


「おい、こいつがドラゴンに騎乗してた化物だろう?」


「ああ、しかしこんなチビが俺たちの故郷を脅かしていたとはな。信じられねえ」


「馬鹿が、こいつらは人間じゃねえ。教えにもある金色の瞳。悪魔の証拠だ!」


「そうだ、容赦することはねえ。四肢をもいだ後はたっぷり拷問するんだ。こいつらには人間様に逆らったことを後悔しながら死んでもらわねえと!」


「やるぞ! ドラゴンが動けねえ今がチャンスなんだか・・・」


「うるさいのう」


少女が大鎌をひと振りすると、近づいて来た5人の男の首がたちまち宙を舞った。


彼らの後方にいた他の兵士たちが一斉に足を止める。


「わしは館様の筆頭軍団長のアルジェじゃぞ? お主らごときに遅れを取る女ではないわい」


彼女はそう宣言すると、続いて口を開いた。


「ドラグーン部隊よ。わしのもとに集結するが良い。鉄壁を作るとしよう」


まったく、とアルジェはため息をく。


「殺しすぎてはならんというのは実にやりにくいのう・・・」

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