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86.ラッガナイト城塞防衛戦9 ~影まね~

本日より3日に1度の更新となります。

「カーネ連隊到着であります!!」


「あら、カーネさんたちもお越しになられたのね。けれどお慌てにならないで。まだまだ残っていますからね。私だけで平らげる様なマナー違反はいたしませんわ」


まるでテーブルマナーを語る様に悪食あくじきのトロペは言う。


「そんな事は心配してないのでありますが・・・。えっと、陛下の命令により参上したのであります。城門の圧力が増して来ているので、これの加勢であります!」


「それはありがたいですわ。そろそろ満腹だったものですから・・・ねッ!」


トロペはそう口にしながら、ドレスをブワリと広げた。


先ほど衣服に沢山付いていた唇は、今は1つの馬鹿でかい口になっている。


それが大きく広がると、飛んで来た矢の群れを一口で飲み干した。


「ゲフぅッ。ゲッ・・・ゲッ・・・!」


ドレスの唇がゲップするのと同時に、えずく様な仕草をする。


「ああ、本当に満腹みたいですわ。先ほどの様に一度吐き出したとしても、もう余り・・・」


グシャッ!!


トロペが困った顔で話していると、どこからか飛来して来た矢が体を貫いた。


攻撃された少女は地面に崩れ落ちる。


だが、倒れたのは悪食のトロペではない。


とっさに飛び出て彼女をかばったシャッテンであった。


その上、ことはそれで終わりではない。矢の勢いが尋常ではなかったからだ。


彼女の体をやすやすと貫通した神速の矢は、その後ろにいたカーネへも襲い掛かったのである!


「なッ!?」


カーネも思わず反応が遅れた。


もはやかわすひまなどない。


と、その時、少女の前にミミカが躍り出る。


そして、その矢を顔に受けたのだった。


無論、無事では済まない。


矢を受けたミミカはそのまま倒れると、身動き一つしなくなった。


そして、さらさらと・・・。


そう、2つの死体はさらさらと黒い粉となり徐々に風化して行ったのである。


「あぶないですねえ、先輩方。影が2体も殺られちゃいましたよぅ? まあ一体はミミカのですけどねー」


「やられちゃいましたよー!」


何が面白いのかニヤニヤとしながら黒髪、黒目がちの胡散臭い少女、シャッテンが言うと、赤と黄色の奇抜な髪の色を持つミミカも楽しそうに後に続いた。


「あ・・・ありがとうございました、シャッテンさん。今のは刺激的すぎて食べれませんでしたわ!」


「わたしも礼を言うのでありますミミカ。助かったのであります」


少女たちが頭を下げるのと同時に、


「だ、大丈夫ですか!?」


回復要員であるレナトゥスが駆け寄って来た。


「お、レナトゥスでござるな。何とか大丈夫だったようでござるよ」


「ほんま、ヒヤヒヤもんやで。シャッテンが守ってくれたから良かったようなものの・・・」


「厳密には彼女のシャドウレインの自動防御が発動したわけだけどね。そしてミミカのギフト」


少女たちが口々に言う。


だが、それを傍目はためにカーネは、いつにない厳しい表情で矢の飛んで来た方向を見ていた。


彼女は鼻も効くが目も良い。


数百メートル離れた場所にいる男が、やや驚いた表情をしてこちらを見ているのがなんとなく分かる。


「あんな場所から今の矢を放ったのでありますか・・・? 間違いないのであります。フェアンの情報にあった敵将グラリップでありますな」


カーネがゴクリと唾を飲み込むと、他の者達もそちらを見た。


だが、みんな彼女のように厳しい表情をしているのかと思いきや、ほとんどの者はニヤリとほくそ笑んでいる。


「カーネ隊長はん。分かってるんやろな?」


「そうでござるよ、連隊長殿。これはつまり」


「上書く前に、早くしないといけないね」


少女たちはそう言うと、一様にミミカの方を見る。


視線を向けられた彼女は「早くしないといけないねー!」と言ってニコニコと笑った。


カーネは「そうでありますな」と頷くと、近くにいた少女に弓矢を持ってくるように指示したのである。


・・・

・・


グラリップは自分の一撃が防がれたことを知って眉をしかめた。


いや、厳密には手ごたえはあった。


ただ、狙った相手の命は奪い損ねたことが長年の勘で彼には分かったのである。


「暗殺は失敗のようだな・・・」


彼は首を傾げながらも、そう結論する。


その言葉に隣にいた兵の方が驚いた。


なぜなら、グラリップが弓で仕損じることはまずないからだ。


ほとんど剣で戦う彼だが、重要な局面においては弓を使う。


その場合、ほぼ一撃で敵をほふるのが常であった。


それが失敗したとなれば、きっと何か特別な出来事が起こったはずだ。


だが、それは一体・・・?


「俺が狙った大食いの化け物の前に別の奴が飛び出しやがった・・・。そいつに防がれたようだ」


彼の言葉に部下は納得がいったと頷く。


「なるほど、たまたま飛び出して来た奴に当たったという訳ですか」


単なる不運と評する男に、グラリップは首を振った。


「いいや違うな。俺が発射した瞬間に飛び出しやがった。まさか、こっちに気付いていやがったとはなあ」


顎を撫でる男に、部下はまたしても驚く。


「そっ、そんな馬鹿な!? 少将の神速の矢を防ぐほど早く動くことなぞッ・・・!」

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