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80.ラッガナイト城塞防衛戦3 ~出撃!! ドラグーン部隊~

「おい、ディケンが襲われてるぞ!」


「悪魔から助けるんだ!」


「死ねええええええええ!!」


梯子を登り切った後続の兵士たちが仲間を助けようと次々にトロペに襲い掛かる。


「まあ、デザートですね! なんて気の早い!! でも私は一向に構いませんよ!!」


少女のドレスがブワリと広がり、四方から迫って来た男たちへと伸びる。


「な、なんだこりゃ!?」


「おい、俺は幻覚を見てるのか? 口が付いてやがるぞ?」


「馬鹿! 幻じゃない! これはホントのっ・・・!」


だが、彼らが自分たちにまとわり付いて来た物が何なのかを知る前に、ドレスは大きく口を開いて兵士たちを頭から丸のみして行ったのである。


「ひいいいい、くそっ、出せッ、出しやがれ! お願いだから出してくれえぇぇええぇぇえええ!!」


「何だよこりゃ!? 体が溶けて行きやが・・・」


「す、滑ってッ、の、飲み込まれッ・・・!? い、嫌だぁぁあああああ!!」


ドレスに付いた唇の中から阿鼻叫喚の声が漏れるが、それはほんの一瞬。


ゴクン、という音とともに兵士たちの悲鳴も遠ざかる様に消えたのである。


そしてディケンと呼ばれた兵士も腕、足、胴と次々とついばまれて行き、今ついに頭をかじり取られた。


「ふう、満腹ですわ。あら、少し食べ過ぎたからしら。ちょっと失礼」


トロペはそう言うとドレスを痙攣けいれんさせる。


するとドレスの口から、先ほど飲み込んだ弓矢やファイヤーボール、兵士たちの剣や鎧が勢いよく辺りへ吐き出された。


それは城門前や、梯子を上って来る兵士たちに次々と降り注ぎ、串焼きの男たちを量産したのである。


「はあ、さっぱり致しましたわ。さあ、次の料理を持って来なさい!」


少女の声が戦場に響き渡った。


空はどんよりと曇り始めている。


・・・

・・


「ドラコよ。そろそろ行くかの?」


銀髪をなびかせて第1軍団長のアルジェが言った。


場所は城塞の訓練場で広々としている。


「行く? 分かった。お前たちも良い?」


ドラコは頷き、整列した8人の少女たちにも問い掛けた。


「はい、第1軍ドラグーン部隊、出撃準備完了しております」


うむ、とアルジェは頷く。


「作戦目的は先に説明した通りじゃ。我々は後方で枕を高くしとる敵本隊を襲撃する。籠城戦だけやっとく手もあるのじゃがの」


彼女の言葉に、ドラコが続く。


「城門へ圧力が集中してる。この緩和が目的となる。本隊には合成獣キメラもいる。油断は禁物。注意するように」


「どれくらいの時間、攻撃するのでしょうか?」


その質問に、ふむ、とアルジェは少し考える。


「そうじゃの・・・。第2段階の計画に従い、ともかく今日1日をしのぐことが肝要じゃ。1時間も戦えば良い。館様より厳命も来ておるしの」


「その命令とは?」


ドラコの質問にアルジェは肩をすくめる。


「いつものじゃよ。命が危うくなったら取りあえず逃げよ、とのお達しじゃ。そんな訳じゃからの皆、1時間とは言うたがただの目安じゃ。最悪、戦場を放棄するように。そう簡単にあの城門は落ちぬからの」


「承知しました!」


ドラコと他の少女たちが敬礼するのを見て、アルジェも頷く。


「ではドラグーン部隊、騎乗せよ! 目標はロウビル公爵軍本隊!」


彼女が出撃を指示すると、5名の少女がその場にうずくまった。


そして、呻き声を上げる。


すると背中がたちまち盛り上がり、ボコリッ! と羽が生え始めた。


やがて硬質の鱗が少女たちの白い肌を覆うと、むくむくとその体を巨大化させたのである。


「キシャアァァアアアァアアァアアッ!!」


たちまち訓練場には5匹のドラゴンが現れた。


ドラコの赤に加えて、黄、緑、青、黒の鱗を持つ者たちだ。


そのドラゴンたちにアルジェを含めた5名が騎乗すると、彼女らは翼を羽ばたかせて空を舞い始めた。


砂嵐が訓練場に巻き起こり、ドラゴンたちの咆哮が城塞へ響き渡る。


それはあたかも神話のごとき光景であった。


彼女たちは何十メートルも高く舞い上がると、敵本隊が陣を構える坂の下へと向かう。


・・・

・・


「おい、ありゃあ何だ?」


空を見上げていた待機組の一人が突然声を上げる。


その男は急に曇り始めた空を指さしながら、隣の兵の肩を揺すった。


「ああ? 俺たちの出撃は半時間後だろうが。何だっつーんだよ?」


城塞へ通じる坂の道幅は限られている。従って一万の兵が一度に展開することは出来ない。


そのため、ほとんどの兵士たちはこうして坂のふもとで次の出撃まで待機している状況なのだ。


呼び掛けられた男は鬱陶うっとうしそうに空を見上げた。


そこには赤、黄、緑、青、黒の鳥たちが飛んでいる。


「何だよ、ただの鳥じゃねーか。次の波状攻撃までゆっくり休んどけ」


肩を揺する手を払いのけると、そっぽを向く。


だが、隣の男はしつこく呼び掛けて来た。


「何だってんだ! 俺は山狩りに参加してたんだ! お前たちほど休めてねーんだよ! 少し放っておいてくれ!!」


「馬鹿野郎! アレが鳥に見えるのかよ!?」


尋常でない驚きの声を上げる男にさすがに不審を覚え、改めて曇天の空を見上げる。


なるほど、確かにただの鳥ではない。


大きさが尋常ではないのだ。


しかも、もしこれが見間違いでないのならば・・・。


「な、何なんだアレは? 妙な生き物の上に何かが乗っかってるのか?」


そして、周りの者たちも上空の異変に気付き始めた。

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