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58.ラッガナイト城塞占領作戦10 ~ヴァンパイア伝説~

「おいドラコ、狭い場所で火はやめい!! 他の者を巻き添えにする気かッ!?」


変身した途端、火球を吐いたドラコにアルジェは文句を言った。


彼女は今、レッドドラゴンへと変身したドラコの背中に乗っている。


幸いながら部下たちは後方に撤退した後であり、吹き飛ばされたのは敵兵ばかりだ。


だが、大規模な爆発によって今後、味方に被害が出ないとも限らない。


それに制圧後は自分たちの拠点になる城である。


壊すのはできるだけ避けたかった。


「グッルルルルウウウゥウウゥウゥウゥゥゥ・・・」


ドラコは理解したとばかりにいななくと翼を羽ばたかせ始めた。


たちまち暴風が発生し、生き残った兵たちを襲う。


「よ、よせッ!? 落ちるうぅぅうぅうう!!!!」


「う、うわあああああああああああ」


何人かの兵士たちが火球で空いた床の穴に落ちたり、割れた窓ガラスの外へと放り出された。


「おお、良いの。その調子じゃぞ」


「オオオオオオオン!!」


ドラコは褒められて機嫌よく吠える。


それを見た敵のパイク部隊の隊長シザールは、ドラゴンにまたがる銀髪の化物こそが飼い主だと判断する。


奴さえ殺せばドラゴンも撤退するのでは?


そう考えて残りの兵たちに指示を出した。


「あの銀髪の化物を狙え! 奴を倒せばドラゴンも退くはず!! ただの小娘ッ、恐れることはないっ!!」


怯えていた兵士たちはシザールの言葉に少し気力を取り戻す。


そうだ、確かにレッドドラゴンは恐ろしい。そんな化物をどうやってホムンクルスどもが手懐けたのかは分からない。だが、飼い主さえ倒せば恐らく退散するだろう。


ドラゴンの襲来などという突然の事態に混乱する兵たちは、そんな根拠のない甘い予想にすがる。


それがホムンクルスの少女が変身したものだとは微塵も気づく気配はない。


彼らはドラゴンを取り囲むと、一斉に持っていた槍を騎乗する少女へ投擲とうてきし始めた。


だが、彼らが根本的に勘違いしていたのは、騎乗した銀髪の少女アルジェであったろう。


彼女こそがドラゴンよりもよほど死に近い存在であったのに。


アルジェは四方八方から鋭く飛んでくる槍を一顧だにせず、己の大鎌で打ち払う。


そしてニコリと天使のように微笑んだ。


「なかなか良い肩をしておるのう。じゃが、まだまだじゃよ。投擲とうてきというのはこう・・・するのじゃよっ!!」


彼女は大鎌を振りかぶると敵兵に向かって思いっきり投げつけた。


その凶器は回転しながら輪を描く様に舞い、敵兵の首や胴体を次々と両断して行く。


やがて数十人の敵兵が地面にドサリと倒れるのと同時に、大鎌はブーメランのように彼女の手に戻ってきた。


「ひいっ、ば、化物だ!? た、助けてくれッ!!」


ついに堅固けんごなるパイク兵の士気は崩れ、次々と背中を見せて逃走を開始する。


「おっ、おい、貴様ら!! 逃げるんじゃない!! ちゃんと戦か、グハッ・・・!?」


シザールの言葉は最後まで紡がれることはなかった。


近づいて来たレッドドラゴンの巨大な足に踏み潰されてしまったからである。


蜘蛛の子を散らすように逃走する兵士たちを、他の少女たちが追撃し次々と討ち取ってゆく。


何人かには逃げられたが、ほぼ壊滅と言って良かった。


「ふむ、武器庫の制圧はこれで完了じゃな。なかなか時間がかかったの。さて・・・」


彼女はドラゴンにまたがりながら、第1軍団に大声で言った。


「よくやったの、皆の者! 第1計画における我が軍団の任務は完了じゃッ! 第2計画の発令まで警戒態勢で待機せよ!!」


・・・

・・



「えっ? 僕ら以外に侵入者がいるかもしれないだって?」


漆黒のナハトの驚いた声に「はい」とその連絡兵は頷いた。


何でも食料貯蔵庫を守る敵側の死体に奇妙な点があったらしい。


「その変なところっていうのは?」


「持ってまいりました。どうぞ」


そう言って差し出されたのは干からびた状態の生首であった。


「なんなのコレ? 日光浴しすぎちゃったのかな?」


「え? い、いいえ、将軍。こちらをご覧下さい」


少女が指さした首元には二個の小さな穴が空いていた。


「うーん、なんだろうコレ。どうやったらこんな風になっちゃうの? やっぱり日光浴してる時にペンが刺さっちゃって・・・」


「あ、あの将軍・・・。当方が愚考しますにですね、これはヴァンパイアの仕業ではないかと思うのですが?」


少女の言葉にナハトはポンと手を打った。


「君、賢いね。名前は何て言うんだい?」


「No.0028のセージです。将軍」


「よし、じゃあセージ、今から君は僕の副官ね。補佐に励むように」


「は? しかし私には伝令の仕事が・・・」


「第2軍の仕事はだいたい終わってるから大丈夫だよ。この件もさっさと片付けてご主人様の元に向かおう。で、ヴァンパイアってあの血を吸ったりするヴァンパイア?」


ナハトの言葉にセージは頷いた。桃色の髪がさらりと揺れる。


「はい、セイラム様より頂いた知識によれば、闇に生きる眷属、とのことです。ただ弱点が多く、すでに人間に絶滅させられたと噂されています。現にもう何十年も人の前に姿を見せていないそうですが」


「じゃあ、これも違うんじゃないの?」


「噂は噂です。それからこういった噂もあります。ヴァンパイアとはホムンクルスの一種ではないか、と」


セージの言葉に、「ああ、確かにそうだね」とナハトは言った。

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