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53.ラッガナイト城塞占領作戦8 ~臨時編成!混成魔剣師団~

「なるほど、そうであるな。よし、魔法師団の皆、よく聞くのである! これから諸君ら98人で、あの怪物を倒すのである! 実戦で訓練の成果を示すのである! 第1軍と2軍にヘナチョコ扱いされるのはもう終わりなのであーる!!」


「奮戦を期待」


その言葉に師団長の二人を追ってきた少女たちは悲鳴を上げる。


「ひええええ、いきなりは無理ですよおおお。私なんてまだマッチくらいの火しか出ないんですよおおお」


「わたしも一緒ですうう。せいぜい指先からチョロチョロって水が出るだけなんですううう」


マロンがこめかみを押さえながら言った。


「お前たち、本当に情けないのである! 魔法の素養があることは、このマロンが保証するのである!! もっと気張るのである!!」


だが、少女たちは「でもー」とか「むりー」と言いながら右往左往うおうさおうするばかりであった。


「・・・粛清」


そう言ってクレールが右手を上げようとする。


「ちょ、ちょっと待つのである! その圧縮魔法マントラはさすがにマズイのである。一帯が灰燼かいじんに帰すのである。ええっと、あっ!?」


マロンが周囲を見回したとき、偶然カーネたちと目があった。


「確か第1軍団のカーネなのである。これは好都合なのである!」


彼女はそう言って一瞬姿が掻き消えたかと思うと、次の瞬間にはカーネの隣にいた。


「いっ、いつの間にッ、であります!?」


「そんなことはどうでもいいのである!! カーネ連隊長、混成部隊による戦闘を提案するのである!!」


「こ、混成部隊! でありますか? 魔将軍殿・・・」


カーネは頭にハテナマークを浮かべながら質問するが、マロンは勢い良く頷いた。


「そうである! 我が師団は恥ずかしながらまだ戦力不足なのである!! 単に経験が足らないのであるが、連隊が前衛に立ってくれれば落ち着いて詠唱が出来るのである!」


「それって、マロンはんがやったらええんちゃうの?」


そうラピッダがツッコミを入れると、マロンは「本来はそうなのであるが・・・」と困った顔をする。


「奴ら飛んだ甘えん坊なのである。私やクレールが戦うとすぐに頼り切りになるのである。そんなことでは今後の王国との戦いで使い物にならないのである!! 私たち抜きの戦いを覚えてもらう必要があるのである!!」


カーネはマロンの力強い言葉に頷いて、


「よく分からないのでありますが、魔将軍殿のご意志であるならば従うのであります!! 連隊各位、突貫であります!!」


「えっ、あれだけ話したのに理解してもらえなかったのであるか!?」


呆然とするマロンを放置して、カーネ連帯が行動を開始する。


まずは一番手とばかりにエルブが怪物へと斬りかかった!


ブシュッ!! という肉を切り裂く音と感触が彼女に伝わるが嫌な予感を覚えて慌てて後退した。


その場所に間もなく、ブウン!! という轟音を立てて怪物の腕が通過する。


「とんでもない耐久力でござる。それがしの火遁の術で爆破するでござるか?」


「少し待って下さい。私も試してみます」


この中で最も腕力の高い聖女レナトゥスが杖を叩きつけた。


グシャリッ!! という音を立てて肩が陥没するが、怪物はもう片方の腕で反撃して来る。


とうていかわすことは出来ない!!


だが、その腕の動きは少女に命中する直前でピタリと止まった。


「あまり無茶をしてはダメだよ。君はあくまで回復要員なんだから」


「すっかり忘れてました。ではあとはお任せ致します」


パラのワイヤーが怪物の腕の動きを封じ込めていた。


聖女はその隙に皆の背後へと後退する。


「ほなら、これはどないなんや?」


その声はいきなり怪物の頭上から聞こえてきた。


ナイフを両手に持ったラピッダが、いつの間にか怪物の首に足を絡めて座っていたのである。


怪物が振り払おうとする前に、手に持ったナイフを怪物の目玉へと突き刺した。


「ぐぎょおおぎょぎょぎょごおお」


目を押さえながら呻く怪物からラピッダはすぐに離れる。


「なんや、てんで弱すぎるやん・・・げ?」


余裕かと思った彼女は目の前の光景に思わずうめいた。


シュウシュウ、という煙を上げながら、怪物の傷が治り始めていたからである。


「すごい耐久力だね」


パラが感心しつつワイヤーを操る。


すると怪物の片腕が、ブツン、という音を立てて切断された。


傷口からはたちまち大量の血が噴き出す。


だが、すぐにその場所からも煙が立ち上がり、たちまちニョキリ、と新しい腕が生えた。


「確かにすごい耐久力・・・いや、再生力であります。であれば再生が追いつかないほどの攻撃を畳み掛ける必要があるのであります!」


こうしたカーネ連隊の怒涛の攻撃に魔法師団の少女たちは思わず拍手する。


「すごい! やっぱり時代は物理です! 魔法なんていらなかったんですね!!」


「もう、カーネさんたちだけでいいんじゃないかなあ?」


そんな言葉にクレールが底冷えのする声音で言う。


「アナタたち、本当に頑張らないと後でひどい」


「はいいいいい」「ごめんなさーい」「すいませーん」


少女たちもさすがにまずいと思ったのか移動を始める。


そして3つのグループに分かれると詠唱を開始した。


「自然の精霊よ、我らに力を貸したまえ。目の前の敵を打ち倒す大いなる恵みを与えたまえ!」


「闇より出でし暗黒の魔王。その邪悪の炎によって愚者の命を焼き尽くせ!」


「大空を飛翔せし神聖なるペガサスよ、永久に惑う哀れなる者を天へと導かん!」


それぞれのグループから一斉に魔法が放たれる。


風、炎、雷、という3つの属性魔法がバラバラに怪物へと突き刺さった。


「や、やった! 上手く行ったぞ!!」


「い、今の魔法ならさすがに生きてないでしょ!?」


「わ、私たちもやれば出来る子!!」


だが、怪物は魔法に体を焼かれながらもそのまま少女たちへと突進してきた。


どうやら毛ほどのダメージも受けていないらしい。


少女たちがワー、キャーと慌てるが、到達する寸前に転倒して止まった。


パラがワイヤーを操り、怪物の足に引っ掛けて転ばせたのだ。


「はあ・・・。皆、傾注」


そんな中、クレールが口を開いた。

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