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47.ミグサイドベリカ防衛戦2 ~兵站部隊独断専行せよ!~

『大変だ!! 大変だ!!』


ミグサイドベリカ砦の一室は蜂の巣をつついたような騒ぎに陥っていた。


ベルデ、フォルトウーナロッソ、アマレロ、マリゴールド、スミレなどといった少佐階級がそろってはいた。


だが、兵站部隊である彼らが直接、戦闘行為をする予定は一切なかったのである。


もちろん、これまで危険な任務はいくつも果たしてきている。


『腐った林檎』作戦による欺瞞情報の伝達や、『トワイライト』作戦による敵戦力の把握は彼らの功績である。


だが、それら諜報活動と実戦は異なる。


1対1なら大丈夫。


1対3でもまだなんとかなるかもしれなかった。


しかし・・・。


「部隊人数は私たちも含めて兵站部隊90名のみ! 相手はおよそ1000! あと20分で接敵するッ。敵は弓と剣を備えた陸兵部隊よ、どうするの!?」


フォルトウーナロッソの遠見による報告で一層騒ぎが大きなる。


「おっ、おい、この中で一番階級が高いのは誰だったよ!?」


「ベルデ、フォルトウーナロッソ、アマレロ、マリゴールド、スミレの順番で先任ッスね」


「おい、ベルデ! 何か指示を出しやがれ!!」


「ううー、さすがに、むずかしー。けどー、とりあえずーてれぽーとでにげるかー?」


「そうですわね。スミレのテレポートで90人全員を別の場所に」


「ちょっと、待って!! 半分くらい近くの森で物資調達の最中よ! とても20分では戻れないわ!」


ビブリオテーカの声に、スミレがクソッ、と吐き捨てた。


「私の能力は或る程度近くにいてくれないと取りこぼしちまう!! いっそ私が敵に突っ込んで・・・」


「自殺か何かされるおつもりなの? 敵の大将の後ろに直接飛べれば別でしょうけれど。そんな精度はないはずですわよ。返り討ちが良いとこですわ。でも、確かに困りましたわねえ。私のギフトで透明になって隠れるにしても、スミレさんのと同じで、やはり皆さんに近くにへ集まってもらいませんと」


マリゴールドの言葉にフォルトウーナロッソが悲鳴を上げる。


「ちょっと、本当に時間がないわよ!!」


「そんじゃ私がロウビル公爵に変身して、撤退を指示してくるッスかねえ」


「それは違和感がありすぎでしょう。敵もそこまで馬鹿じゃないと思うわよ」


ビブリオテーカがそう突っ込んだ時、突然、バンッ!! と勢いよくく扉が開き、とある人物が飛び込んで来た。


「みんなワイワイ楽しそうだね!! 何してるのかな? それよりもさ、さっき僕、すごいカンツォーネ作ったんだー! えへへ、ねえ、みんな! 聴いて聴いてー!!」


『それどこじゃないんだよ!』


と全員に突っ込まれて、ぼさぼさ髪のラプソディーがキョトンとする。


しかし彼女の後ろから、更に別のホムンクルスが3人部屋へと入って来た。


「どうかしたのかえ? 随分と騒がしいのう。狸にでも化かされたか?」


「雨でも降らしましょうか? 少しはアンニュイな気分になって落ち着かれると思いますよお?」


「ふむ、それも良いが、どうだ? 新しく作った鎮静剤の効果を試すというのは?」


それは奇抜な格好をした一団であった。


最初に入って来た女性は頭に狐の耳を生やしてお尻からはふさふさとした尻尾が垂れている。


次に入って来た少女の周囲には青や赤、黄色といった球体が絶えず巡っていた。


そして最後の一人は白衣を纏っており、ポケットからは様々な錠剤がはみ出ている。


「おー、ひとけたメンバーたちじゃないかー、じつはなー、かくかくの、しかじかでー」


そう彼らは兵站部隊所属の一桁ナンバーの少女たちであった。


それぞれ、No.0009のタマモ、No.0006のベルタン、そしてNo.0005のナルコーゼである。


「それはそれは、ひどく大変なことになっておるようだのう」


「で、イッシさんには連絡したのかい?」


ナルコーゼの言葉にベルデは首を振った。


「んー、してないー、むこーも作戦こーどーちゅーだから」


「でも、スミレちゃんが主力部隊をこっちにテレポートさせて来れば、嵐のごとく蹂躙できるんじゃない?」


ベルタンの言葉に、うーん、と言ってスミレが頭を掻いた。


「それは考えてた。でもなあ、それをすると向こうの作戦が中止になっちまわないか?」


「それは・・・そうでしょうねー。花に嵐とも言いますし。次からは敵も警戒するでしょうから、もぬけの空の城塞を攻めるチャンスなんて、二度と来ないでしょうねー」


ベルデは「むむー」と呻くと、決断するようにして言った。相変わらず気の抜ける声ではあったが・・・。


「きめたー」


そうはっきりと口にした。


「やっぱり、こんかいはー、我らへーたん部隊で、どくだんせんこーを行うー。あとでおしりペンペンかもだけどー」


そして、


「ナンバー5、6、9、ごめんだけど力をかしてほしー」


と言ったのである。


可愛らしくも、今やこの砦の総司令官であるベルデに、3人の少女たちは微笑んで頷いた。


「委細承知したぞえ、ベルデよ。まあ、とりあえず1階におったネクロマンサーのトートモルテを呼んでくるがええ」


「何でか分からないッスけど、了解っす」


そう言ってアマレロが駆け出した。


「それからの、ラプソディーや。この前の歌をお願いできるかえ? 楽団を連れて戦場へ来るがええ」


「えへ、分かったよ!!」


ラプソディーは音楽を奏でられると聞いて上機嫌で部屋を飛び出して行く。

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