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45.ラッガナイト城塞占領作戦2 ~カーネ連隊が行く~

「で、これからどうするんや? 隊長はん。建物の中に入ってもうたら私のギフトでも、あんな早い動きはもうできひんから用心していかんとアカンで」


No.0111のラピッダが、短めに切り揃えた茶色の髪を撫でつけなながらそう言った。


目撃者の男は高層階にいた。


そこに一瞬で辿り着けたのは、ラピッダの健脚のギフトと、別の少女のギフトを組み合わせて使用したからであった。


「そうだな、用心していかないとな」と頷く他の3人に対して、カーネは「任せるのであります!」と言って胸を叩いたのである。


根拠もないのに自信たっぷりな連隊長の様子に、他の4人は生暖かい視線を注ぎながらも、


「たしかに連隊長殿の鼻は頼りになるでござるよ。普段、一緒に野草を摘みに行ってもすぐに嗅ぎ当てるでござる」


そう言って口元を隠し眼帯を付けた、いかにも隠密風の少女No.0359、エルブが首元の赤いマフラーをはたきながら言った。


「そうなんかいな? まあ、私らの作戦目的はけっこー単純やさかいな。旦那はんいわく、サーチ・アンド・デストロイ、やっけ? ともかく城にいる連中を片っ端から戦闘不能にするんが目的や。拠点制圧のみんなとは難しさが違うわな。私ら向きやわねえ」


独自のイントネーションで応じるラピッダに、


「そうだね。ともかく速さを買われた連隊だよ。だから、すぐに動こう。何よりも敵はまだこちらに気づいていない。彼らが組織だった行動を起こす前に仕留めるのが一番合理的だ」


答えたのはNo.0015、パラと呼ばれる少女である。


手には余りにも微細なワイヤーが時折チラリと見えた。


彼女が城壁からこの高層階まで皆を引き上げたのである。


「パラの言う通りです。神様もそうおっしゃられるでしょう。私たちの信仰を示す時です」


聖女のごとき出で立ちのNo.0202、レナトゥスの言葉に、ラピッダは冷や汗をかきながら質問した。


「レナトゥスはん、ちなみにその神様ってやっぱし・・・」


「神様とはイッシ様のことに決まっております・・・、ああっ!? 神の御名を呼んでしまうなど、なんと恐れ多いことをッ!? 申し訳ございません神様!」


「えっと、ちなみにそれって僕たちもイッシ様のことを名前で読んだらダメなのかい?」


パラの質問にレナトゥスは母のような微笑みを浮かべて首を横に振ると、


「いいえ、神様はおっしゃいました。信仰は自由だと。神様もBUKKYOという神様? を信仰されているそうです。つまりそういうことです。わたくしが神様を信仰することも自由ということです。だから反対に皆様に信仰を強要するようなことは致しません」


ちなみにイッシは彼女に頼むから辞めてくれ、と言ったのだが、それより先に「信仰の自由」という元の世界でのエピソードを披露していたため、ついに彼女を説得することはできなかったのである。


「相変わらずの狂信者っぷりでござるな・・・。まあ殿に奉公するのは当然のことでござる。それより・・・」


「その通りであります! みな傾注して欲しいのであります!! 敵が8時の方向に多数存在しております。我ら連隊はこれを撃滅すべく行動するのであります!! 異論はないでありますか?」


『ない』


という他の少女たちの返事を聞いて、「では突貫であります!!」という掛け声とともに、彼女たちはその部屋から飛び出したのであった。


・・・

・・


「ぶー、暇ちんッスねー」


そう言って机に顎を乗せてだらけているのは変身のギフトを持つアマレロである。


「そうですわねえ。でも仕方ないですわ。前線に出た皆さんと違って、わたくしたちのギフトはあまり戦闘向きではありませんもの」


金髪縦ロールのお嬢様、マリゴールドは慰めるように言った。


「でも正直、アタシも前線に付いて行きたかったぜ。いちおうテレポートでみんなをラッガナイト城塞まで運んだが、すぐにトンボ帰り。んで、おめーらをこのミグサイドベリカ砦まで運んで、あとは別命あるまで待機ときたもんだ。アタシは運送屋かなにかか?」


乱暴な口調でスミレがアマレロに同調すると、フォルトウーナロッソがそれに口を挟んだ。


「まあいいじゃない。作戦は全て順調に行ってるわよ。遠見した様子だと敵軍はこちらの襲撃に気づいたようだけど、まだ混乱していて進軍停止中。城塞からは依然として徒歩7日の距離を保っている。視点切り替え・・・。うん、城内の制圧も順調そうよ。けが人は出てるみたいだけど、No.0003もいるから大丈夫でしょう」


その会話を聞いていた少女の一人が、部屋の片隅で「はあ」とため息をいた。


「相変わらずよく喋るわね、あなたたちは。ベルデを見習って少しは静かに出来ないの?」


「そいつは寝てるだけだろうが」


ビブリオテーカの指摘にスミレが鼻を鳴らして反論する。


ベルデは気持ちよさそうにヨダレを垂らして机に突っ伏すようにして眠っている。


「それよりも隣の部屋からまたラプソディーのキテレツな歌が聞こえてくるぞ。誰か止めに行けよ」


「それならスミレさんが言ってきてくださいな。わたくしは先ほど参りましたから」


「うーん、ますたー、もうのめませんー、あしたーまたーおねがーいしーます、ムニャムニャ」


「ベルデ、良さげな夢を見てるッスねえ。かあッ!、あやかりたいっす!!」


「人の夢にまでたかるんじゃないの!!」


フォルトウーナロッソが思わず突っ込んだ時、ビクリ、とぐっすり眠りこけていたベルデの肩がふるえ、すぐに、ガバリ! と音を立てて体を起こした。

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