嗚呼、麗しき王子、その姿美しく、その志や気高く…!
「あぁぁ美しいっ
なぜボクはこんなにも美しいのか!!」
「そりゃ、先祖代々美人の嫁なり婿なり迎えてたからでしょ、血のお陰血のお陰」
流石王族、DNA万歳だ、たまにでてくる普通顔は嫁の実家の血が出てくるせいだろう
「なにぃっでは借り物だということか?!」
「そういう表現もまぁ間違いとは言わないけどね」
「では本物にするにはどうすればいいのだっ」
「内面を美しくすることで本物の輝きを与えればいいんじゃない?」
「なるほど理解した!!」
その日から、彼は食事を野菜中心に切り替え、脂っこいものは避けるよう心掛けた
酒も深酒はせず、飲んでもグラス2~3杯といった程度
いやあの…内面っていうか、内臓……
しかも食生活の改善で、肌や髪の色艶が増し、益々美しさに磨きが掛かっている
女として、これほど腹の立つ相手もいない、おのれ女の敵…!
「そなたの言うとおりにしたところ、益々ボクの美しさに磨きが掛かった!」
「あぁ…うん……」
嫌味も通じやしねぇ!!
なにこれ、こいつどうにかしたい、どうにかっていうか、完膚無きまでにどうにかしたい!
しかし、内臓(彼的には内面)を磨くことで誰でも美しくなれるのだとある種の誤った学習を経た彼は、努力によって美しくなれるのであれば皆も美しくあるべきだ!と市井で炊き出しを始め、なんだか間違った思考経路による善い到達点に辿り着き、臣民から絶大な信を得た
……むかつく!
彼は更なる美への追求のため、他には何が必要だろうか、とあたしに相談してきたが
色々やさぐれていたあたしは
「あたしにばっか聞いてないで、他の人にも聞いてみれば」
そう あしらったところ
「なるほど、十人居れば意見も十通りということだな!」
と、臣下達(彼の美への追求が国民への愛だと絶賛勘違い中)に相談したところ
彼は独断専行をよしとしない、下々の者の意見を取り入れる良き王位継承候補者だと臣下達からの忠誠心もうなぎ上り
……なぜだ!
因みに、その結果、美しさには知性と愛も必要、それから内臓(内面)の美しさの為には運動(労働?)も必要だとの結論に達した彼は、あらゆる方面の学問を究め
ついでに国の各所に学校と、仕事斡旋所を作った
これによって、国民の王子信望度は怒髪天を突く…いや、怒髪じゃなくって、えー…
鯉が滝を昇って龍になるが如く?、どんどん上がった
…ぐぬぅ!!
さ…さらに……!
「美しい…なるほどこれが愛の結晶!」
「ふにゃあっほゃあっ」
「うぉーい高く上げすぎ!!
首据わってないんだから、たとえしっかり支えててもそんなことすんな!」
「ふむ、繊細で美しいな!!流石ボクの子!」
「分かった分かった、分かったから落ち着け」
出産のせいで骨盤がくがくなために、赤ん坊を取り返すこともできない…
侍女よ、そのバカ王子をぶん殴ってくれぇぇえええ!!
あぁぁ、なんであたしはこんなバカの子なんて産んだんだろう
美しき愛と運動!とか言って、下ネタもほどほどにしろこのナルシストが!!
しかし、美しいものを愛でているだけなのに、傍目には高貴な身分にそぐわない子煩悩な姿と
運動(はいはい下ネタ下ネタ)の結果ぽこぽこ生まれてくる子供が証明の愛妻溺愛っぷりは
国内外に家庭的な王族の姿を大々的にアピールし、彼は後に王位継承権八位にも関わらず王位を継承し、美しき賢王として名を馳せた
……誰か嘘だと言ってくれぇぇえええええ!!!
愛はある…筈!