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今回は別視点からのヨハネスブルクをお送り致します。
サブタイトルは『危険なリポーター』です。
では、どうぞ!
Dangerous Reporter
 パトリック・シェファードは仕事の相方、カメラマンのハズと戦闘が激しくなりつつあるヨハネスブルク市内へ向けて車を走らせていた。
 パトリックはCNNのベテラン女性リポーターで、世界中を駆け巡りスクープを見つけては世界中を驚かせてきた。彼女は「真実のスクープ・リポートを視聴者へ届ける」自分の仕事を誇りに思っている。最近は東欧で頻繁に行われていた若年層を対象にした人身売買の衝撃的な現場での取引をスクープし、持ち帰って米国中で反響を巻き起こした。過去には南米の麻薬王をマイクとカメラ、そして彼女の図太い根性でFBIの協力を得て逮捕まで追いつめたり、ベネズエラの独裁者、チャベス大統領とガチンコで互いの国家思想をぶつけ合ったりと、激しい取材方法で、彼女がもたらす過激なスクープネタは同社でも一目置かれるアクティブ・リポーターな存在でいる。
彼女の仕事場はテレビ局の退屈なデスクや、NYの自然豊かで美しい公園や、人の賑わう街中や、観客の熱気で盛り上がる競技場ではない。パトリックの取材には必ず危険が纏わり付いている。それは人間の影のように、だ。時には夕暮れ時の背丈よりも伸びた長い影のように、取材よりも危険の方が増すときだってある。それでもパトリックの強い真実に対する執念と強運によって大事に至ったことはない。
 今回の取材は南アフリカにいる恋人から現地に漂う不穏な空気は必ず大スクープになると助言されて来たが、今まさに恋人が予言した通りに事は起きていた。現政権に対する軍事クーデターが今自分達の目の前で繰り広げられているのだ。
 民間軍事会社の武装社員が運転する防弾装甲が施されたメルセデス・ベンツSUVは安全な場所を目指して奔走する民間人の車とは逆の方向へ走っている。ここへ来るまでに幾つか破壊された正規軍の装甲車やトラックを見かけた。同じ軍隊同士が戦っている訳だから識別には苦労しているのだろう、と市内に入る前はそう思っていた。
しかし、彼らも馬鹿ではない。反乱軍の車両には赤で鉤十字のペイントが書かれ、兵士には赤い鉤十字のパッチを持たせ、同志討ちを避ける対策をとっていた。だから、道中に見た鉤十字のない残骸が正規軍のものだと分かったわけだ。

「リック、今回は今まで以上に凄い画がとれそうだな!」

興奮ぎみでカメラを回しながらパトリックへ話しかけるハズは彼女の事をリックと呼ぶ。ハズとパトリックは長い間コンビを組んできた。お調子者の性格なカメラマンのハズ・ギャクシィはNY産まれの都会男だ。

「ハズ、窓だけは絶対に開けるなよ。流れ弾で頭が吹き飛ぶぞ!」

ハンドルを握って前方に視界を凝らせたまま注告した男は今回パトリック達の護衛をまかされた民間軍事企業BM(Big・Mather)社の武装社員。運転手の他に助手席には北欧人種の雪のように白い肌が美しい女性武装社員がいる。二人とも防弾チョッキを着用し、身元が分からないように射撃用のサングラスをかけている。運転手の男は腰に拳銃を装備し、北欧人の女性は常にドイツ軍が正式採用しているG36アサルトライフルのカービンタイプを持っている。パトリックもハズも防弾チョッキは着用しているが、さすがに拳銃は装備していない。BM社の担当からは護身用に持てと二人とも強く勧められたが、持ち慣れない物はもたない主義の二人。それにそんな物騒なものが無くとも危険な取材を成し遂げてきた二人には本当に必要のないものだった。むしろ連絡用に無線を持たせてほしいとパトリックは担当に申請。それが受理されて、4人の耳にはヘッドフォンタイプの無線機を所持している。これがあれば、もしもの時は助けを呼べるし、いつでも連絡がとれるから精神的にも安心感は十分あった。

「あんたはこんな危険な場所で、よく震え上がる事もせずに状況を書き留めていられるね」

助手席の北欧人女性がパトリックに訊いた。

「これが、私の仕事であって、天命だと思ってますから」
「天命ねぃ。じゃあ私等の天命は鉛弾で悪者を撃ち殺して世の中安泰にさせることだな」
「リリの言う天命が本当にそうだとしたら、神様ってのは本当に酷な野郎だ」

運転手の男の名はガブリエル・ハンダーズ。リリと呼ばれた助手席の女性の名前はリリ・シュカルザイ。
 

 リックはCNNのNY支社を出る前にガブリエルとリリ二人の経歴が書かれた書類を局長から渡された。それを南アフリカ行きの飛行機の中で延々と睨めっこしながら局長の余計な御世話をどう対処していこうかあれこれ思考錯誤していた。考えも纏まらないうちに飛行機は着陸態勢に入っていた。リックには彼らの護衛が無くても仕事は完ぺきにこなせる自信があった。
 BM社から提出された資料を見る限りで、二人の仕事振りには正直、驚かされた。世界各国を飛び回り、ありとあらゆる依頼を完璧にこなしていた。その幅は広く、各国の要人警護から某国首相の暗殺までと、二人の仕事内容にはリックが取材のネタにすればトップニュース級の事項までもが記載されていた。ここまで書いて大丈夫なの?と記者である彼女が心配してしまうほど、正直に書かれていたのだ。彼らがこなしてきた仕事の中にはいくつかリックの記憶にも残っている有名な事件も含まれていた。ここまで公開して先方はいったい何を考えているのか?と飛行機を降りた時にはガブリエルとリリの二人に会う前から疑問を抱いていた。
リックは仕事の経験上人を見抜く目が人並み以上に優れている。その彼女が飛行場のターミナルで二人に出会ったその時、二人に抱いていて疑問などはどこかへ飛んでしまっていた。人当たりのいい性格のガブリエルに楽天的な性格のリリ。写真とは随分違った印象だった。

 混雑する市内の幹線道路を走る車内から、危険から逃れようとする民間人達を撮影していると彼らに、共通点がある事にリックは気づいた。自前のカメラで彼らを撮りながら、郊外へ脱出する人。車で逃げる人もいれば徒歩で逃げる人もいる。しかし、実際道路はこの混乱の中だけに渋滞し一向に流れは回復する兆しをみせずにいた。そんな民達のほとんどがクーデター軍の識別方法と同じ赤い鉤十字のマークを必ず携えている。車には小さな旗。歩く人々は様々で、大きな旗を掲げて行進する人間もいればTシャツのプリントがそうであったり、腕章なんていうのもあった。
この識別用の赤いマーク。これは、先に行われた大統領選挙で独裁者の対抗馬として独裁政治に終止符を打つべく国民の期待の星であった大統領候補、ジョビリョン・ムカリーニ氏のシンボルマークであった。今回のクーデターを総指揮する人物こそが民主化を取り戻す為に立ちあがったムカリーニ氏本人だと、リックは読んでいる。
 彼は大統領選挙最後の投票区であったここ、ヨハネスブルクでの開票前に政治世界から追放された。次期大統領決定は確実だったムカリーニ氏。しかし、彼の第二秘書の強姦事件がスクープされるや否やこの機会を待っていたと言わんばかりに独裁者はムカリーニ氏へ秘書の責任をとって政治界から失せるよう言い渡した。独裁者は裁判官達からもその地位奪っていた為、ムカリーニ氏は為す術もなく政界から追放された。
 独裁者はアフリカ大陸の新たな覇者になろうと、暴君振りを大いに奮い、様々な迫害を行った。
皆無に終わった大統領選挙の後、独裁者の悪態に臨界を超えた国民達は国の現状を打開する唯一の希望の星、ムカリーニ氏へクーデターを起こすよう直接呼びかけた。それを受けたムカリーニ氏は愛国心ゆえに決起。まず、軍部内における彼の親派で信頼置ける将官にその話を持ちかけ、大まかな計画を立案。元々軍部にも度重なるテロリストや武装集団との戦闘に嫌気がさし、独裁者に遺憾する奴は多かった。特に上層部にその傾向は大きく見られる。戦場へ送り出すのは命令を下す士官達だ。この現状を変える事が出来ずにいる事が、無意味な戦闘で死んでいく若い兵士達に申し訳がつかないと零す将官すらいるほど、独裁者への離反意識が深いのは軍部の実状。ムカリーニ氏の当選確定が報道された時には民間人よりも軍部の人間の方が胸をなで下ろしていた。

 ムカリーニ氏が挙げたマニュフェストの中にテロとの和解交渉という異例の項目があったからだ。彼はベトナムでのアメリカ、中東でのソ連を見習い脅威との和解をとる事でこれ以上無駄な争いを無くそうと考えていた。だがその機会を自らの地位の為に潰した独裁者を今度こそ引き摺り下ろす為にも彼等は結束して行動にでた。と、リックは想像している。実際の処は全く分からない。だが、この国で起きている事は紛れもない軍事クーデターだ。それも超大規模な。
それに、ほぼ同時に全国で行動開始したクーデター軍の大半がその地域の独裁者親派を撃退する事に成功していた。リックが集めた情報だけでも今回のクーデターは完全に成功の域に達していた。ここ、ヨハネスブルクの正規軍が陥落するのも時間の問題だろう。

 ヨハネスブルク市内へ入ると、リック達の最終目的地であるヨハネスブルク国際空港へさらに車を走らせた。国道12号線を南下するルートを行く。中心地を避けて行けば無駄な戦闘に巻き込まれず、安全に目的地に着く事が出来るとガブリエルからの提案だった。しかし、その提案にリックは反論した。敢えて危険な中心街を通るルートを行ってほしいと強く願い出た。
二人はまだ満足にこのクーデターの取材をしていないと感じていた。
 真実への貪欲な執着。時にそれがどれ程己を死に近づける要因になるかまだはっきりと判っていない二人は、無茶をしても死ぬ事はないという確信のない自信がそうさせていた。
その哀れな心構えを見抜いていたリリは、二人を諭すようにこう説明した。

「二人は戦争カメラマンでも、徒軍ジャーナリストでもない。そこまでして真実が知りたいならなぜ、ここへ来たの。そんなに真実が知りたいなら首都へ行けばいいじゃない。直接独裁者にあってインタビューすればすべて判る事よ。それをしないのはなぜ?」

リリの問いに二人は言葉を詰まらせた。

「結局、そこまでの危険を犯す勇気と度胸がないのよ。それを悟られまいと、市内で戦闘がまだ続いている中心街へ行くっていう無謀な選択が出たの。死んだら終わり。そんな事も分からない人が天命だの使命だなんて口走らない事ね」

とリリに強く言われ、返す言葉もないリック。ハズもやりきれなさから髪をクシャクシャと掻き毟った。

「じゃ、このまま国道を下るルートで空港へ向かう」

と、ガブリエル。

「それでいいわよね、リック?」
「ええ、問題ないはリリさん」

力無い言葉でリックは答えた。

 しばらく車を走らせると今までの畑ばかりだった殺風景な処からなちょっとした町の中へ入った。上下二車線の下りは非難する民間人の車で渋滞している。町に入ればどこも同じ光景だった。通りの左右には低い屋根の民家や商店が立ち並んでいる。高い建物はほとんど見当たらない。せいぜい5,6階建のビル程度だ。屋根の低い建物はそのほとんどが木々よりも低く、ガブリエルとリリは以前仕事をこなした事のあるモガデッシオの町並み思いだしていた。

「ここじゃ略奪や強奪なんて物騒なことがなそうだな。混乱も少ないようだし。比較的に安全な町みたいだぞ」

と、気を取り直して避難する民間人にカメラ向けて回し始めたハズが前の二人に向けて言った。しかし、ガブリエルから返ってきた言葉は厳しかった。

「希望的観測で物をいっちゃ駄目だ。銃声は聞こえる、西側には幾つか黒煙が見える。ここもすぐに戦場に変わるぞ。」
「判るの?」

彼の鋭い洞察力に驚いたリックが聞き返す。それに答えたのはリリだった。

「判るわよ。硝炎と流血の匂いがすぐそこまでプンプン匂って来てるわ」

と、奇妙な含み笑いをした彼女は、手に持っていたG36Kの折りたたみ式ストックを伸ばし、5.56ミリ口径のライフル弾が30発詰まった弾倉を本体に叩き込み、コッキング。いつでも撃てる状況にしておく。この光景が二人に戦闘が近い事を強く感じさせる。車内は一気に緊張感に包まれた。

「おい、後ろからクーデター軍の装甲車が来たぞ」

ハズはカメラを後部へ向けて近づいてくる装輪装甲車をカメラに収める。
車体を茶色で塗装した八輪の装甲車。その上部には回転式の砲塔が装備それていた。『ルーイカット』装甲車だ。『ルーイカット』は南アフリカ製の装輪装甲車で、偵察や火力支援、対戦車戦闘を主な任務としている。
 そんな『ルーイカット』がリック達のSUVの隣で並走すると、運転席のハッチから兵士が顔を出し、こちらに向かって何か叫び始めた。その顔をしっかりとカメラに収めるハズ。その声を聞こうと窓を開けるためにリックがボタンを押そうとしたが、それをガブリエルが止めた。兵士は幾つか叫んでから諦めた表情で車内へ戻ってしまった。『ルーイカット』は追い抜き様にハザードランプを点滅させ最後のメッセージを四人のSUVに伝えた。その行為が一体何を意味したのか、四人はいつの間にか市内を包み込んでいた唯ならない雰囲気で気づかされた。『ルーイカット』の後方には完全武装の兵士を満載したラーテル歩兵戦闘車や大型トラックが続いている。反対車線の民間人はこの異常事態にとうとう車を捨てて逃げ出した。戦闘はまじかに迫っていた。

「今から引き返しても遅くない、引き返して国道8号に乗り換えようぜ。かなり遠回りになるがここを行くよりましなルートだ」

と、ハズは地図を広げてルート変更の提案をする。
「そうだな、銃声はまだ遠い。ここでUターンしてさっきの分岐点へ戻るぞ」
とハンドルをきったガブリエル。

「って、逆走!?」

小回りの利くタイプのSUVだったので切り返す事無く今まで来た道をリックの言葉通り逆走を始めた。すでに現地点は町の中心部。町の入口まで約12キロはある。警告を促した『ルーイカット』装甲車を尻目に走るSUV。ふと、リックはクーデター軍の勇士をカメラに収めようと振り返った。彼女の眼に映ったのはビルの間から真っ直ぐ伸びる白い筋状の煙、その先には高速で移動する飛翔体が軍団の先頭を走るあの『ルーイカット』目掛けていた。その光景に息を飲んだリック。唾が喉を通るより先に装輪装甲車が爆発、炎上した。
その轟音に驚いた残る三人が一斉に振り向く。ガブリエルはSUVを急停車させた。

「今のなに?」

困惑した表情でリックは車内の人間に答えを求める。

「ミサイル?」

ハズが射線上に残る白い筋の煙を見て呟いた。それは大通りのT字路に並ぶビルの合間から延びていた。その先にある何かを見つけるべく視線を追わせるが、こちらが見つけるよりも先に射手が先に姿を現した。ビルの裏から轟音と独特なリズムを刻みながらヌウッと姿を出したのは南アフリカ国防軍の戦闘ヘリコプターAH―2ローイファクト。機体には赤い鉤十字の認証マークが無かった。正規軍だ。

「不味いぞ、偉い事になった・・・」

ハズが力無く溢すのとリリが叫ぶのは、ほぼ同時だった。

「緊急退避!!」

リリの叫び声からワンテンポ遅れてガブリエルがSUVのアクセルを全開で急発進させる。
後部座席から後ろの光景を写す二人。
眼前で起きている事はまさに惨劇だった。
機首下部に装備された20ミリGA-1機関砲が火を噴くたびに装甲車や輸送トラックが火の玉になっていく。
ローイファクトは攻撃ヘリコプターとしては標準的な性能だが、国産の戦闘ヘリコプターにしては良く出来た性能だ。機体左右のスタビウィングには対戦車ミサイルとロケット弾を装備可能。各種センサーも現代の戦闘ヘリコプターの水準を満たしている。そんな機体がさらに4機現れた。
 軍事車両を食い散らかした戦闘ヘリコプターは次にクーデター派の民間人にその強力な牙を剥いた。大通りにはまだ、多くの民間人がいるにも拘らず20ミリ機関砲が容赦なく撃ちこまれていく。
強力なマズルフラッシュ。
耳を覆いたくなる射撃音。
ジャラジャラと音を立てて地上に落ちる空薬莢。
着弾した弾は人間の体を爆ぜ、引き裂く。鮮血は飛び散るのではなく、ペンキを溢した時のようにドバッと撒き散らせる。悲鳴を上げながら逃げ惑う民間人。それを楽しげに空から追い回すハンター。
一機のローイファルクが一度高度をとると上空を飛び去り、さらに奥へと続く避難民への攻撃に出た。
それに続いてもう一機が高度を上げる。
すぐさま、ロケット弾の射撃音が連続して聞こえてきた。

 市内の大通りに残ったローイファクトは残らず動くものを撃った。
足を撃たれた老婆に数十発の弾丸を叩き込み、痕片も残さず粉砕した。
建物の蔭に隠れた子連れの親子を赤外線で発見するとそこへロケット弾を撃ち込んだ。
 ありとあらゆる物に対して攻撃の手を緩めなかった。運よく弾丸を逃れる事が出来ても、目標を外したその弾丸は地面を抉り、兆弾してもなおその威力を保って逃げ惑う別の民間人を襲った。
無造作に撃たれた弾丸は当然車にも当たり、それが次々とガソリンへ引火。
誘爆を招く。目視で目標を発見する事が難しくなるとローイファクトは有り余ったパイロンのロケット弾を辺り一面にばら撒き始める。四人の乗るSUVもそのロケット弾の掃射を受けて直撃は免れたが車体は横転。車外に投げ出された。
 ハズのカメラは歩道に投げ出されたまま撮影を続ける。HDDには殺戮の現場が生々しく鮮明に記憶され続ける。

「立て、逃げるぞ!!」

リックは腕を引っ張られた痛みとガブリエルの怒鳴り声でぼうっとしていた視界を無理やり正常に戻された。SUVから放り出されコンクリートの地面に突っ伏していたリック。辺りを見渡すと道路は炎に包まれていた。ハズもリリに肩を預けた形で立ちあがった。

「歩けるか?」

ガブリエルはリックの手から離れて道路に転がっていたカメラをとると、それを渡しながら心配した面持ちで聞いた。

「えぇ、大丈夫。とにかく安全な場所へ移動しないと」

リックが言うと、ハズに手を貸しながら歩くリリが並んだ位置で呟いた。

「この町で安全な所が有るならね」

 この日、ヨハネスブルク市内全域でクーデター軍と正規軍との優勢が大きな変化を遂げていた。独裁者の親派が多いヨハネスブルクでは、独裁者派の民間人が武装し、民兵部隊を結成した事が大きな要因になっていた。
 しかし、全域から見れば殆どの地域で正規軍は武装解除され民兵も大半が駆逐されていた。唯一か所、ヨハネスブルク市だけが孤立無援で最後の悪あがきを始めた程度にすぎなかった。しかし、この一報を耳にした独裁者支持派の兵士や武装民間人達は敗走しつつ、彼らの最後の砦となるこの地へ向かっていた。
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