投稿が大分滞ってしまいました。
御免なさい。
お待たせしました、『アマゾネス』第16話。
Kissof th Dragonです。
※ジェット・リー出演の映画とは全く関連は御座いませんので了承下さい。
Kiss of the Dragon
アイゼンドラグーン専属の運び屋デルホ・アインカムはP-3Cオライオン――コールサイン”スカイ・アイからの報告に逐一耳を傾けていた。
『スカイ・アイよりアイゼンドラグーン全ユニットに報告。MEFの機甲部隊並びに歩兵部隊が敵司令部を包囲した。強襲チームは目標地点に急行せよ』
「アメちゃんに先を越されましたね」
デルホが運転するピックアップトラックの助手席に座る強襲班【チーム6】の分隊長ミズキ・シイナが肩を落としながら零す。
「MEFの奴等はじっくり獲物を煮詰めてから喰らい付く様な呑気な集団だ。今からでも十分間に合う。戦う前から気落ちすんなよシイナ。今回が復帰後の初陣だろ?」
「えぇ、そうですが忠犬の事もありますし・・・・・・」
「・・・・・・、確かに」
「部下も皆、戦意も士気も最高潮のはずですが、どうも歯切れが悪い」
「毎度の事だが、アマゾネスがどうにか丸く収めてくれるはずだ。俺はそう思ってる」
暗視ゴーグルを装着しながらデルホは運転しているのでその表情は中々読めないが、彼の言葉には妙に説得力があった。過去にもアマゾネスの忠犬が暴れると予告が何度も出たが、仲間に死傷者が出た事は一度もなかった。しかし、排除された敵勢力は無残な物だ。それを目の当たりにした他の強襲班はいつしか忠犬の暴走で自分達も皆殺しにされるんじゃないかと、恐怖心に刈られる様になったのだ。
「とにかく、今は自分の全うするべき仕事をこなす事だけを考えろ!」
「…分かりました。デルホさん、私頑張ります。忠犬の事も信じます」
ミズキが決意を新たにするのとピックアップトラックが現地に到着するのはほぼ同時だった。
デルホ達が市内の官庁通りに入ると、MEFの連中はデルホの読み通り増援の陸軍――M3ブラットレー装甲車、ストライカーICV、M1A1エイブラムスが激しい砲撃、銃撃を官庁街の一角に浴びせていた。上空ではAH-1Zバイパーが上空を旋回しながらM197 20ミリ機関砲の銃撃を浴びせていた。米軍の情報では官庁街の一角、半壊した市役所半径1.5キロ周囲には集結した最後の正規軍部隊が篭城戦を行っていた。対する反乱軍は官庁街にMEFの歩兵3個中隊を展開し、残党の駆除に当たっていた。正規軍と反乱軍との間で激しい銃撃戦が始まっていた。
ピックアップトラックを降りたミズキ達は装備の最終確認や市役所の見取り図のチェックを行いながら出発の準備を進めていた。部下達にもやっと、やる気が戻った様だ。
ミズキのやる気に溢れた態度に部下達も触発されたのか、移動中の何となく締まりの悪い表情から一変して目付きや雰囲気が普段通りの兵士としてのそれを取り戻した様で、皆殺気立った様子で出撃の合図を待っている。
「チーム6のミズキです。司令、官庁街に到着しました。これより戦闘地域に突入します」
「ビアンカだ。アマゾネスのチーム0の到着に時間が掛かる。官庁街への突入はお前達チーム6が先行しろ。チーム0にはバックアップに回ってもらう」
「了解!」
ビアンカからの指示にミズキは迷いの無い真っ直ぐな返事を返す。ミズキからは何処何かに吹っ切れた様な感じが伝わってきた。
「ミズキ、復帰後の初陣だ。健闘を祈る!」
ビアンカとの通信を切ったミズキは完全武装した部下と共に官庁街へと入っていく。去りぎわにミズキはデルホに回収地点のメモを渡し、固い握手を結んでから別れた。
「分隊は左右に展開。周囲の警戒を厳に進め。ロイ!」
ミズキは部下に手際良く指示を出すと、チーム6、ミズキの腹心の部下ロイ・アドラーを呼びつける。
「ハイ、分隊長!」
「狙撃手とSAWの射手を連れて市役所の対岸のビルに陣取れ。援護射撃と制圧狙撃を任せる」
「Yes ma’am!!」
ロイはドイツ系アメリカ人で彫りの深い顔立ちが特徴的な男。チーム6創設時からミズキとは行動を共にしている。長年の付き合いで二人の意思の疎通レベルは眉の動き一つで分かってしまう。任務中でも大概お互いの考えている事は言わずとも理解できた。
分隊が縦列の態勢で官庁街に一歩一歩近付く度に、激しい爆発音が腹の底にズシンズシンと響く。断続的に聞こえる銃撃音もだんだん近くなり、大通に差し掛かるとMEFの兵士の姿が確認できた。
チーム6はビルからの狙撃に警戒しながら、上下四車線の道路の中央分離帯を遮蔽物にしながらブラットレー装甲車の周辺に展開するMEFの兵士に接近、現場指揮官を呼び出す。
「リンドバーグ指令直属部隊からの増援だな。状況を手短に説明すると、戦闘は今から15分前に始まった、敵の本体は市役所に終結しているが、ここ一帯のオフィスビルに敵の残存部隊が潜んでいる。幾つかのビルには制圧班を向かわせたが全ての建物に部隊を向ける余裕は無い。幸い、我々の無線以外全ての周波数にジャミングが掛かっているお陰で敵の連携は取れていないも同然だ。だが、NATO軍が到着すればジャミングが解除される。それまでに、第一目標を抹消しなければいけない」
「了解!市役所までの最短ルートを行くわ。援護してちょうだい!」
「おいおい、無茶言うな。市役所の正面はおろか、裏手にすら回れない状況だ。どうやって近づくつもりだ!?」
「まぁ、見てなさい。貴方達は私達に銃口を向ける奴等に弾をぶち込むだけで良いから」
ミズキはMEFの現場指揮官にそれだけ伝えると、分隊にハンドシグナルで警戒態勢“厳”のまま密集形態で移動。の指示を出す。信じられない表情といった風の現場指揮官を尻目にチーム6は状況を開始した。
「こちらロイ、援護狙撃を開始」
「了解!」
短いやり取りの後、けたたましい銃撃音が溢れる官庁街に一際耳を打つ轟きが響く。
ロイ率いる援護狙撃班のM82A1バレッドによる狙撃だ。脱着式のボックスマガジンには重機関銃と同様の12.7mm×99弾薬を使用。特殊部隊向けに開発されたバレットは対物狙撃銃として、車両もしくはアサルトライフルやマシンガンでは対処不可能な目標を射撃する兵器として開発されたが、バレッドの持つ長射程と撃ち出す高威力の弾丸は専ら遠距離からの対人狙撃に使用される事が多い。
ロイの狙撃班には2丁のバレッドが配備され、立て続けに凄まじい射撃音が官庁街に響き渡った。バレッドに狙われた敵は人体の一部を大きく損傷、もしくは欠損して多大なダメージを与える事が可能だ。 2003年のイラク戦争では1キロ以上離れた距離からバレッドで狙撃されイラク兵の人体が真っ二つ裂けた例もある。
ロイ達による援護狙撃で敵の防御に穴が生じた。そこをミズキ達は突いた。まだ、倒壊を免れたビルの一階へ突入。周囲の状況を細かく確認しながら敵の気配が無いか警戒。安全を確認すると、エントランスを抜けて非常口から外へ出る。狭い路地を挟んで隣のビルへ向かう。
官庁街の作りは碁盤状に出来ているから細い路地を通れば隣のビルに移る事が可能なのだ。チーム6は次々とビルを移り歩き、敵を発見すれば的確な銃撃で標的を射殺。チームは6は左側面から市役所を目指す。目標に近付くにつれ廃墟ビルに陣取る民兵や南アフリカ防衛軍の兵士は数が増えていく。
ミズキは非常口から最後の廃墟ビルに突入すると、エントランス中央に固まって武器・弾薬を運びだそうとする民兵を発見。サイレンサーを装着したFN P90SMGを発砲した。暗視装置対応のホログラフィックサイト越しに民兵の急所を正確な射撃で射抜く。人体を貫通した弾丸が次々と民兵達が運んでいた弾薬箱に着弾。木箱の破片が宙を舞う。
P90SMGが使用する5.7mm×28弾は従来のボディアーマーを貫通する目的で開発された特殊弾薬。ライフル弾を小型化したような形状をしている。破壊力は正にアサルトライフル並だ。
ミズキは低い姿勢のまま、壁伝いにエントランスにでると、インフォメーションのカウンターに人影を見つけ、瞬時に照準をとると同時に手元の回転レバーをセミオート射撃にセット。物陰から頭を出してミズキ達を探す民兵の頭に二発の弾丸をぶち込む。顔面に特殊弾薬を喰らった民兵が脳漿をぶちまけながらもんどり打って倒れる。反対側にも同様の様子を伺う民兵が居たので、騒がれる前に射殺。部下の何人かがサイレンサーを装着したMP5A6SMGで残党を静かに駆逐する。
一階の制圧を終えたチーム6は中央エントランスを抜けた所で部隊を半分に分けた。
最後の廃墟ビルと市役所は二階の連絡通路で繋がっている。ミズキは部下に手短な作戦概要を伝えると、分隊を二階の連絡通路から攻める班と、市役所の一階から攻める二手に分けた。連携プレーが重要視されるこの作戦に濃密な無線連絡は必須だ。ミズキは部下数名を連れて二階へ上がって行った。
階段を登りながらミズキは復帰第一戦目にも関わらず、自分のモチベーションと戦場での第六感が最高に冴えている事に内心驚いていた。体内ではアドレナリンの分泌が急増し、それに伴い血流が急速に進み脈拍が早くなっている。ミズキは周囲に自分の鼓動が漏れているのでは無いかと心配になる程、感情が昂っていた。
(この胸の高鳴り、原因はあの人なんだよね……)
ミズキは内心で自問自答する。
東洋のアマゾネス。ミズキが自衛官だった頃から噂を耳にしていた女傭兵。何時しかアマゾネスはミズキの憧れの存在、目標になっていた。しかし、ミズキの耳に入ってくる他人の言葉で語られるアマゾネスは何時しかミズキにとってフェイクに思えてきた。気付いた時には自衛官を止め、婚約者を捨てて混沌と悪意が渦を巻く戦場に立っていた。アマゾネスを追いかけ、この南アフリカの地にやって来た。今では同じ所属部隊で同じ戦場で一緒に戦っている。未だ本人会った事すら無いが同じ空気を吸っていると思うだけで心が満たされる。アマゾネスはミズキの全てになっていた。
性的興奮状態にある時は必ずミズキの勝手な妄想の世界で具現化されたアマゾネスに無茶苦茶にされるシュチュエーションで自分を慰めていた。いやらしい女だ、とたまに罪悪感に苛まれもするが、ミズキの中でアマゾネスが占めるウエイトは広い。
「私の全てを貴女に捧げます……だから、一度この目で貴女の姿を焼き付けたい」
不意にミズキの口から胸の内が溢れ出る。
ミズキの中で一つの確信が出来ていた。今晩必ずアマゾネスに会えると。
南アフリカ防衛軍の拠点を潰したコトミ達は、ビアンカが気を利かせてコトミ達の下に送った戦場のタクシー、MH―6リトルバードに搭乗して次の目標地点の市役所上空へ向かっていた。
制空権が完全に米軍へと移行したヨハネスの夜空には無数の戦闘機やUAV、戦闘ヘリコプターにコトミ達の様に人員輸送用のヘリコプターが飛び交っていた。
「野郎ども、尻の穴の小せぇニガー共にFuckしてやれ!」
ヘッドフォン越しのコトミの激励に部下達は吼えた。
「逃げる奴には尻の穴をもう一つこさえてやれ!!立ち向かう奴には有りったけの弾丸をぶち込んでやれ!!」
コトミに続いてレイシーが声を張る。
「ドラゴンのキスは?」
レイシの問いに一同が答える。
「血と硝煙の味!」
チーム0の指揮の高さは今絶頂を迎えた。
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