アマゾネス、本年より復活です!
今まで読んで下さった方々、大変長らくお待たせしました。アマゾネス改定版を、今後とも宜しくお願い致します。 海ゾッ娘
DuckHunt:前編
コトミ・アラサキ一等軍曹は軍用ヘリコプター【MH-53Hペイブロウ】のウインドウ越しに眼下に広がる錆びれた町並みを眺めた。端正な顔立ちのコトミの顔は憂いに沈み、何処となく悲しそうに見えた。緊急招集を受け、休暇先のハイチから強制的に連れ帰らせれたコトミは所属先の傭兵部隊の前線基地――南アフリカ、ポート・エドワードの航空基地に嫌々帰還した。
広々とした機内にはコトミの部下12人が砂漠使用のデジタル迷彩柄のBDUにコヨーテブラウン色の防弾チョッキとタクティカルベストを重ね着した完全武装で左右のベンチに鎮座していた。12人の部下は多種多様な人種で構成されていた。白人、ヒスパニック、黄色人種、と様々だ。コトミ自身も極東の島国【日本】の生まれで、黄色人種に分類される。傭兵部隊ではよく見かけられる光景だ。そんな部下たちの事をコトミは親兄弟よりも熟知している。とりわけフランス外人部隊に所属していた当時からの部下とは長年、生活と訓練を共にしてきた。基礎訓練、降下訓練所、レンジャー訓練所・配属先のコルシカ島を通じてずっと一緒だったものもいる。そんな12人の部下とは世界中色々な所を旅したものだ。南米、東南アジア、中央アジア、西アジア、東欧……世界の紛争地域は殆ど練り歩いてきた。共に戦い、時には派手に喧嘩し、笑い、仲間の死に涙したり、時には行った先の国で美味い食べ物や酒やに舌鼓を打ちながら、家族の事や故郷の事、嫁や恋人の話しを肴に朝まで飲み明かしたりもした。彼らは今やコトミとって、掛け替えのない戦友として常に共に行動している。外人部隊を除隊し、傭兵稼業に転職したコトミは現在、南アフリカ政府に雇われていた。
彼女の身長は186センチ、体重95キロ、体脂肪率9%というその体は、世界のトップボディビルダーのように筋肉質で、神話に登場するアマゾネスのように猛々しく、どんな格闘家よりも鋭く引き締まっている。髪型はボリュームのある艶やかで長い赤髪のポニーテール。それが背中まで垂れかかっている。鼻筋が通り、切れ長な目元という繊細な顔立ちと、捕食獣の目、挑発的な笑みが似合う凛々しい唇が印象的。コトミの背中にはタロット・カード風の鎖で縛られた黒い天使の羽のタトゥーが掘られている。このタトゥーは仲間内から「堕天使の象徴」と囁かれ、コトミ・アラサキを象徴する最もなトレードマークだ。カーゴパンツで隠れて今は見えないが左太ももにも、巻きつくようにアナコンダのタトゥーが入っている。今のコトミの服装は完全装備の部下達と比べるとかなりラフな格好でいた。背中が大きく括れた黒地のタンクトップ一枚で筋肉質ながらも豊満な巨乳を包み、下半身は砂漠用のカーゴパンツ、足元を軍用ブーツで固めた格好で座席に座っている。右手にはアタッチメントが多く施されたM4A1が握られている。
コトミ達を乗せた軍用ヘリコプターは今まさに戦場へ向かっていた。戦場は彼女達の仕事場だ。国の為、それだけを理由に戦う正規兵とは違い、世界中どこでも戦う場所へ行って戦うのがコトミ達傭兵だ。戦争に群がるハイエナだと云う輩もいるが、コトミには傭兵がプライドだった。
(いまから悪人をぶっ殺す俺達罪人に神の御加護を、アーメン)
傭兵部隊『アイゼン・ドラグーン』の司令官からコトミの積載班へ新しい仕事の依頼が通達されたのは、コトミが休暇から強制的に戻されてから一時間と掛からなかった。傭兵部隊を統べる司令官は、褐色の肌が美しい女軍人。名前はビアンカ・マッディガル。鋭く、どこか猛禽類を思わせるような知的で危険な双眸が特徴的。長い手足に抜群のプロポーションを持ちながら、しなやかで柔軟性のあるビアンカの身体はライオンや豹のそれに近い美がある。身長182センチの長身はその存在だけで、相手に強烈な威圧感を与える事ができるほど。
テキサスの出身で、女だてらに一個中隊を統べるだけあってその胆っ玉は相当すわっている。人類滅亡ぐらいの大事件じゃなければうろたえないだろう。もともとはアメリカ海軍特殊部隊の精鋭NavySELAに所属するベテラン中佐だった。彼女を頭脳とした傭兵部隊は情け容赦の無いキリングソルジャーとして仕事をこなしてきた。
駐屯地の館内放送で出撃の召集が掛けられてから、5分と経たずにブリーフィングが行われた。暗い室内には司令官のビアンカとコトミが最も信頼を寄せる精鋭部隊の12人が椅子に座っている。パワーポインターに映し出された目標周辺の地図や衛星写真を下にブリーフィングは進められる。
「作戦内容は、南アフリカ政府に反抗する過激派武装勢力の活動拠点制圧と、拉致された親米派政府高官の救出だ。別件でもう一つ仕事の依頼が来ている。内容は武装勢力の活動拠点制圧時にシーア派の過激派指導者、ロイカット・ダイソンの存在を確認した場合、この男を確保すること。最悪の場合射殺しても構わないが、遺体は持ち帰ること。ロイカットを生きて国連に引き渡せば一人50万$。死体の場合半分だ」
書類に目を通しながら話すビアンカの前で猛者達は歓声を上げた。
アメリカ軍やイギリス諜報機関が必死になって追っている男がロイカット・ダイソン。ロイカットは南米・アフリカ・中東・欧州と幅広く活動拠点を持ち、全世界に7万人を超える人数の同志を従える大物テロリスト。過去にロイカットの直接指示で行われた犯行は、すでに国連でも裁き切れない程の数に昇る。例をあげるならば、先進国12ヶ国の国内に在るアメリカ・イギリス両国大使館を標的にした爆弾テロを始め、紛争地域における兵器売買、麻薬売買、暗殺、破壊活動、または民間人の大量虐殺等、手広い悪事を重ねてきた。無論、世界的に指名手配され、ここ数年で一役有名人となった。いまやアルカイダを凌ぐ巨大な武装勢力として悪の枢軸の頂点を占める存在がロイカット・ダイソンなのだ。
ビアンカの説明は続く。
「敵の規模は武装勢力約200名前後。自動小銃やRPG(対戦車ロケットランチャー)・対空機関砲等で武装。ロイカットが居た場合、護衛の数は20人前後だ。重火器の類は確認されていないが、十分に注意すること」
パワーポイントの画像が変わる。
「次に拉致された政府高官は政府の外交官だ、名前はジェシカ・バドリア。親米派の重要書類を持ってイスラエルの外交官と会談を行う予定だったが、空港へ行く道中に襲撃され拉致された模様」
この件についてコトミは呼び出される前にCNNの報道でチェック済み。反政府勢力は犯行声明を出していたが、コトミはその組織名を聞いた事がなかった。最近の反政府勢力から要求されるのはどれも現政権の解散と大統領の辞任。今回の誘拐事件は珍しい事ではない、この国ではテロ行為や拉致・暗殺・暴動が全土で拡大している。その理由は4年前に就任したこの国の大統領にある。彼は強硬派で有名だった。事実、彼の演説を聞きに行ったプレス達は、彼の口から飛び出してくる「抹殺」「皆殺し」というセリフの多さに驚いたほどだ。このせいか、南アフリカの大統領を狙ったテロ行為が最近各主要都市で頻繁に発生していた。徹底抗戦の姿勢を崩さない政府はこれに応戦するために国軍の強化を計ると同時に、海外から傭兵を招集し、その中から優れた人材を選抜してテロリスト掃討の為の精鋭部隊を編成した。
コトミの部隊はその精鋭の中でもひときわ群を抜く実力を持っている。主にコトミの部隊に課せられる任務は【制圧】と【人質救出】で両方とも彼女が専門とする作戦だ。
「最後に今回の戦闘に関する交戦規定についてだが、いつも通りに血祭にして来い。ただ、ロイカットは生け捕りにするんだ。敵を片っ端から殺せ。生きて帰れば今夜はBBQパーティーが待ってるぞ!!」
「ウォォォォォ!!」
血と肉に飢えた狼の雄たけびが上がる。
「以上だ。首尾よくやってくれ!!」
「Yesma'am!!」
出撃準備の為に続々と部屋を後にする隊員達。その集団の中に埋もれる一人にビアンカは声を掛ける。
「コトミ、お前は残れ」
ブリーフィングルームを出かけたコトミは足を止めた。
「何?」
「お前に見せたいものがあるんだ、興味ないか?」
全員が退出した室内の演台には黒く薄いブリーフケースを片手に持ったビアンカがまだ残っていた。彼女の手でヒラヒラと宙を浮いているそれには開封厳禁と書かれたステッカーが張れている。これだけでコトミは十分興味を惹かれた。
「面白そうじゃん!!」
開けた扉を閉めて、室内の椅子に腰を落ちつける。ビアンカはその正面へパイプ椅子を置いて座った。さっそく、ブリーフケースを机に置くと、容赦なく封を開く。
「これは、拉致された高官のちょっとしたプロフィールだ。今回の誘拐事件は不可解な点が多い。私も個人的に色々と調べたんだが、その内の一つだ」
開かれた資料には女性外交官のプロフィールが記されていた。かなりやり手の外交官で、完全なキャリヤ組。容姿も抜群だった。テレビニュースでも明かされなかった本人の写真が資料にはあった。コトミは、写真を見た時、瞬時に犯したいと本能が叫んでしまった程、ジェシカ・バドリオはコトミの好みだった。コトミは一切男性を受け付けない。レズビアンだ。
「コトミのタイプだろ?」
「もち!!今チョッと疼いてるよ・・・」
頬を薄らと赤めながら答えるコトミ。ビアンカはコトミを基本的に変人として見ている。女しか愛せないは――まぁ、自分もそうだが。一人称は俺。そのくせ女の魅力は全て備えている。食事は人一倍食べるし、激辛好き。訓練以外の時間といえば酒か、女を侍らせて四六時中乱れあっている始末。戦場に出れば笑いながら人を殺し、殺されるのを鑑賞する。本人いわく、
「どんな香水や香の香りなんかよりも血と硝煙の臭いが大好きだ」
と公言している。挙げてみればこのほかにキリがない位だが、十分すぎるほど変人だといえる。それでも、コトミ同様レズビアンのビアンカは彼女が好きで好きで堪らない。今からでも押し倒して犯してしまいたいくらい好きだ。勿論、コトミはそれに応えてくれる。だが、どの角度から見てもこの女豹は変人としか思えない。
「っじゃ、そろそろ準備してくるわ」
「たのんだぞ、コトミ」
コトミはしっかり、片手に写真を持って立ち上がると、同時に立ち上がったビアンカに軽くキス。
「じゃ、またなビアンカ」
ビアンカに一言残して退出した。そういえば、コトミの変人振りの代表例はもうひとつあった。上官のビアンカを呼び捨てで呼ぶことだ。
「ジェシカ、いい女だな!」
ジェシカの写真を見ながらふとコトミは昔付き合った女に似ている事に気づいた。生まれ故郷が日本のコトミは高校生を卒業するまで日本にいた。レズビアンのコトミだが、初体験の相手は全うな日本男子だった。コトミが破瓜を経験したのは高校1年。相手は二つ上の先輩だった。興味本位で部活の先輩を誘惑してヤッてみたものの、感想は超最悪。まだ、ピュアだったこの頃のコトミは大事に残しておくべきものをあっさりと失った喪失感から激怒。相手をボッコボコにして病院送りにした。酷い、一方的な八つ当たり。そんな事情を知ってか知らずか、高校時代コトミに言い寄る男は後を絶たなかった。そんな分からず屋な男達の大半は強烈な蹴りを急所に叩き込まれて、大事な息子が一生不全にされるのが落ちだった。
そんな根っからのレズビアンだったコトミは無論、女性からの人気は絶大。その反面、心に秘めた恋愛感情を告げられる娘は中々存在しなかった。原因はコトミが普段周囲に見せる強烈な雰囲気、それに圧倒されてしまうからだ。高校時代から現在までにコトミが付き合った女性は4人と以外に少ない。4人とも気が強い女性ばかりで、自分の思ったことをはっきりと口にできる女性達だった。
4人とも肉体関係まで踏み込んで親密な関係を築くが、コトミは恋愛に関して自分が酷い程、強い嫌悪感を感じるほどの不器用さだった。それはコトミの恋愛が一方的なのが原因。SEXはコトミが全主導権を握り、絶対にリードを取る。SEXそのものはまるで猛獣の交尾のように激しく趣旨はアブノーマル。交際した女性の半分がその異常な性癖にのめり込んでいった。そんな自分中心の性格は私生活にも反映していたので、全てにおいてコトミ中心が基本。それに、破天荒で酒豪とくる。SEXが上手いコトミはそれを武器に別れを告げようとする相手を留めてきた。
強硬手段をとれば、付き合う年数は長くなり、孤独になる事もなない。しかし、長ければ長くなるほど、別れた後の心の傷は深くなった。孤独を紛らわす女性はコトミの中で一種の麻薬になっていた。
とうとうSEXだけじゃ人間関係が保てなくなり別れ話が切り出されると、話は一気に急展開を迎える。恋人達はコトミが甘い罠を掛けられないような場所を選んで来る。
急展開を迎えた後は坂を転げ落ちるように奈落へと堕ちるコトミ。そんなコトミを尻目に恋人達は別れ際、口々に同じことを言って去って行く。
「SEXだけが取り柄のコトミといると疲れるの、さよなら」
俺にだってそれ以外の取り柄ぐらい有るぞ!!・・・例えば返り血を浴びずに標的を殺す事とか、確実に相手を素手だけで殺せる事とか、二丁拳銃で大多数の標的を殺す事とか、2000メートル級の射撃を難なくこなせるとか、料理が上手いとか、実は綺麗好きだとか・・・・・・
別れ話の終盤、止めの一発を喰らって意気消沈したコトミは内心で毎回同じ事を呟いた。だが、少なくとも初めの四項目は口が裂けても言えない。
俺は平気で人を殺せる女だ、なんて。
そんな事が何年か置きに続いて最後の恋人と別れて数年経った今、コトミには自分の全てを受け入れてくれる寛大で心の広い大らかな恋人が二人いる。様は二股かけているのだ。そんな危険な綱渡りをしているコトミだが、両者とも心底からコトミを理解し、最愛を尽くしてくるからどちらも切れないという難題を抱えていた。それに、愛人が数人いるのも悩みの種だ。コトミは自分の中で恋愛は下手だけど女の扱いは上手いと自負している。まぁ、自負していること事態が問題なのだが。
この状況でさらに恋人紛いを増やそうか否かと葛藤しながら歩いていると反対側から歩いてきた白髪の青年が声をかけてきた。
「コトミちゃん、考え事しながら歩いているとそのおっきな胸、後ろから揉まれるぞ!!」
不意に現実に意識が戻ると、聞きなれた声にコトミは突然怒り出す。
「キャスパァ、いい加減に俺の前に現れるのを止めたらどうだ、ほかの男と同様今度こそその軟弱な玉を弾き飛ばすぞ!!」
「おお、おっかない!?精々今回の出先でされんなよ」
コトミの前で立ち止まったキャスパー・グランチェロ少尉は、軽口を飛ばしながらその人懐っこい笑顔を振舞うとバイバイと片手をヒラヒラさせてまた歩き出す。だが、
「そうだ、コトミちゃん。今回の任務は先に俺達が回されたんだ。でもよ、指令はそれを撤回してコトミちゃんにその任務を当てた。あの指令が命令を撤回した!どう思う?」
コトミに背を向けたまま立ち止まったキャスパー。表情は伺えないがさっきの軽口を叩いた声色とは明らかに変っている。二人の間に緊張感が生まれた。
「……俺はビアンカに忠誠を誓った。あんたの思い違いだ。とっと失せな」
「ふぅ、了解。兎に角気をつけな」
そう言ってキャスパーはコトミと別れた。
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