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フェイト
作:惺



ひとり


“現場”には凝固した血痕が残っていた。警察がやって来ると、幸島は無表情のまま、そこを出た。立ち入り禁止のテープを超えると、腕を組んでいる園田が見えた。
「最初は……お前が誘拐したのかと思っていた」
「はッ ひでえ話だ」
「近くで銀行強盗があったんだ。…警察から聞いた話じゃ、犯人は逃走中に追い詰められてこの辺りに逃げ込み、一人きりになった山崎を人質にして逃げたみたいだ」
「現場には血があるって聞いた。唯ちゃんのじゃないのか?」
「山崎は、おそらく浅く切られただけだ。大丈夫だ、生きてる」
「大丈夫って、お前っ!」
園田は幸嶋の襟首を掴んだ。幸嶋は、怯まずに真っ直ぐ園田を見据えている。
「こういう時、取り乱すべきか?」
静かに幸島は尋ねる。
「わからない。こういう特殊な状況には慣れていない」
襟を掴んでいた手が緩み、その拍子に幸嶋は支えを失ったかのように地に座りこんだ。
「人が死なない状況にか」
浴びせられた皮肉にも何も反応しない。その代わりただ、応答した。
「わからないんだ……」
「唯ちゃんは、お前に深く関わりすぎた。その所為かもしれない」



「このままだと身内の死に目を見る事になるぞ。幸嶋」
その言葉は、幸嶋の意志のなかに杭となって打たれた。痛みではなく、己へのはっきりとした記憶の一部が疼いた。

結局のところ、幸島にできる事といえば、家で警察からの報告を待つことくらいだった。警察、山田刑事に協力を申し出たものの、首をふって断られた。刑事いわく、身内の捜査にはあまり深く関わらせたくないとのことだった。
「なんだよ、身内って……」
呟きに答える者もいない。山崎はいないのだ。
「……何をしてるんだ俺は……」
ソファに深く座ると、幸島は胸の底でたきつくような思いを消すために目を瞑った。


前話から間の空いた更新ですみません。次話はせめて今月内には出す予定です。













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