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The End of The World 作者:コロタン
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第74話 四国

  俺は田尻さんと酒井さんに励まされ、涙が収まるまで彼等と話をした。
  彼等らは俺が部屋を出る時、最後に一つ俺の願いを聞いてくれた。
  それは、夏帆とその両親、それと慶次の遺体の回収だ。
  場所が分かっているなら可能だと、快く了承してくれた。

  「いつまでもこのままじゃ悠介達にどやされるよな・・・」

  俺は美希達の待つ部屋の前で、自分の頬を叩き、気合いを入れて部屋に入った。

  「ただいま。時間が掛かってしまって申し訳ない」

  俺が部屋に戻ると、皆んなが安堵の表情を浮かべた。

  「誠治さん、おかえりなさい・・・どうでしたか?」

  「なんか、艦長さんも入って来たよ・・・。しかも、艦長の田尻さんと副長の酒井さんは、俺の父方の叔父の知り合いだったらしい・・・」

  俺は、心配そうに聞いて来た美希に肩を落として答えた。

  「誠治さんの叔父さんも自衛隊だったんですか!?」

  「あぁ、言ってなかったな・・・。なんか、言い出せなくてな」

  「いや、構わないよ・・・。私が誠治さんと出会った時に、自衛隊を責めてしまったしな。言い辛いのも当然だろう。酒井さんも気にしていたよ・・・」

  渚は申し訳なさそうに言った。

  「それで、何を聞かれたんですか?」

  「今までの事だよ・・・。それと、俺が人を殺した事も話した・・・」

  美希に聞かれて答えると、皆んなが言葉に詰まった。

  「話したけど、聞かなかった事にするって言われたよ・・・。罪の償い方は色々あるからって言ってくれた・・・」

  「そうか・・・。誠治さんは自分に厳しすぎるからな・・・。黙っていれば良いものを自分から言うなんて馬鹿なのか?」

  渚が呆れている。

  「馬鹿は無いだろう・・・。実際、人を殺した事は事実なんだ。悠介や慶次との約束はあるが、それとこれとは話が別だ・・・。だけど、結果として約束を守れそうだ・・・良かったよ」

  渚は俺の言葉に肩を落として笑っている。
  美希達も安堵していた。

  「おじちゃんは・・・いなくならないでね!」

  千枝が涙目で訴えて来た。
  この子にも心配を掛けてしまった・・・。
  悠介が死に、俺まで居なくなったら美希と千枝も壊れるかもしれない・・・。
  俺は、田尻さんの言葉を思い出し反省した。

  「あぁ、おじちゃんは何処にも行かない!千枝ちゃんと一緒に居るよ!」

  俺は千枝を抱き寄せた。
  千枝は、力一杯俺に抱き着いた。
  2度と離れないと言っているようだ・・・。

  「それと今回の騒動は、大規模なテロ行為と断定されていると言ってた・・・犯行声明は出ていないらしい。それと、どうやら被害にあったのは日本だけでは無いらしいよ・・・。世界中の首都圏で同じ様な事になってると言っていた・・・。今の所状況に目処が立っているのは、アメリカ、ロシア、EUの数カ国、アジアでは日本だけだそうだ。陸続きの国は軒並み奴等に押されているらしいよ」

  俺は千枝を抱き締めながら、田尻さん達から聞いた情報を皆んなに伝えた。
  皆んなは絶句している。

        コン  コン  コン

  「失礼するよ」

  俺達が沈黙していると、部屋の扉がノックされ、酒井さんが入って来た。

  「誠治君、悠介君の遺体の洗浄が終わったよ。良かったら、会いに行ってあげてくれ」

  「酒井さん、ありがとう・・・。何から何まで、本当に感謝してもしきれません」

  酒井さんは、気にするなと小さく手を振り、部屋を出て行った。

  「皆んな、悠介の所に行った後で、艦長の田尻さんと酒井さんにお礼を言いに行こう。夏帆と彼女の両親、それと慶次の遺体の回収を引き受けてくれたんだ・・・」

  「本当か!?良かった・・・。こんなに嬉しい事はない・・・!!」

  渚達は、慶次の遺体を回収して貰えると聞いて、涙を流して喜んだ。
  俺は渚達が落ち着くのを待ち、悠介の眠る場所に向かった。




  「悠介・・・。綺麗にして貰えて良かったな・・・。自衛隊の人達のおかげで、なんとかお前を弔ってやれそうだよ」

  俺は、眠る様に死んでいる悠介に話しかけた。

  「お前のおかげで美希と千枝は助かった・・・。やっぱり、お前は家族思いの凄い兄貴だったよ。お前の火葬が済んだら、一緒に俺の実家に帰ろうな・・・」

  俺は悲しさを押し殺し、笑顔で悠介に話しかけた。
  千枝はまだ泣いているが、他の皆んなは俺と同じ様に笑顔で見つめている。
  俺達は、艦が四国に着くまでの時間を悠介と一緒に過ごした。
  短い間だったが、沢山の思い出があった・・・。
  それを思い出し、語りながら、悠介と一緒に過ごした。




  「田尻さん、酒井さん、本当にありがとうございました。夏帆や慶次達の遺体の件も、何とお礼を言ったら良いか・・・」

  俺達は四国に着き、見送りに来てくれた田尻や酒井達にお礼を言った。

  「いや、気にしないでくれ!我々に出来る事をするだけだ!悠介君の火葬は、明日行なわれるそうだ。それまでは自衛隊の施設で休んでくれ!」

  酒井さんは、笑顔で言って来た。
  この人には、本当に世話になった。
  無事に九州に着いたら、彼に手紙でも書こうと思う。

  「では、遺体を回収が出来たら連絡するよ。君達も元気でな!」

  彼等は、最後にそう言うと、俺達に敬礼をして艦に戻って行った。




  「さて、悠介の遺体は預けたけど、自衛隊の施設は何処だ?」

  「聞いてみましょうか?」

  俺達は周りを見渡し、自衛官を探した。
  すると、俺は港の入り口に立っていた男と目が合った。

  「おい!あんた!!フルフェイスの兄ちゃんじゃないか!?」

  その男は、俺を見るなり叫びながら走って来た。
  俺はその男に見覚えがある。
  俺にワンボックス車と物資を譲ってくれた男だ。

  「あんたは・・・。生きてたのか!?」

  「あぁ、あんたの言った通りに船を探して逃げたんだよ!こっちに着いてから、一言礼を言いたくて、あんたが来てないか探してたんだが、まだみたいだったから毎日港に様子を見に来てたんだ!名前も聞かずに別れちまって、どうやって探すか悩んでたんだ!遅れちまったが、俺は瀧本(たきもと) 元気(げんき)だ!あんたのおかげで助かった、ありがとう!!」

  「俺は井沢(いざわ) 誠治(せいじ)だ!こっちこそ安心したよ!あんたには改めて礼をしたかったんだ!」

  俺も男に気付き、走り寄り、握手を交わして自己紹介をした。
  名前も聞かずに別れた事を後悔していたが、先に四国に着き、わざわざ俺を待っていてくれた事を嬉しく思った。

  「誠治さん・・・お知り合いの方ですか?」

  美希が怪訝そうな顔で聞いて来た。
  この男も、俺に負けず劣らず強面だ。
  美希達が訝しむのも仕方がない。

  「美希!千枝ちゃん!この人にお礼を言ってくれ!この人は、君達が使ってたワンボックス車と物資を譲ってくれた人だ!!」

  俺がそう言うと、美希は慌てて頭を下げた。
  渚達も美希に倣って頭を下げた。
  千枝は不思議そうにしている。

  「そうか・・・。あんたは守りきったんだな・・・。流石だよ!」

  元気は美希達を見て、呟いた。
  俺は言葉に詰まった。

  「どうしたんだ?」

  元気は俺の様子に気付き、聞いて来た。

  「あの子達の兄貴は死んだよ・・・。妹達を庇って、笑って死んでいった・・・」

  「そうか・・・悪い事聞いちまったな・・・」

  元気は項垂れる美希と千枝を見て申し訳なさそうに言った。
  そして、元気は千枝の前にしゃがみ、頭を撫で、美希と千枝を交互に見た。

  「良いか、嬢ちゃん達・・・。今は悲しいかも知れねぇが、いつかは笑わなくちゃいけねぇよ!嬢ちゃん達の兄貴は笑ってたんだろ?なら、満足してたって事だ!なら、いつまでも嬢ちゃん達が悲しい顔をしてたら、兄貴が安心して眠れねぇぞ?だから、いつかは笑ってやれ!!」

  元気は美希達にそう言うと、もう一度千枝の頭を撫でた。
  美希は黙って聞いていたが、力強く頷いた。

  「千枝ちゃんだったか?良かったら、おじちゃんに抱っこさせてくれねぇか?」

  元気は優しく千枝に話しかけた。
  千枝は少し迷ったが、遠慮がちに腕を広げた。

  「ありがとうな!やっぱり、子供は良いもんだ・・・!誠治さん、あんたはしっかりと守ったんだ!それは誇って良い!だから、あんたもそんな顔すんな!」

  元気は嬉しそうに千枝を抱き上げた。
  勢い良く抱き上げられた千枝は、驚いた顔をしたが、嬉しそうに笑った。

  「あぁ、ありがとうな・・・!それと、俺の事は誠治で良いよ。あんたの方が年上だろ?」

  「なら、俺も元気って呼び捨てにしてくれ!」

  俺と元気は互いに笑顔で見つめ合った。



  「誠治、あんたらこれからどうするんだ?何なら、俺の所にくるか?昨日何人か北海道に行って部屋が空いてるから、6人くらい大丈夫だぞ?」

  「そうだな・・・。自衛隊の施設を紹介されたんだが、場所が分からないんだ・・・。あんたの所に厄介になるにしても、一言言っておきたい。場所わかるか?明日は悠介の火葬も頼んであるから、あまり遠いと無理なんだ・・・」

  「それなら心配ねぇよ!俺達の住んでる所は自衛隊の建てた仮設住宅だ!あんたが紹介されたのも、其処だと思うぞ!なんなら、俺が確認して伝えとくから、来いよ!!」

  俺は元気の言葉に甘え、一緒に行く事にした。
  皆んなも異論は無いようだ。
  皆んなは最初こそ元気を警戒していたが、俺と彼の会話を聞いて、彼が見た目と違い良い奴だと分かったらしく、彼の所に厄介になる事を認めてくれた。
  
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