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The End of The World 作者:コロタン
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第71話 兄として、弟として・・・

  「まだか!?悠介達は何をしてるんだ!!?」

  俺は、港の入り口で、押し寄せる奴等を1人で抑えている。
  すでに何体倒したかすら覚えていない。
  隆二には、悠介達が戻り次第クラクションを鳴らせと言っているが、いまだに鳴ってはいない。
  俺は、奴等の頭を潰しては蹴り飛ばすという作業を繰り返していた。
  蹴り飛ばす事で、後続の奴等を牽制出来るからだ。

  プーーーッ!  プップーーー!!

  俺が、群がる奴等にうんざりしていると、クラクションの音が鳴り響いた。
  だが、距離がかなり近い。
  港の入り口から船までは500m程ある。
  俺が不審に思い、音のした方を見ると、SUVが走って来て、俺の近くに停まった。

  「誠治さん!遅れてすまない!早く乗ってくれ!!」

  SUVで現れたのは、渚だった。
  俺は奴等を振り切り、助手席に飛び乗る。

  「助かった!正直諦めかけてたよ!」

  「すまなかった!車が動かなくなって、走って来たんだ!」

  「皆んなは無事か!?」

  「あぁ、全員無事だ!誠治さんが入り口で戦っていてくれたから、無事に船まで辿り着けた!」

  俺は渚の言葉に安堵した。
  ネックレスが千切れてからの不安は気のせいだったと思い、安心した。

  「ん?あいつら何をしてるんだ!?」

  俺は船の方を見て叫んだ。




  「お前ら、何をしてるんだ!!早く船に乗れ!!」

  俺は、渚と船の場所に着き、車から降りて怒鳴った。

  「誠治さん!兄さんを説得してください!!」

  俺を見た美希が涙目で訴えて来た。

  「悠介、どうした!?早く行こう!!」

  俺は悠介に船に乗るよう促したが、彼は項垂れたまま動こうとしない・・・。

  「悠介!!」

  「誠治さん、すいません・・・。俺は行けません・・・」

  俺は再度怒鳴ったが、悠介は震える声で呟いた・・・。

  「悠介・・・まさかお前!?」

  俺が問い掛けると、悠介は袖をめくり、左腕を出した・・・。
  俺達は、悠介の腕を見て絶句した・・・。

  「俺、噛まれちゃいました・・・。だから、行けません・・・」

  悠介は項垂れたまま呟いた。

  「兄さん・・・その傷、まさかさっき私を庇った時の!?」

  「あぁ・・・。黙っててごめんな・・・」

  俺達は動けなくなった・・・。

  「誠治さん、俺が奴等を引き付けますから、今の内に逃げてください!」

  悠介は涙を浮かべて叫んだ。

  「悠介・・・駄目だよ・・・。俺にはお前を見捨てられない・・・」

  俺は混乱しながら悠介に言った。

  「何言ってるんですか!自分の時には置いて行けって言ったくせに、なんで俺を置いて行かないんだよ!?」

  悠介は俺を責める。
  俺はすぐに言葉を出せなかった。

  「お前が・・・俺にとって家族だからだよ!可愛い弟だからだよ!俺の兄貴になる男だからだよ!!だから・・・頼む!俺に、お前を見捨てさせないでくれ!!」

  俺は悠介に涙を流して叫んだ・・・。

  「それは・・・命令ですか?」

  悠介は力なく尋ねる。

  「違う!家族としての、俺の最後の頼みだ・・・!」

  「誠治さん・・・そんなの卑怯ですよ・・・。家族の頼みなんて、断れなくなるじゃないですか・・・」

  悠介は項垂れたまま呟き、なんとか船に乗ってくれた。




  船を出してすぐ、俺達の居た場所に奴等が殺到した。
  間一髪だった・・・。

  「悠介・・・」

  俺は彼の名を呼んだ。
  しかし、言葉を続ける事が出来なかった・・・。
  皆んなも黙っている。

  「誠治さん・・・。俺、満足してます・・・。一緒に誠治さんの家に行けないのは悔しいけど、最後に妹達を守れたんですよ・・・誠治さんに頼らず、自分の力で守れたんです・・・。だから、満足してます」

  悠介は笑っている・・・。
  自分の死が近付いているにも関わらず、笑顔で喋っている。

  「誠治さん・・・頼みがあります・・・」

  悠介が俺を見て言ってきた・・・。

  「あぁ・・・何でも言ってくれ!俺に出来る事なら、何でもやってやる!!」

  俺は悠介の手を握った。

  「美希を幸せにしてやってください・・・!誠治さんは、幸せに出来るか判らないって言ってましたけど、貴方なら出来ます。俺はそう思います・・・」

  「美希を幸せにするなら、お前にだって出来るだろう!?」

  俺は悠介に問い掛けた。

  「誠治さん、違うんですよ・・・。確かに、俺も美希を幸せに出来るかもしれない・・・。でも、それじゃあ今迄と変わらないんですよ・・・。俺じゃ駄目なんです・・・美希を、1人の女として幸せに出来るのは、誠治さんだけなんですよ・・・。だから、お願いします!美希を幸せにしてやってください・・・!」

  悠介は瞳に涙を浮かべ、それでも笑顔で言って来た。

  「家族として、弟として・・・そして、貴方の兄になる男としてのお願いです・・・。聞いてくれますか?」

  悠介は笑っている・・・。

  「卑怯なお願いだな・・・」

  「お互い様ですよ・・・!」

  俺は涙を流しながら苦笑した。

  「美希・・・誠治さんを宜しくな!この人見た目強面なのに、泣き虫だからさ・・・。お前が、俺のぶんまで支えてやってくれ・・・!」

  「兄さん・・・!何で私の為に・・・!」

  美希は涙を流しながら悠介に抱きついた。

  「決まってるじゃないか・・・お前が、俺の妹だからだよ!美希も千枝も、俺の可愛い妹だ!だから、守りたかったんだ・・・。お前達の事大好きだからさ!」

  悠介は、笑いながら美希の頭を撫でている。

  「千枝も、お姉ちゃんと誠治さんの言う事を聞いて、元気に笑っててくれよ?兄ちゃんは、お前の笑顔が大好きだからさ!」

  悠介は、千枝に笑いながら語りかけた。

  「お兄ちゃん・・・死んじゃやだよ!千枝達を置いていかないで・・・!」

  千枝は美希と共に、泣きながら悠介に抱きついた。
  悠介は困ったように笑っている。

  「ごめんな・・・。兄ちゃんもそうしたいけどさ、無理なんだ・・・。だから、これからは誠治さんに甘えてやってくれよ!誠治さんもお前を大好きだから、優しくしてくれるよ!」

  千枝の頭を撫で、俺の方を見ている。
  俺は黙って頷いた・・・。

  「すみません・・・そろそろかもしれません・・・。さっきから、身体に力が入らないんですよ・・・。誠治さん、もし俺が死んだら・・・後始末お願い出来ますか・・・?」

  「あぁ・・・任せてくれ・・・」

  俺は悠介をまっすぐ見つめて頷いた。

  「渚さん達も、今迄ありがとうございました・・・。凄く楽しかったですよ・・・!隆二も父親になるんだから、しっかりと由紀子さんを守れよ!」

  渚達も、泣きながら頷いている・・・。

  「あぁ・・・楽しかったなぁ・・・」

  悠介は最後に一言だけ呟き、動かなくなった・・・。

  「美希、千枝ちゃん・・・。俺に、悠介との約束を果たさせてくれ・・・」

  「誠治さん・・・私がやろうか・・・?」

  「いや・・・俺にやらせてくれ・・・。悠介との約束だからな・・・」

  渚が俺の代わりにと言ってくれたが、俺は断った・・・。
  俺は悠介の遺体から美希達を引き離し、レッグポーチから柳刃包丁を抜いた。
  夏帆を刺して以来、今迄使わなかった物だ。

  「悠介・・・今迄ありがとうな、楽しかったよ・・・。さよなら・・・」

  俺は悠介の遺体に話しかけ、彼の下顎から頭頂部にかけて包丁を突き刺した。
  夏帆の時と同じやり方で悠介を刺した・・・。
  俺は包丁を引き抜き、悠介の遺体を抱き締めて泣いた・・・。




  俺は悠介が死んだ後、項垂れて押し黙っていた・・・。
  美希と千枝は泣き続けた。
  隆二は俺の代わりに舵を取り、渚と由紀子は周囲を見回している。
  悠介と付き合いの長かった俺と、妹である美希と千枝を気遣っての事だ。
  悠介の遺体の処理をしてからすでに2時間は経っている。
  彼には頭から布を被せている。
  死んでしまった彼を見るのが辛かったからだ。

  「後少しだったのに・・・俺は毎回何してんだろうな・・・」

  俺は自嘲気味に呟いた。
  俺は自分が許せなかった。
  あの時、皆と一緒に行っていれば、悠介が事故を起こしても彼等を乗せて逃げられたかもしれない。
  そう思うと、自分が許せなかった。

  「誠治さんは悪くありません・・・私が油断したから・・・!私がもっと早く奴等に気付いてたら、兄さんが死ぬ事は無かったんです!!」

  美希は涙を流しながら叫んだ。

  「美希、それは違うよ・・・悠介は、君と千枝ちゃんに生きて欲しかったから助けたんだ。確かに君が奴等に気付いていたら、違う結果になったかもしれない・・・でも、仮にそうだったとしても、悠介は絶対に君達を守っていただろう・・・。奴等の集団に出くわした時・・・あの時俺も一緒に行ってたら、君達を乗せて助かっていたかもしれないんだよ・・・だから悠介を死なせたのは、結局は俺の判断ミスだよ・・・」

  俺が美希にそう言うと、再び沈黙が流れた。

  「誠治さん!向こうに何か見えます!!」

  沈黙を破り、舵を取っていた隆二が叫んだ。
  俺は立ち上がって隆二の隣に行き、隆二の指差す方向を双眼鏡で見た。

  「あれは・・・船だな・・・。しかも、かなり大きいぞ・・・!」

  俺の言葉に渚も近くにやってくる。

  「どんな船だ?」

  「あれは・・・海上自衛隊の護衛艦だ!この前就航したばかりの最新鋭のヘリコプター搭載護衛艦だ!!」

  その艦は俺達の進路上をこちらに向かって進んでくる。

  「隆二、船を止めてくれ・・・こちらに来るみたいだ」

  「わかりました・・・」

  隆二は俺の指示に従って船を止めた。
  しばらくして、護衛艦から一隻の数人の隊員が乗った特別機動船が近づいてきた。

  「君達は生き残りか!?我々は海上自衛隊だ!この船に噛まれた者はいるか!?」

  1人の隊員が俺達に話し掛けてきた。

  「あぁ、2時間ほど前に港から逃げてきた。噛まれた仲間は先程死んで、俺が処理した・・・」

  「そうか・・・すまない・・・。我々は君達の船を見つけ、確認の為に来た・・・。我々に、君達を救助させてくれないか?君達は我々自衛隊を恨んでいるかもしれない・・・だが、我々は君達を助けたい・・・」

  その隊員は俺達に申し訳無さそうに言ってきた。

  「ありがとう・・・。彼も一緒に良いか?」

  俺は悠介の遺体の方を見て聞いた。

  「是非そうさせてくれ・・・だが、洗浄などをしないといけないから、遺体はこちらが責任を持って預からせていただく・・・それでも良いかな?」

  「あぁ、助かるよ・・・いつ迄もこのままだと、彼に申し訳無いからな・・・。皆んなも良いかな?」

  俺が振り返って聞くと、皆は無言で頷いた。

  「では、我々について来てくれ」

  俺達は隊員の指示に従って船を動かした。




  俺達は彼等の後をついて行き、護衛艦の近くまで移動した。
  近くで見るとあまりの大きさに驚いた。

  「今から引き揚げる!指示に従ってくれ!」

  俺達は隊員の指示に従って護衛艦へと移った。
  甲板には多くの隊員が集まり、俺達を迎えてくれた。
  悠介の遺体を引き揚げ、隊員達が黙祷をしてくれた時は思わず涙がでた。

  「部屋を用意してあります。案内しますので、こちらへどうぞ・・・。良かったら、シャワーを使われますか?あと、服も洗っておきますが・・・」

  話し掛けてきた隊員が、俺の姿を見て狼狽しながら聞いてきた。
  俺は自分の姿を見て隊員の言葉の意味を理解した。
  俺は血塗れだった。
  全身から血の匂いがしている。

  「助かる・・・では、皆んなを先に休ませてやってくれ・・・」

  俺はその隊員に皆を頼み、別の隊員にシャワー室へと案内して貰った。

  「着替えはこちらを使ってください。サイズが合うか分かりませんが・・・。終わりましたら、声を掛けてください。皆さんのいらっしゃる部屋へ案内します」

  「ありがとう。助かるよ・・・」

  俺は一言礼を言ってシャワーを浴び、貸して貰った服を着た。
  少し丈が短い気がするが、贅沢は言っていられない。

  「もう宜しかったのですか?」

  隊員が俺に気付いて聞いてきたが、俺が頷くと皆の待つ部屋へと案内してくれた。

  「こちらです。後ほど上の者が挨拶に伺います」

  隊員はそう言うと去って行った。

  「ただいま・・・。後から艦長か誰かが挨拶に来るらしいよ」

  俺がそう言って部屋に入ると、皆は安堵の表情を浮かべた。

  「あぁ、誠治さんおかえり・・・さっぱりしたか?」

  「あぁ、何とかね・・・心配させてすまなかった」

  俺がそう言うと、渚は肩を竦めて頷いた。
  部屋の空気は重苦しい。
  美希と千枝はまだ泣いている。
  俺は彼女達に近づき、抱き寄せた。

  「後で悠介の所に行ってやろうな・・・」

  彼女達は泣きながら、無言で頷いた。






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