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The End of The World 作者:コロタン
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第52話 雨

  俺は、隆二が少し落ち着くのを待って、皆んなが待っているであろう交番に戻った。
  何事も無ければ、まだここに居るはずだ。
  車庫に車があるのを確認し、自分も車を入れた。

  「なんとか帰り着きはしたが・・・」

  俺は一言だけ呟き、ハンドルに頭を預けて項垂れた・・・。
  隆二も何も言わずに項垂れている。

  「誠治さん、お疲れ様です!どうでした?無線機は見つかりましたか?」

  見張りをしていて、俺達に気付いた悠介が走り寄って来た。

  「どうしたんですか・・・?なんか有りましたか・・・?」

  悠介は、俺の様子を見て訝しむ・・・。

  「悠介・・・。帰ってきて早々悪いが、大事な話しがある・・・。急ぎ皆んなを集めてくれ・・・」

  「わ、わかりました!」

  悠介は返事をして、交番の中に駆け込んだ。

  「隆二・・・。辛いだろうが、皆んなに説明しよう・・・」

  「はい・・・」

  隆二は力なく頷き車から降りた。
  無線機の入ったバックパックを後部座席から取り出した俺は、大きく深呼吸をして、皆んなの元へと向かった。





  俺と隆二が交番の休憩室に入ると、すでに皆んなが集まっていた。

  「誠治さん、帰って来て早々大事な話しとは何だ?・・・ん?慶次が見当たらないが、まだ外に居るのか?」

  渚が、慶次の不在に首を傾げる・・・。
  隆二はそれを聞いて身体を強張らせた。

  「皆んな・・・。急に呼び集めてすまない・・・。大事な話しと言うのは、慶次の事だ・・・。彼は・・・警察署で死んだ・・・」

  皆が俺の言葉に絶句する・・・。
  時が止まっているかの様な、長い沈黙がその場を支配している。

  「ちょっと待ってくれ・・・。誠治さん、慶次が死んだなんで嘘だよな・・・?いつもの冗談なんだろう?あいつが死ぬなんて、そんな事あるはずが・・・!」

  最初に沈黙を破ったのは渚だった・・・。
  俺と隆二は項垂れて何も答える事がなかった・・・。

  「本当・・・なのか・・・?」

  「あぁ・・・。慶次は自ら囮になり、俺に隆二や後の事を託し・・・。俺達がその場を離れてしばらくして・・・自決した・・・」

  俺の言葉が真実である事を知り、由紀子が泣き崩れた。
  美希は項垂れて涙を流し、悠介は拳を握り締め唇を噛んでいる。
  千枝は、まだ内容を理解していない様だ。

  「井沢 誠治!貴様が着いていながら、何故そんな事になった!何故慶次を止めなかった!?何故あいつが囮をしなければならなかった!?何故だ・・・!!」

  渚は、俺の胸ぐらに掴み掛かり、怒りの籠もった目で睨み付けてくる・・・。
  すると、俺の胸ぐらを掴む彼女の手が、何者かによって振り払われた・・・。
  隆二だった。

  「渚さん・・・誠治さんを放してくれ・・・。兄貴が死んだのは・・・全部俺のせいなんだ・・・!誠治さんと兄貴の制止を無視して・・・俺が勝手に行動したから・・・!!」

  隆二はそこまで言うと、大粒の涙を流し、その場に泣き崩れた・・・。
  渚は、隆二に振り払われた手を、もう片方の手でさすりながら呆然としている・・・。

  「隆二、後は俺が説明するから、お前は少し休んでくれ・・・。由紀子さん、すまないが隆二を仮眠室で休ませてやってくれないか?こいつに着いていてくれると助かる・・・」

  俺に頼まれた由紀子は、涙を拭って頷き、隆二を支えながら休憩室を出て行った。

  「渚さん、すまない・・・。後は俺が説明させてもらうよ・・・」

  「あぁ・・・。頼む・・・」

  渚は力なく頷き、椅子に腰掛けた。
  俺は、渚の様子を伺い、説明を始めた。

  「俺達は、警察署の1階にある備品室で、6個の無線機を何事も無く入手する事が出来た・・・。そしたら、人数分に後1個足りない事を気にした隆二が、無線機を探すついでに、証拠品保管室も探したいと提案したんだ・・・。それを慶次が了承し、1階の探索を打ち切って、俺達は2階に上がった・・・」

  「・・・あんたは賛成はしなかったのか?」

  渚が聞いてくる。

  「俺は反対した・・・。1階に奴等が少なかったとは言え、全てを見て回った訳では無かったし、他が安全かは判らなかったからだ・・・」

  「そうか・・・あんたなら、そう判断するだろうな・・・」

  渚は俺の言葉が嘘では無いと信じてくれた。

  「それから、俺達は2階に上がった・・・。通路に奴等が少ないのを見た隆二が、俺と慶次の制止を聞かずに行こうとしたんだ・・・それを慶次が怒鳴ってしまった・・・。そしたら、通路に面した部屋の至るところから、窓を突き破って奴等が出てきた・・・」

  俺の話に、悠介と美希が息を飲む。

  「俺と慶次は隆二を助けた後、通路を突っ切り、奥の階段から下に降りようとしたが、階段の下にも奴等が居た・・・。俺が奴等を引き付けてる間に、2人を3階に上がらせ、反対の階段から逃がそうとしたんだ・・・。そしたら、隆二の叫び声が聞こえた・・・。俺が駆け付けた時には、慶次は奴等に襲われて、すでに数カ所を噛まれていたんだ・・・。襲われそうになった隆二を庇ったらしい・・・」

  渚は目を伏せて黙って聞いている・・・。

  「俺は慶次に肩を貸し、隆二を立たせて通路を走った・・・だが、途中で慶次が立ち止まり、自分が囮になるから逃げろと言った・・・自分はもう助からないからと言ったんだ・・・。俺と隆二は、慶次を説得して連れて帰ろうとしたけど、渚さんに奴等みたいになった自分を見せたく無いと言って拒んだんだ・・・。慶次は俺に、隆二を生きて帰らせてくれ・・・渚さん達を守ってくれって頼んできたよ・・・。慶次の意思が硬いと解った俺は、彼に拳銃を渡して、食い下がる隆二を引きずってその場を後にした・・・しばらくして、銃声が響いたよ・・・。たぶん、その時慶次は死んだ・・・。彼は別れの際笑っていたよ・・・。以上が警察署で起こった事だ・・・俺が隆二を引き止められなかった力不足と、一緒に3階に向かわなかった判断ミスだ・・・」

  誰も口を開かない・・・。
  静まり返った室内には、状況を理解出来た千枝のすすり泣く声だけが響く・・・。

  「すまない・・・少し頭を冷やしてくる・・・」

  渚は、重い口を開き、それだけ呟いて部屋を後にした。

  「誠治さん、お疲れ様でした・・・。渚さんも、きっと解ってくれますよ・・・」

  「そうだと良いけどな・・・。悠介、少しだけ休ませてくれ・・・。俺も未だに受け入れられていないんだ・・・。少し考えたい・・・」

  俺は悠介に頼み、椅子の背もたれに身体を預け、天井を仰向き、目の上に濡らしたタオルを乗せて休んだ。





  どれくらいの時間が経っただろうか・・・?
  俺は乗せているタオルをそのままに、ただ慶次について考えていた。
  すると、部屋の扉が開く音が聞こえ、そちらを見た・・・渚が立っている。
  彼女の目は赤く、頬は濡れていて、前髪と服の胸元が湿っている・・・。

  「誠治さん・・・先程はすまなかった・・・。取り乱していたとは言え、隆二を守ってくれた貴方に酷いことを・・・」

  渚は項垂れて謝った。

  「雨でも降ったか・・・?」

  俺が聞くと、渚は気まずそうな顔をしている・・・。

  「あぁ・・・土砂降りだったよ・・・」

  「そうか・・・。いつ迄降り続くか判らない・・・雨が止むまでしばらくここに滞在しよう・・・。渚さんも、ゆっくりと休んでくれ。見張りはしばらく俺と悠介でやるよ・・・」

  「すまない・・・助かるよ・・・」

  「気にしなくて良い・・・。慶次とも約束したんだ・・・君達を守るって・・・。渚さん・・・良かったら、隆二を見に行ってあげてくれ・・・。あいつは、慶次の事で自分を責めている・・・由紀子さんと一緒にあいつを支えてやってくれないか?」

  「あぁ、そうしよう・・・。誠治さん、これからもよろしく頼む・・・」

  渚は言葉を残し、隆二の元に向かった・・・。


        コン  コン  コン


  休憩室の扉がノックされる。

  「誠治さん・・・少し良いですか?」

  由紀子の声だ。

  「あぁ、大丈夫だよ・・・。隆二の様子はどうだ?」

  俺は、由紀子を招き入れて隆二の様子を聞いた。

  「少し落ち着きました・・・。今は、渚さんと話しています・・・。隆二にとって、渚さんはお姉さんみたいな人ですから・・・邪魔をしたらいけないって思ったので、2人だけにして来ました・・・」

  「そうか・・・君も辛いのに、気を遣わせてすまなかった・・・。慶次の件は、俺の力不足と判断ミスだ・・・申し訳無い・・・」

  俺は由紀子に頭を下げた・・・。
  彼等に許されるとは思っていないが、とにかく謝りたかった・・・。

  「話は隆二から聞きました・・・。誠治さんは何も悪くない・・・自分のせいだって言ってました・・・!だから、謝らないでください・・・むしろ、私は感謝してるんです・・・。隆二を・・・私の恋人を救ってくれて、ありがとうございました・・・!」

  由紀子は、涙を流して頭を下げた。

  「いや、良いんだ・・・。俺は君達の事を家族だと思っているんだ・・・。家族を守るのは当然だろう?それに、慶次とも約束をしたんだ・・・。俺は、慶次の分まで君達を守る・・・。だから、今はゆっくりと休んでくれ・・・」

  俺は由紀子に言い、隆二の元に戻らせた・・・。

  皆んなは慶次の事を思い、泣いている・・・。
  だが、俺は皆んなの元に戻ってからは1度も涙を流していない。
  彼の死が悲しくない訳では無い・・・。
  ただ、俺まで潰れてしまうと、慶次との約束を果たせなくなると思ったからだ・・・。

  (慶次・・・。お前の事は絶対に忘れない・・・お前の遺志は、俺が継ぐ・・・)

  俺は、カーテンの隙間から見える、夜の帳が降り始めた空を見上げ、彼に誓った・・・。


  
  
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