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The End of The World 作者:コロタン
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第42話 幸せの定義

  俺達は詰所の中に入り、皆んなに昨日別れた後に見た街の状況を話した。

  「中心部は悲惨な事になっていたよ・・・。大型商業施設は陥落して、街中に奴等が溢れてた・・・。俺達は引き返す事が出来ずに、中心部を抜けた先にあった、倉庫街の一画の2階に見つけた警備員の待機室で一夜を過ごし、今朝住宅地を抜けて、中心部を迂回しながら農道を抜けて帰って来たんだ・・・」

  皆んなは、俺の話を聞いて俯き、沈黙していた・・・。

  「本当に、よくそんな状況で無事に帰って来れたものだ・・・」

  「あぁ・・・正直、運が良かったよ・・・」

  渚の言葉に、俺は頷いた。

  「大型商業施設が落ちたとなると、ここも安全ではなくなった・・・。奴等は次の獲物を探して彷徨っている・・・ここまで来るのも時間の問題だと思う・・・」

  「そうだな・・・早めに移動した方が良いだろう・・・」

  慶次が俯きながら呟く。

  「俺もそう思う・・・。あまり休めていない皆んなには悪いが、早めにここを離れよう。いつ奴等がここまで来るか解らない以上、早く次の街に移動した方が良い・・・」

  皆んなは、俺の意見に頷いた。

  「今から準備して、昼過ぎに出るとしたら、この街から3時間程の所に小さな町がある。今日はそこを目指そう・・・。この街から距離があるから、奴等を引き離せると思う・・・。あと、今回の事を踏まえ、無線機を調達したいと思うんだが、どうかな?」

  俺は皆んなに無線機の調達を提案した。
  今回は運良く行き違いはしなかったが、今後同じ様な事があった場合、無線機があればかなり助かる。
  車での移動中でも意思の疎通が出来ると言う利点もある。

  「確かに、無線機はあった方が良いだろう・・・。警察署に行ってパトカーの無線機と、携帯用の無線機を手に入れるのも良いかもしれないな。証拠品保管室で銃や弾が無いかも確認してみよう」

  渚はかなり乗り気の様だ。
  皆んなも頷いている。

  「そうと決まれば、早速だが渚さんと慶次さんは車の準備をしておいてくれ!隆二君と由紀子さんは物資を集めて、車にしまっておいてくれ!千枝ちゃんは隆二君達の手伝いをしてあげて欲しい!」

  俺は渚達に出発の準備をお願いした後、悠介の近くに行き、皆んなには聞こえないように小さな声で話しかけた。

  「悠介・・・少し話がある・・・。仮眠室に来てくれ・・・」

  俺は美希と頷きあい、悠介を連れて仮眠室に向かった。




  皆んなが忙しなく出発の準備をしている中、俺と美希と悠介は、仮眠室の真ん中で座っている・・・。

  (どう話を切り出したものか・・・)

  悠介はなかなか話し出さない俺を訝しげに見ている。
  美希も俺と同じで、どう話したら良いか迷っているようだ。

  「誠治さん、何の話しですか・・・?何か、良くない話ですか・・・?」

  悠介が痺れを切らし、聞いてきた。

  「良くない話では無いと思う・・・。お前としては賭けに勝ったと言うか何と言うか・・・」

  悠介は、俺の言葉に首を捻っている・・・。
  それもそうだ・・・俺だってこんな風に言われては理解出来ない。

  「あのな・・・美希の事なんだけど・・・。前に話したよな?考えておくって・・・」

  俺は、詰所に戻る途中、車の中で美希に相談した。
  悠介に何と言うか悩んだからだ・・・。
  その時、以前悠介が美希を頼むと言ってきた事も伝えた。

  「あぁ、その事ですか・・・。あれは、九州に着いてからって話でしたよね?」

  悠介は、隣に美希が居るのに大丈夫か?と言いたげな顔をしている。

  「その話なんだが・・・悠介・・・お前を兄さんと呼ばせてくれ!!」

  「嫌ですよ気持ち悪い・・・」

  悠介は心底嫌そうな顔をして即答した・・・。

  (酷いよ悠介・・・流石の俺も心が折れたよ・・・。せめて、ちょっとは考える素振りを見せてくれたって良いと思うんだ・・・。)

  美希は俺の後ろで、やれやれと首を振っている・・・。

  「ん?ちょっと待ってください・・・?俺を兄さんって・・・。まさか、誠治さん・・・!?」

  「あぁ・・・俺の敗けだよ・・・。よろしく頼む!」

  悠介は気付いてなかっただけだったようだ・・・。

  (良かった・・・俺は許された・・・!)

  「そうですか・・・」

  悠介はそう呟き、美希の方を見る。
  美希は顔を赤らめて、小さく頷いた。

  「良かったな、美希・・・。俺も嬉しいよ・・・」

  悠介は、瞳に涙を浮かべて美希を見つめている。
  本当に、妹思いの優しい兄だ。

  「誠治さん、美希の事・・・よろしくお願いします・・・。こいつは、今迄病気になった事を気にして、自分の事を後回しにして来ました・・・。だから、これからは少しでも自分の事を考えて欲しいんです!美希の事を幸せにしてやってください・・・!」

  悠介は、涙を流して俺に頼んで来た・・・。
  美希は悠介の言葉を聞き、自分の事を思う兄に感動して、涙を流した。

  「悠介・・・俺は、美希を幸せにする事が出来るかは解らない・・・。だが、美希が幸せだと思えるように、美希が幸せになるように、精一杯努力する!」

  俺は悠介に誓った・・・。

  幸せとは感情だ。
  俺は「する」、「しない」、「出来る」、「出来ない」と言う言い方は、行動を表す言葉だと思っている・・・。
  感情とは自分だけの物であり、幸せかどうか判断するのは、その人自身だ。
  相手を幸せにしたいと思って行った事が、逆に相手を不満にさせる事だってあるのだ・・・。
  俺は、幸せとは「なる」ものだと思う・・・。
  相手の「言葉」に、「行動」に、「思い」に、自分自身が幸福であると感じる・・・それが幸せと言うものだと思う。
  俺は、美希がそうなってくれるなら、どんな努力も厭わない・・・それが俺にとっての幸せだと思っている。

  「誠治さんと一緒なら、きっと美希は幸せになりますよ!だから、どうか美希をお願いします・・・!」

  悠介は、俺に笑ってそう言った。

  (愛する妹を、俺を信じて任せてくれた優しい兄の期待を裏切らないように頑張ろう・・・)

  俺は心からそう思った・・・。



  
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