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The End of The World 作者:コロタン
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第21話 実戦

  俺は今、客間に敷かれた布団の中で寝転んでいる。
  今は朝の5時半だ。
  起きてから既に15分は経っているが、布団から出られない・・・。
  今は11月に入ったばかりで、朝晩は肌寒くはなってきたが、まだ布団が恋しくなるほどではない。

  「気持ち良さそうに寝てるな・・・」

  千枝が俺を抱き枕替わりにして寝ている。

  (さて、どうするか・・・俺が起きたら、千枝を起こしてしまうよな・・・)

  俺が考えあぐねていると、居間の襖がゆっくりと開いた。

  「兄さん・・・千枝、誠治さんを抱き枕にしてるよ・・・気持ち良さそうに寝てるなぁ・・・」

  「おぉ、本当だ・・・誠治さん、めちゃくちゃ懐かれてるな・・・」

  美希と悠介の声が聞こえ、俺は千枝を起こさないように頭を少しだけ上げて美希を見た。

  「あっ・・・誠治さん、おはようございます・・・ごめんなさい、起こしちゃいましたか?」

  「いや、大丈夫だよ。 15分前に目が覚めたんだけど、この状況でさ・・・どうしよう・・・助けてくれるとありがたいんだけど・・・」

  申し訳なさそうに謝ってくる美希に、俺は助けを求めた。

  「まぁ、あと少しの我慢ですよ。 千枝とゆっくりしててください」

  美希はにこやかに言ってきた・・・。

  (まぁ良いか・・・千枝の寝顔に癒されとくとしますかね・・・)

  俺はそのまま千枝が起きるまで添い寝した。





  「誠治さん、今日はどうします?」

  悠介が朝食のパンをかじりながら俺に聞いてきた。
  今は7時すぎ、朝食を皆んなで食べている。

  千枝は6時半に目を覚まし、寝惚け眼で「おじちゃん、おはようございまふ・・・」と、あくびをしながら起きた。
  若干垂れ目気味の目を手でこする仕草は、幼さも相まってとても可愛かった。

  「そうだな、午前中は昨日の復習と、遠距離武器の扱い、あとは午後からは立ち回りと、実戦経験を積んで貰おうかと思ってる」

  俺は千枝の寝ぼけ顔を思い出しつつ悠介に答えた。

  「分かりました。 美希もそれで良いか?」

  「うん、私も大丈夫だと思う・・・でも、先に洗濯を済ませたいな・・・」

  悠介と美希は緊張しつつも了承してくれた。

  「じゃあ、洗濯をした後に裏庭に来てくれ」

  俺は美希にそう言い、席を立った。

  



  俺は朝食の後、裏庭で訓練の準備をしていた。
  昨日は近接用武器の使い方を教えたので、今日は遠距離武器を教えようと思っている。
  まぁ、俺自身、人に教えられるほどの腕前では無いが、知っておいて損は無い。 一緒に戦うなら、いずれは使う事もあるだろう。

  「すみません、ちょっと遅れました・・・」

  「いや、大丈夫だよ。 丁度準備が終わったところだ。」

  遅れて来た事を気にしている美希に俺は言った。
  悠介はすでに、矢をつがえていないクロスボウを興味津々な感じで手に持って見ている。

  「じゃあ、始めようか・・・」

  俺は2人にレクチャーを始めた。




  俺は、1時間程遠距離武器について語り、ひと通りの扱いをレクチャーした。
  2人は真面目に聞いてくれた。
  飛び道具は扱いに気を付けないと、仲間まで危険に晒す事もある。

  「以上だ。 何か質問はあるか?」

  ひと通り教えた後、2人に質問が無いか聞いてみた。

  「拳銃とかは音で奴等をおびき寄せるってのは解るんですが、誠治さんは、音の小さいクロスボウもあまり使わないんですよね? 何でですか?」

  悠介が疑問を口にする。

  「悠介、クロスボウを射つまでの手順を考えてみてくれ。 弦を引き、矢をつがえ、照準を合わせ、射つ。 これを自分に向かってくる相手に行った場合、どうする? 1体目は良いだろう・・・だが、2体目や3体目はどうする? さらに、構えて集中している最中に死角から奴等が来たら、対応が出来るか?」

  俺の言葉を聞き、想像して悠介が渋い顔をしている。

  「解ったか? だから、俺は遠距離武器を極力使わないようにしている」

  「わかりました・・・確かに考えてみたら危険ですね・・・」

  悠介は納得してくれた。

  「じゃあ、昼食を取った後、外で実戦をしよう・・・俺がフォローするけど、今日は1体か2体の所で練習しよう」

  俺が告げると、2人は緊張の面持ちで頷いた。





  俺達は昼食の後、ワンボックスカーに乗って外に出た。
  実戦訓練の為だ。
  悠介はすでに何度か戦っているが、美希は実質初めての実戦だ。
  かなり緊張している。 ガッチガチだ・・・。
  千枝は良く解ってないのか、外を眺めながら鼻歌を歌っている・・・その余裕を美希に分けて欲しい・・・。

  「美希ちゃん、あまり緊張し過ぎると危ないよ・・・急な出来事に対応出来なくなる。 俺がちゃんとフォローするから、あまり気負い過ぎないでね」

  俺は美希の緊張をほぐそうと話しかけたが、あまり効果は無いようだ。




  しばらく車を走らせ、一度路肩に車を停めた。

  「よし、先ずは俺が手本を見せるから、車の中から見ててくれ」

  俺は手頃な数の奴等を見つけ、車を停めて外に出た。
  奴等はまだこちらに気付いていない。
  俺は、まずは3体並んでいる奴等の真ん中の奴の頭をクロスボウで射った。
  そして、タイヤレバーを手に取り近付き、手前の奴の頭を叩き潰した。
  最後の1体が俺に気付き、ふらふらと歩いて来たが、危なげなく倒して終わらせた。

  「以上だ・・・何か質問は?」

  俺は車に戻り、2人に問いかけた。

  「以上だ・・・って言われても・・・やっぱり誠治さん慣れてますね・・・」

  美希が唖然としている。

  「誠治さん、聞きたいんですが、さっきクロスボウを射った時、何で真ん中の奴を狙ったんですか? 普通なら一番手前のを狙いませんか?」

  悠介が質問してきた。

  「一番手前の奴を狙うと、真ん中と最後の奴の距離が近いだろ? だが、真ん中を先に倒せば、奴等の間に距離が出来る・・・そしたら、手前の奴を近距離で倒しても、余裕があるんだ」

  俺がそう答えると、悠介が確かにと納得し頷いた。

  「じゃあ、次は悠介がやってくれ。 今日は練習だから、1体だけで良い」

  俺は車を運転しながら悠介に指示し、次の奴等を探した。

  悠介は見事な程にあっさりと倒した。
  やはり、すでに実戦経験があると、飲み込みも早い。

  「次は美希ちゃんだ・・・大丈夫か? 無理そうなら今日はやめても良いけど?」

  「・・・やります!」

  俺がそう言うと、美希は決心したように頷いて答えた。




  結果から言うと、美希は出来なかった・・・奴等を前にして、足がすくんでしまったのだ・・・。
  美希は今、車の後部座席で項垂れて唇を噛み締めている・・・。
  夏帆の実家に帰り着き、車をガレージに停めて外に出たが、美希は降りてこない・・・。
  悠介と千枝は心配そうに外で待っている。

  「悠介、千枝ちゃん、俺に任せて家に戻っててくれないか?」

  俺は2人に頼み、美希の隣に座った。

  「美希ちゃん・・・」

  俺は彼女に話しかけたが、返事は無い・・・。
  俺は彼女の隣に座り、彼女が話してくれるのを、ただ黙って待っていた。

  「私、馬鹿みたいですよね・・・」

  長い沈黙を破り、彼女が呟いた。

  「兄さんや千枝は、誠治さんのためにって色々悩んで、行動してるのに、私は口ばっかりで何も出来ませんでした・・・小学生の千枝ですら頑張ったのに・・・!」

  彼女は俯いている・・・ただ、彼女の細い脚には、大粒の涙が零れている・・・。

  「美希ちゃん、それは違うよ・・・人には誰にでも向き不向きがある・・・奴等を倒すっていうのは、美希ちゃんにはまだ難しかっただけだと思うよ・・・?」

  俺は泣いている美希に優しく話しかけた。

  「俺や悠介が、奴等を倒せるのは、覚悟があるだけじゃ無いんだ・・・切っ掛けがあったからこそ、奴等と戦える。 俺はそう思ってる・・・」

  「切っ掛け・・・ですか?」

  俺の言葉に、美希が顔を上げて問いかけてくる。

  「そう・・・俺の場合は、夏帆が襲われた時に、初めて奴等を殺した・・・結果、俺は夏帆を失った・・・そして、戦って生き残ると覚悟した。 悠介は君と千枝ちゃんを守るために奴等を殺した・・・結果、君と千枝ちゃんは助かった・・・そして、君達を守りぬくと覚悟した」

  そう、俺も悠介も過程は一緒なのだ・・・起こった出来事は違うが、切っ掛けがあり、それに対する結果と覚悟があったからこそ、今、奴等と戦える。

  「だから、美希ちゃんにも切っ掛けさえあれば、戦えるようになると思う・・・それが今日じゃ無かったってだけだよ・・・ただ願わくば、その切っ掛けが誰かの死ではない事を祈るよ・・・美希ちゃんには、俺みたいな思いはして欲しくないからね・・・」

  俺は、自嘲気味に笑いながら美希に語りかけた。

  「誠治さん・・・私、まだ今のままで良いんですか・・・? 兄さんや千枝みたいにはまだ出来ないですけど・・・それでも、此処に・・・誠治さんの隣にいても良いんですか・・・?」

  美希は泣きながら俺に問いかける。

  「むしろ、居てくれないと困るよ・・・俺にとって君達は、家族なんだから・・・出会ってまだ間もないけど、美希ちゃんは俺の大事な家族だ・・・だから、焦らなくて良いんだ。 俺はちゃんと待ってるから・・・」

  「ありがとうございます・・・私・・・頑張ります・・・!」

  美希は、俺の言葉を聞き、さらに泣いた。
  俺は、泣きじゃくる美希の頭を胸に抱き、泣き止むまで、ただひたすら頭を撫でてやった。



  
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