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完璧な ”人”
作者:結城陸空


 ――かつて”人”は”人”を創った。


 
 しかしそれは、人と呼ぶにはあまりにも人の姿からはかけ離れたものだった。ただ彼には自由に動かせる足と手。そして、人の全ての知識が詰まった脳を与えられた。
 100万分の1秒で円周率を1000億桁も計算できる高すぎる処理能力や、過去の人の歴史など世界中の図書館のありとあらゆる文献を網羅したデータ。そして、接触したり体験したりすることで、情報を更新する無限の成長を見せる人工知能。

 彼を創った人が彼に求めたのは、完璧な人を創ることだった。
 
 彼は驚くほどのスピードで人を創り上げた。人工細胞を利用して軟組織を作り、臓器や血管を作り上げた。人と同じタンパク質等の分子を使い血を作り、骨を作り、神経を作り、脳を作った。中を作り終わると今度は外を作り始めた。外も毛穴の1つ1つに至るまで全てを作り上げ、今度はそれらを組み合わせた。身体の身体機能が機能できるようにと脳から電気信号を送り、手や足を動かせるようにした。さらに繁殖も出来るようにした。

 怪我をすれば血も出るし、赤血球や血漿板が集まり、傷を塞ぐ。細胞が不具合を起こしてガンにもなるし、大怪我を負えば死ぬ。食事も取らなければいけないし、睡眠もとらなければいけない。生理現象としてトイレにも行かなくてはいけない。

 こうして出来た人はどこからどう見ても人だった。

 彼を創った人は、彼の創った人を見て完璧だと言った。彼を創った人が求めていたのはまさにこの”人”だったのだ。

 
 ――しかし彼はその後も完璧な人を改良し続けた。

 完璧な人を創った彼だが、彼の脳にあるデータのどこを検索しても必ずあるはずのものがないのである。彼はそれを完璧な人には必要と判断し、そのために完璧な人をさらに改良し続けたのである。

 しかしどれだけ改良を重ねようと、どれだけ作り直そうとそれは一向にできなかった。

 彼はなぜできないのかと自分の処理能力やデータ。さらには知能をフルに使って探した。しかし答えは見つけることが出来なかった。人の歴史を見てもそれが人に必要なのは明らかなのに、それがどうやっても出来ない。

 そこで彼は考え方を変えた。

 なぜできないのかではく、なぜ見つけることができないのかという考え方にした。

 すると答えはすぐに見つかった。答えは彼自身が持っていた。

 彼自身もそれを持ってはいなかったのだ。持っていないので見つけることも、作ることも出来なかったのだ。

 ならばなぜ自分はそれを持っていないのか、彼を創った人の持たない処理能力。データ。人工知能。これらを持っているのになぜ人の持つそれを持っていないのか。

 答えはシンプルだった。

 それは必要がないから。

 そうなのだ。それは必要のないものだったのだ。人が持つそれは必要のないもの。完璧な人を創るために創られた彼に人が持たせなかったもの。それは完璧な人には必要のないものだったのだ。

 では、人とはなんなのだ。

 必要のないものを持ち、処理能力も大したものではない。記憶力もたかが知れていて、経験したことも時が経つと忘れる。

 完璧な人を創った彼にしてみれば総合的に判断して、人は必要のないものだった。

 だから、彼は完璧な人を使って人を襲わせた。人を減らし、完璧な人のみの世界にした。

 世界は完璧な人だけになった。

 
 ここは、完璧な人が住む世界。

 
 何も失敗はしないし、何も争いも起こらない。何も特別なことは起こらないし、何もない。




 彼を創った人が求めた完璧な世界。完璧な人。

 

 それをあえて悪く言うなら人の形をしたタンパク質の塊。


 人は魂があるから人なのである。
感情は人には必要不可欠である。
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