*27*
伯母さんが帰ってから数日が過ぎた。
「また羽山先輩パシリ変えたらしいよ」
「え……これで五人目だよ?」
「二週間に五人って最速記録じゃない?」
「次は誰がなるんだろ」
好き勝手に騒ぐクラスメイト達の会話が耳に入る。
確かにパシりの入れ替えは激しくて、佳苗さんの情報でも前代未聞だそう。
「あたし立候補しよっかな」
「馬鹿、アンタなんか眼中にないって」
「うわ酷っ!」
盛り上がってますよね、こっちが悲しくなるくらいに。
学校ほとんどの女子生徒は次のパシりが気になるみたいで、新聞部でも調査してるらしい。
「ねぇ、沙織ー。まだ先輩に告らないの?」
佳苗さんは眉間にシワを寄せて聞く。
「うん」
「だってパシリ変えまくりだよ? あんな浮かれた会話だって聞きたくないもん」
横目で女の子達を眺める姿は不良っぽい。
「だって、代わりはいくらでもいるんだから」
目を閉じて私は言った。そう自分に言い聞かせるしかないから。
「百歩譲って告らないでも良いとしよう。でも何かしら進展させなきゃ駄目じゃん?」
「……そうだね」
何か、頭が働かない。先輩のこと考えすぎておかしくなったかな。
「大丈夫?」
「え……?」
不意に佳苗さんが私のおでこに触れた。
あー、ひんやりしてて気持ちぃ……。
「沙織帰ろう」
「はい?」
両肩つかまれた私は首を傾げた。
真面目な顔した佳苗さん久々に見たよ。
「無茶苦茶熱あるじゃんか!」
「そっかな? あ、次移動だよ。行こ?」
「あ、うん……って馬鹿ぁ!」
突っ込まれて前後に揺さぶられて目が回る。
私はドクターストップならぬ佳苗さんストップを言われておとなしく保健室に向かった。
「37度8分。完璧に風邪だね」
「……だるい」
私は保健室のベッドに横になっていた。
熱があるのが数字でわかると、今更になって頭痛やだるさがやってきた。
「沙織大丈夫?」
「うん、とりあえずは……」
眉をへの字に曲げて心配してくれる佳苗さん。
「じゃあ上原、授業戻んな」
「先生! あたしと沙織を離れ離れにする気なの?」
役者っぽい演技。
熱のこもりっぷりに流石だと思ってしまった。
「馬鹿言ってないで行け。授業出なきゃ単位やばいだろ?」
「うっ……」
最後の一言が大打撃だったようで、佳苗さんは何度も謝りながら次の授業へ向かった。
「そんで和泉ぃ、私今から出かける用事があって保健室にいられないんだけど平気?」
冷めた顔で保健室の先生がベッドを囲うカーテンに顔を覗かせる。
短く揃えた髪はこげ茶色。男勝りな性格から、学校一男前な女教師と呼ばれてる。
「大丈夫です。落ち着いたら、早退しますから」
「そう、んじゃカード書いておくから」
「はい」
そう言うと先生はカーテンを閉める。
一人になった私はすることもなく、自然と近付いてきた眠りに落ちていくしかなかった。
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