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嫉妬と妄執と彼女と恋
作:破邪東光



第9章 嫉妬の現在


その日は校長の過去を暴いた後、さすがに第3の事件なるものは起こらず文芸部の部室で新城みずきと事件の話が終わると自然にお開きとなった。

やれやれ。
実習初日からせわしい1日だった。
ただ、帰り際みずきが俺に放った言葉が少し気がかりではあったが。

「先生、これで七不思議は六不思議になりましたね」

嫌な予感がした。
まさか、残りの六不思議もすべて解き明かすつもりじゃないだろうな。
俺の貴重な教育実習期間をすべてこの学園七不思議解決とやらに費やすなど考えただけでぞっとする。
まあ、まさかそんなこと有り得るわけもないか。

翌日。

「先生、おはようございます!昨日の名推理はお見事でしたよ。私、興奮して夜も眠れませんでしたよ」

校門をくぐるなり、俺を待ち構えていたみずきが早速そう声を掛けてきた。
嫌な予感がする。

「先生、早速なんですけど」
きた。
まったく早速本題に入るなよ。
「昨日学園七不思議が先生の名推理のおかげで六不思議になりましたよね?」
おいおい。
確かに校長と対決したのは俺だが、本当は俺に依頼した時点ですべて真相を知っていたくせに。
「で?まさか残りの六不思議も解決しろとか言うんじゃないだろうな?悪いけど昨日のは」
「さすが!名探偵!ご名答です!」
俺がすべて言い終わらないうちにみずきが大声でそう遮った。
やれやれ。
俺に選択の余地はなしか。
と思いつつもなぜか徐々に胸の鼓動が高鳴るのも感じていたのも事実だった。
なぜかはわからないが… …。

そんな俺の思いなど全く無視するかのようにみずきは先を続けた。

「実はうちの部室の隣が音楽室で、放課後は吹奏楽部がコンクールに向けて日々練習しているんですけど」
そんなこと今更言われなくても分かりきっていることだ。
なにしろ、前にも触れたがその演奏は文芸部の部室にいても丸聞こえなのだから。
「それでね。うちのクラスの赤川春美さんもその吹奏楽部にいて、実をいうとその赤川さんと私はとても仲が良いんです。小中高と同じクラスだったんで」
みずきが満面の笑みを俺に向けてくる。
赤川春美といえばうちのクラスの出席番号1番の女子生徒だ。
別にその女子生徒とみずきが仲が良かろうが悪かろうがどうでもいいことだが、勿論本題はこれからだろう。

「赤川さん、最近どうも誰かにつけられてるらしくてひどく悩んでるんです。昨日も先生と別れた後一人で帰るのは恐いからって一緒に帰ったんですから」
なるほど。
過去の自殺事件の次は現在のストーカー事件か。
しかし、それと学園七不思議に何の関係が?

「それでそのストーカー事件と七不思議の関係なんですけど。吹奏楽部が使っている音楽室には代々伝わる七不思議の一つがあって。音楽室といえば大体どの学校でも教室の後ろの壁にベートーベンやらモーツアルトやらの歴代の有名作曲家たちの肖像画が並んでいますよね?うちの学校にもそれは勿論あるんですけど、その絵のうちベートーベンの肖像画だけが消えたというか盗まれた事件があったんです。その事件があったのは私たちがこの学校に入った4月のことでちょうど赤川さんがこの吹奏楽部に入部して、最初に正体不明の変質者に尾行された日だったんです!」

なるほど。
つまり、ベートーベンが絵から抜け出して赤川春美をつけたとでも言いたいのだろう。

「それで赤川さんは話を聞いた吹奏楽部の先輩からこういうことは前にもあって、吹奏楽部の七不思議として代々語り継がれているというんです。つまり、ベートーベンの絵が消える日には必ず女子生徒が何者かにつけられる。いや、絵から抜け出したベートーベンに尾行されるという都市伝説的な話が」

女子生徒を絵から抜け出したベートーベンが夜な夜な尾行する。
それが第二の七不思議か。
これはまた面倒な、いや難解な事件だ。












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