第7章 嫉妬の証明
校長が30年前の事件のきっかけを作った文芸部顧問だという衝撃の事実に俺はさすがに動揺を隠せなかった。
そんな俺の動揺を知ってか知らずか新城みずきの話はさらに続いた。
「私がこの事実を知ったのは30年前の事件当時に発行されていた文芸誌をこの部室の書棚の奥深くに埋もれていたのを発見したからです。その文芸誌には当時の部員が執筆した小説が数編と顧問である光石渉という男の作品に関する総評が載せられていました。光石渉といえば正に現在の学校の校長先生の名前です。勿論同姓同名の別人の可能性もありますが。それにしてもこれはあまりに出来すぎてると思いませんか?」
そこまで一致すればもはや偶然ではなく、みずきがこれを発見したことすら必然に思える。
「確かに出来すぎているかも。じゃあ、その女子生徒とその友達の名前もそこに当然掲載されていたんだろ?当時、彼女らが書いたであろう小説というおまけつきで」
すると、これまで黙ってパソコンで執筆作業をしていたはずの那珂川翔太郎が好奇心旺盛な瞳でみずきのほうに視線を向け、話に食いついてきた。
ははあ。
さてはこの男、みずきに気でもあるな。
お気の毒に。
「勿論、彼女とその友達の名前もちゃんと載ってたよ。那珂川君には悪いけど個人情報保護法の観点から名前までは教えることはできないけどね。そもそも、二人の名前を知ったところで事件の解決には何も役立たないと思うけど。一人は故人、もう一人は生きていたとしても47歳のおばさんよ。ここで重要なのはあくまで当時の文芸部の顧問が光石校長先生だったという事実だけなんだから」
さすがはみずき。那珂川の的外れの愚問を軽く蹴散らしている。
これには那珂川も後に続く言葉がないらしく、もごもごと口を動かし反論の意思を示そうとするだけに留まった。
どうやらこの男ちょっと美男子なだけで、頭はてんで回らない凡人らしい。
俺はそのことでなぜか優越感を感じていた。
なぜかは分からないが… …。
「まあ。これで事件の全貌が何もかもわかったていうわけじゃないけど、何も手がかりがない状態よりは随分プラスだと思うの。そこで、的矢先生に相談があるんですけど。勿論快く引き受けて下さいますよね?」
やはり、そうくるか。
みずきの相変わらずの有無を言わさぬ口調に俺は勿論断る術を持ち得なかった。
「つまり、校長先生にこの事件のことについてそれとなく探りを入れて欲しいというとこだろ?」
そう言うと途端に彼女は満面の笑みを浮かべて、俺に拍手した。
「さすが的矢先生、ご名答よ。いいでしょ?どうせこの学校にいるのは1週間だし。校長に万が一不快な思いをさせたとしても実習期間が短くなるだけで、あなたの今後の人生には何も不利になる要素はないわ。まさか、この学校で将来教員として正式採用されたいとは考えてもいないでしょう?」
負けたよ。
君のその溢れる好奇心には。
俺は今日何度目かわからないため息を小さく吐いた。
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