kiss.00 プロローグ 囚われのキス
―――不敵な笑みを浮かべたまま。
いつものように。
眼鏡をはずしながら、ゆっくりとその顔が近付いてくる。
取り外されたフレームの下に隠れている、左目の小さな泣きぼくろ。
何人の生徒が知っているんだろう。
アッシュグレイのクールな瞳を細めてあたしを見ながら。
薄い唇があたしの唇へ触れる。
背中を走るぞくぞくした感覚に、いつも肩が震える。
初めてキスをしてきた時。
少し押しつけるように触れただけで、すぐに離れた。
次にキスをしてきた時は。
唇ごと優しく吸われてまたすぐに離れて。
その次は。
啄ばむように何度も音を立ててキスをされた。
これが強引なのか優しいのかなんて知らない。
鋭い瞳は強く惹き付けて離さないけど、柔らかく触れる唇は心地よい。
「……んっ」
深い位置まで入り込んでくるキスには、相変わらず慣れなくて。
涙が滲みそうになると、見計らったようなタイミングで離れていく。
漏れそうになる声を必死で堪えるあたしを目だけで笑う。
別にセンセが好きなワケじゃない。
――――それなのに。
もう、何度こうしてキスを受け入れているんだろう。
じっと見つめられて顎を捉えられると、力が抜けて金縛りにあったように動けなくなる。
いつの間にかあたしは。
センセのキスの魔法―Lip magic―にかかってしまっているんだろう。
「たまには、お前から舌入れてこいよ」
「なに言って……」
……だから今日も。
ここが、学校だとか、教室だとか。
そんなことは頭からすっかり飛んで。
大っ嫌いなはずのセンセに、また唇を許している―――。
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