1−退屈しのぎにお遊びを
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プレイヤー選択画面です。
スタートボタンを押すと、68億3730万1231人の人類の中から主人公をランダムに選択します。
・・・ターゲット確定。
烏丸慶16歳。
ターゲット捕捉、転位させます。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
俺の名前は烏丸慶。高校1年生だ。
普通かどうかは分からないが、強いて特徴を言うならヤの付く自由業のボスの1人息子。うちの親父はかなりの硬派らしく、このご時世に任侠を貫き、外に妾を作る事無く、毎日鍛練とか言って体を鍛える筋肉馬鹿だ。
此処は市内にある廃工場。
何でこんな場所にいるかと言うと、最低でも週に1度はある不良達のお呼び出しがあったからだ。今週はこれで3日連続。人数を集めてもどうせ敵わないんだから、いい加減諦めて欲しい物だ。
「ったく、最近の馬鹿共は根性が足りん。俺等ガキなんだから、素手で突っ張ってなんぼだろうが。それなのにすぐ武器とか持ち始める・・・全く日本はどうなるんだよ。」
そこら辺の不良に日本の心配をされたくないって?
意外に思われる事だが、これでも俺は成績優秀な方だ。ガキの頃から勉強は何故か教員免許を持っている若頭の秀人さんに、武術は剣道柔道空手に合気道、合計12段の親父にと、結構な英才教育を受けている。全国模試等は毎回受けて、全国の学年ベスト3をキープしているし、部活に所属はしていないが、毎日路地裏で鍛えられている。
これからはこっちの世界も文武両道らしい。
「最近はつまんねぇなぁ。カラんで来る連中の質も落ちたし、毎日退屈だ。」
最低でも高校は卒業しろという親父の言い付けを守っているが、授業も喧嘩もくだらなく思える瞬間がある。
「もうちょっと生活に刺激が欲しいな・・・例えば・・ん?」
英才教育のお陰か、不穏な空気という物は感じ取れる様になった。俺の勘が正しければ、次の曲がり角で何かがある。さっきの馬鹿共のリターンマッチか、それとも別口のお客さんか。
曲がり角前で一旦停止し、自分のタイミングで勢い良く飛び出す!
が、曲がった先には何も無い。気のせいだったのか?
「おかしいな・・・勘が鈍ったか?」
そう簡単に気配ごと消えるなんて有り得ないんだが・・
ガツッ!!
頭に衝撃が走った。スゥーッと意識が遠ざかりながら振り返るも、視界に何かが写る事は無かった・・・
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「・・・痛ぅ・・」
意識を取り戻した場所は真っ暗な場所。松明の様な物が何本か立っている。何処かに拉致られでもしたか?ご丁寧に鎖で縛られてしまっている。今すぐ脱出は無理そうだ。
何とか体を起き上がらせ、地面に座り込む。さて、こっちは気付いたんだ。今度は拉致った方の言い分を聞こうじゃないか。
「ほぅ、中々肝が据わった奴の様じゃな。」
松明の奥から真っ白なワンピースを着た女の子が現れた。
「下郎が!わらわはパ○ウェーブでも北の工作員でもない!」
まだ何も言ってない。ってか、俺の考えている事でも読んだのか?
「さよう。そなたは割と知恵が回る様じゃのう。」
「・・随分と日本に詳しい奴だな。あと人の頭の中を勝手に読むな。」
「くくく、わらわは読もうとして読んでおるのではない。そなたの思考が漏れてわらわに伝わって来るだけじゃ。」
「まぁその事はどうでもいい。俺は帰りたいんだが、この鎖外してくれるか?」
「まぁ待て。話が終わったら放してやる。それまで待てぬと言うなら、自力で外せ。」
・・・自力で外せ、か。仕方無い。とりあえず外してみるか。
ゴキッ!ゴキッ!
「ほぅ、あの魔狼フェンリルですら千切れなかったグレイプニルを技で外すか。少し力量を見誤ったかのぅ。」
何て事は無い。関節を一度外して、鎖が緩んだ後でまた嵌めただけだ。
「・・逃げようとはせんのか?」
「俺があんたなら、もし鎖を外されても逃げられない様にする物さ。とりあえずは話を聞こうか?」
「くくくっ、本当に毛並みが人とは違う様じゃのう。まるで1柱の神を相手にしているかの様な威圧感。これは変容させた結果かの?」
何にも無い空間から椅子が現れ、フワリとそこに座る女の子。
「良かろう。先ずはわらわの話を聞いて貰おうかの。」
女の子はそれからいくつかの英雄譚を話し出した。
そのどれもがファンタジー小説やゲームの世界で聞く物語をテンプレートした様な物ばかりで、山を穿ち海を割る。悪と戦い己の正義を通す。そういった、何処か神話の世界の話だった。
「それで?その英雄がどうしたって言うんだ?」
「今の話は全て実話と言ったらお主は信じるか?」
「信じるも何も、これでも俺は無神論者でね。そんな神話みたいな話、誰が信じられ
「これは全て真実の物語なのじゃ。」
聞けよおい。
「初めは神々の主、オーディン様が戯れに始めた、イデアの世界と人間を使った、英雄譚を作り出す、というお遊びだったのじゃ。だが今、神達の間ではそれが大流行しておってな。」
・・・人間を弄ぶとは中々良い趣味したゲームだな。
「まぁ気にするでない。そなた等の種は放っておけばいくらでも増える。仮に100万の人間が消えても大した問題にはならぬ。」
それはそれで問題になると思うが、ふむ、大体分かった。
「それで?自称神とでも言いたそうなお嬢さん?そんな宗教の話と俺に何が関係あるんだ?」
「話が早くて助かるのぅ。確かにわらわは神じゃ。わらわもそのお遊びがしたくなっての、人間の中から無作為に選び出した。それが烏丸慶、お主じゃ。」
話がヤバイ方向に進んで行ってると思った瞬間、持っていた鎖で女の子椅子ごと縛り付けようとする。
しかし女の子は椅子ごと空に浮き上がると俺から距離を取った。
「わらわを謀るにはまだまだ100万年早いわ。」
「・・・分かったよ。お嬢さんの言う事、100歩譲って信じよう。それで?俺に拒否権はあるのか?」
「選ばれたという事はこれから英雄としての道が待っているという事じゃ。喜ばれこそすれ、断るなど受け付けぬ。それに既に手は打ってある。そなたのいた世界から、そなたの痕跡は跡形も無く消え失せておる。今更あの世界に戻った所で戻る場所など残っておらぬよ。」
用意周到な事だ。拒否権は無し退路も無し。前に進むしか無いというのか。
「漸く進まねばならぬ事が分かった様じゃのう。安心するがよい。ちゃんとルールは決まっておるし、そう簡単に死なぬ様に世界を渡る変容は既に済ませてある。神には程遠いが、渡った先で生きて行くには十分な力は既に備わっておるのじゃ。」
「まるで本当によくあるファンタジー小説そのままだな。いいだろう。お嬢さんのお遊びに付き合うのも一興だ。」
「答えは決まったか。まぁ決められぬのなら強制的にイデア界まで送り届けるまでだがな。さて、このお遊びにはルールがある。オーディン様が作ったルールじゃ。従わぬ訳にはいかないが、わらわにはとっておきの方法があってな、変容の他にいくつか土産がある。」
何やら椅子の後ろからゴソゴソと取り出す自称神の女の子。
「先ずはこれじゃ。これがオーディン様の義兄弟でもあるロキ様の剣、その名もレヴァンテインじゃ。」
「オーディンにロキか・・・という事はお前は北欧神話に登場する神の1柱か?」
「そなたは存外博識よな。良いだろう。わらわはオーディン様をお守りする戦乙女にて末娘、ジークルーネじゃ。」
オーディンを神と崇めていたから北欧系と思ったが、戦乙女だったか。
「そしてこの腕輪。これもオーディン様から譲って貰った。良いか?この腕輪はドラウプニルという。この先お主が旅する世界、イデア界には様々な神獣が存在する。見事そやつらを従える事に成功したら、このドラウプニルに住まわせる事が出来る。見事な神獣を使役してみせろ。」
「良いのか?はっきり言うが、ジークルーネ。お前が渡すのは神の使う武器やアイテムだぞ?お望みの英雄譚にはならないかも知れないぞ?」
「構わぬ。わらわは長年続く戦乙女の仕事に退屈を感じてのぉ。戯れに遊びを始めるだけじゃ。」
分かった。俺とこいつは似た者同士なんだ。平穏な生活に刺激を求めただけ。
そう考えるとギブ&テイクが成り立つな。
「さぁ説明は終わりだ。新しい英雄譚をわらわにも見せてくれ!!」
ビシッ!と指差す先には、いつの間にか扉が開かれている。真っ暗な世界の中で、扉の先からは光りが射し込んでいる。
俺はレヴァンテインを手に取り、扉に向かって歩き出した。
コツコツと響いていた足音が不意に消え、浮遊感とまばゆい光に身を委ねる。
そして俺は意識を手放していった。
通説によると、レヴァンテインはロキがニブルヘイムの門でルーンを唱えて作り出した『杖』だったみたいですね。
よくあるRPGでレヴァンテインが剣として描かれていますが、本来は『害をなす杖』という意味があったみたいですね。
そして一応?物語のキーでもあるジークルーネ。
戦乙女には色々と区分けがありますが、ここではエッダの戦乙女ではなくワーグナーの『ニーベルングの指輪』での戦乙女の名前を拝借させて頂いています。
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