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Helau!! 作者:伊舞 紫咲

第2幕「クラウンの疑義」

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第43席「Gefangenschaft」

「つかさフィーロ」
「何? ロイ」
「本当に監禁する!? 手足縛る!? しかも村人帰ったぞ! おい!! フリーダム過ぎんだろ!!」
「あー、ごめん。眠いから寝か……」
「寝てんじゃねぇよ! 俺に縄解かせて何してくれてんだ!」
「睡眠」
「睡眠大事だよね! じゃねーよ。マジ無いわヤムさん。あの場であんな提案するか? 普通?」
「ヤムさんを普通だと思ってんの?」
「何その〝片腹痛いわ〟みたいな小馬鹿にした顔」

 背中を預け合いながら2人は言葉を交わす。振り向けば相手の表情は確認出来るし、手足を縛られようが大した問題じゃない。ロイが触れれば自由自在に操れるのだから。
 それを見越してのヤムの作戦。分かっていても反抗心の塊であるロイが黙ってるはずがなかった。

 村人は会議を終えると同時に2人を縛り、早々に退出した。役場の人間も定時を迎えれば帰宅してしまう。
 午後6時の役場には人っこ一人居らず、ロイはそれをいいことに騒ぎ倒していた。

「あの人が普通? ありえないね。マジ鬼畜」
「優しいけど、こういう時はね」
「登場した時なんて普通に能力使ってたし。俺達には『能力はむやみやたらに使うものじゃないんだよ』とか言っといて、クリスをタクシーみたいに使ってんじゃん」
「でも、あの場を治めたのは流石だったよ。一流のクラウンは違う」
「ハッ! あの人の過去を知らないから、んなこと言えんだよフィーは!」
「ロイは相変わらずだね。縄は解けた?」
「よゆー、誰か来たら言ってよ。結びなおしたげる」

 口笛を鳴らしながら、ロイはフィーロの縄を解き空中で漂わせる。竜のように彷徨う様は見ていて爽快だ。次いで自らの縄も宙で遊ばせ、ロイは床に寝そべった。

「んで? ウチの看板クラウン様は謎が解けたのか?」
「Helau」
「教えろよ」
「ふーん。謎は解けたんだ。ヤムさんも準備整ったって」
「いやぁぁぁぁあ!?」
「女子か」

 唐突に姿を現したクリスが仰向けになっているロイの顔を覗き込む。その瞬間、女性のような叫び声を上げ飛び起きたロイは、脱兎の如く駆け出しフィーロの背中に隠れた。

「クリス。お疲れ様」
「お、お、お、お前! 脅かすなよな!」
「ダサ……」
「うるせぇ!」
「これで年上とかないわ」
「あれ? クリス一人?」
「伝言だけだからね。『フィーロ、もう少し上手に探偵をしようね。今のままじゃ探偵ごっこにもならないよ』だそうだ」
「それをわざわざ!?」
「そんなわけないじゃん」
「だよね! ありがと!」

 耳に痛い言葉の羅列に悲しい気分になる。自分を詰るだけの伝言などなくていい。どうやらそうじゃなかったことに、フィーロは歓喜するあまりお礼を零していた。

「情報と、お届けものだよ」
「え?」
「とりあえずコレが森の中の地図ね」
「あ、うん」
「橋は健在。子供達の生存は確認。決行は明日。日が傾くと同時に突入。ロイ」
「はいはーい。特攻隊長の俺の出番ね」
「今は1人だけどね」
「仕方ねぇじゃん! 他の団混ぜた時の話だし!」
「随分、早いね」
「理由は分かってるでしょ?」
「逃げられる可能性があるから」
「そ、ヤムさんもそう言ってた。犯人は多分俺達のことを知ってる」
「それは……」
「カーニヴァルの存在に勘付いてるってこと。だから無理をしてでも全員連れ去った。そして逃げ切るつもりだよ。
 だから日が沈んでから行動するだろう犯人のアジトを襲撃する。ロイが行って犯人を取り押さえる。僕らスリーマンセルで子供を救出。美味しいとこはフィーロの役目。交渉(・・)は任せたってよ」
「了解」
「いいよなー、フィーはいつもカッコイイとこ持っていってさ!」
「下手に前に出ると、ただの足手まといだしフィーロ」
「ヒドイよクリス……」
「でもフィーロは死なない。だから信じてる」
「だな。死なない奴だから背中を預けられる」
「作戦は以上。あとは『柔軟に対応するように』ってお達し。あ、『迎えには行かないから自力で逃げ出してくるように』だってさ」
「想像はしてたけど。ねぇロイ?」
「やっぱかぁ。なぁフィー」
「ま、いいじゃん。質問は?」
「ない」
「俺もなし~」
「んじゃ。Helau」
「「Helau!」」

 言葉と共にクリスは消える。拳を合わせる2人は知らない。この会話が盗聴されていた事実を。
 たった一枚、壁を隔てた向こう側で耳を欹てていた者がいたことを、最後まで気付けなかった。
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