雫−6:エリクとシズク
それからシズクはエリクから“言語”、“文化”、“文学”を学んだ。
だがそれは長く続かなかった。
ある日エリクはこんなことを呟いた。
「ねぇ、エレス僕たちは一体なんなんだろう?」
このころのシズクはエリクに『エレス』と呼ばれていた。
名前のない彼女にエリクが付けた名前だ。
「どうしたの?いきなり・・・」
シズクはエリクの黄金色の瞳を見つめる。
「吸血鬼はなんなんだろう?僕たちは自らの渇きの為に血を啜る。それが生きる為だと僕は思っていた。
だけどそれは違うみたいだ。・・・君はまだ一回も血を飲んでいない。なのに君は生きている。
どうして?」
エリクがシズクの瞳を見つめ返し言った。
「・・・それはわからないよ?・・・私にも・・・」
「・・・じゃぁ!僕は調べてみる!吸血鬼の事そしてその歴史を!」
エリクはそう言って部屋を飛び出していった。
シズクはそのエリクの背中を見つめていた。
それがシズクにとって彼女が知っている彼の“最後”の姿だった。
エリクが吸血鬼について調べ始めてからシズクはすることなくただ眠っていた。そして・・・
「!!・・・なに?」
いきなりの地震にシズクは目覚めた。
部屋全体揺れ、壁や天井に蜘蛛の巣のようなひびが広がった。
そして壁が崩れ天井がおちてきた。
「くっ!」
シズクは前転し、それを避けた。
幸いに壁が崩れ鎖の楔が壊れたのだ。
シズクは手足の鎖を外し地上に繋がる階段を駆け上がった。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
地上につくとそこは吸血鬼の亡きがらが沢山転がっていた。
「・・・ひどい・・・」
シズクは亡きがらを避け建物の出口へと足を進める。
そして、扉を開け外にでるとエリクが立っていた。
だが前とは違う雰囲気を漂わせていた。そして、その手には黄金の刀を握っていた。
「エリク!なにがあったの?」
シズクはエリクに問う。
だがエリクは答えない。
「エリク!!」
シズクはさっきより強く叫ぶ。
「・・・必要ないんだよ・・・」
エリクは小さく呟く。
「え!」
「この世界に吸血鬼はいらないんだ!」
エリクは叫び持っていた刀を強く握りシズクに襲い掛かった。
「うっ!」
シズクは横にステップしてかわそうとしたが、タイミングが遅く腕を掠めてしまった。
「なんで!・・・殺したの?」
シズクは叫ぶ。だがエリクの追撃が襲う。
「言っただろう。必要ない、と!」
「なんで!?」
シズクは攻撃を避けながら聞く。
だが、エリクの攻撃は鋭くかわしきれない。
「奴らは生きる為に血を欲しがっていたわけではなかった!ただ自らの能力を高める為だけに血を欲していたんだ!奴らは生命の重みを知らない野蛮人だ。だから殺した!当然の結果だ・・・」
エリクの吐き出す言葉にシズクは戸惑う。
だがエリクは攻撃を続ける。
「でもこんなことを許されるはずないわ」
「当然の結果だった!」
「これでは貴方も彼等と同じよ」
シズクの言葉でエリクの攻撃が少し鈍った。
シズクはそれを見逃さずエリクに肘打ちを腹部に食らわし右腕を掴み投げ飛ばした。
エリクは吹っ飛び建物に突っ込んだ。
シズクはふらつきながらも自らの身体を支える。
エリクの攻撃によってうけた傷はもう治っていたが今まで拘束されていたシズクにはスタミナがなかった。
「俺はあいつらとは違う!違うんだ!!!」
エリクは叫び掌を地面に付ける。
「偉大なる生命の息吹よ、我を祝福し仇なすモノに制裁をあたえたまえ!!」
すると地面から水しぶきが飛び出した。
そして、それは一つに纏まり龍の形へと変わった。
「『蒼龍水華』初ノ技、『止水龍牙』!!」
エリクの叫びと同時に水の龍がシズクに襲い掛かった。
シズクにそれを受け止める力はもうなく龍の餌食になった。
「がぁ!!」
シズクは龍に腹部を噛み付かれかみ砕かれた。
血しぶきがとび、シズクの口からは内臓の出血が逆流した。
地面にはシズクの血が泉をつくっていた。
「うぅ・・・」
シズクはそのまま、意識を失った。
−
−−
−−−
「うぅ・・・」
どれくらいの時がたったのだろう。
シズクは身体を起こし立ち上がった。
そして驚いた。
水龍に噛まれた傷が治っていたからだ。
「・・・」
シズクは無言のまま空を見た。
空は真っ暗で綺麗な星が点々とし、綺麗な三日月が昇っていた。
後にわかることだが、吸血鬼には個人に一つ能力をもつことをシズクは知る。
そしてシズクの能力『生死境界』。
傷を瞬時に治し、そしてその傷をコピーし、対象に写すという能力だった。
そしてシズクは自己防衛の為に『生死境界』の傷を瞬時に治す能力を使っていた。
「・・・エリク・・・貴方は何をしたいの?・・・」
闇の中にいる少女の声が儚くひびいた。
【※注意】
此処は本編と関係ありません。
今話にでてきた能力を此処で詳しく紹介するページです。
【能力紹介】
シズク
能力『生死境界』
【説明】
本編でも書いてあったように自らの傷を瞬時に回復し、その傷を理解し対象に触れる事で能力発動。
だが、それは相手から受けた傷限定で自ら傷つけた傷は能力に反映しない。
自分で傷付けてもその傷は回復するが相手には写せないということです。
エリク
能力『蒼水龍華』
【説明】
本編にでてきたように水を操る能力です。
水があれば能力が発動します。
ですがエリクは能力を細かく使いやすくするために『コトダマ』と言う呪文を唱えます。
なのでエリクは今回使用した『止水龍牙』の他にも違う技を多数持っています。
因みにこの能力は水が無ければただのヘタレです。
無から有は生まれないという事です。
今回エリクはこの能力を使う為に地下水脈を使用しました。
オマケ
リファレス
能力『血流浸焔』
【説明】
本編にでてきた能力はあれは吸血鬼ならば誰でも出来る能力です。
彼の本当の能力は自らの血液を発火させる能力です。さらに自分の血液を火種にし、相手の血と自らの血を浸透させ、発火させることも可能。(灯油に火をつける感じ)
他にも色々な使い道があるようです。
ある意味1番自由度が高い能力と言えるでしょう。 |