雫−4:過去と闇
シズクとリファレスは睨み合っているがどちらも動く気配がない。
辺りは静まり返っている。
と、その時リファレスはシズクに言った。
「……まさかこんなところで同族と会えるとはね?……」
リファレスの声がこの静かな空間に響いた。
「・・・」
シズクはそれを聞き流す。
「……なんで君はレイスといるのかな?」
「・・・」
リファレスはシズクに問うがシズクは答えない。「……黙ってるだけじゃ何にもわからないよ?……もしかして言いたくないのかな?……なら僕が言ってあげよか?」
リファレスは笑みを浮かべて言った。
それと同時にシズクの今まで無表情だった顔が少し歪んだ。
そしてリファレスに切り掛かった。
「……おやおや、そんなに言われたくないことなのかな?」
リファレスは笑みを消さないままシズクの小太刀の刃をハーモニカで受け止めた。ハーモニカは攻撃に耐えられずひびが入った。
「あ〜ぁ、このハーモニカ気に入ってたんだけどな……まぁいいか」
リファレスはシズクの刃を弾き返しシズクと少し距離をとり少しがっかりな声で言った。
「……今度はこっちの番だね?」
リファレスは爪を伸ばし自分の掌に傷をつけた。
傷口から血が垂れる。
そして、その血は刀の形になり固まった。
そしてそれを持ってシズクの所へ跳びシズクの胸に突き刺した。
「!!・・・」
シズクは血の刀を抜こうとしたがリファレスはシズクの顔面に血の弾丸を乱射した。
シズクは吹っ飛び地面に強くたたき付けられた。
「……血をロクに操れないのに僕に盾突くからこうなるんだ……さて、レイスを起こしてくるか………」
リファレスはシズクに背を向きレイスの倒れている所へと向かった。
だがシズクはすぐに起き上がりリファレスの前に立ちはだかった。
「ハァ、ハァ、ハァ・・・」
シズクは胸の傷口を押さえ小太刀を構える。
だが、さっきの攻撃を食らい額から血は流れ、瞳の色は紅から元の色の茶色に戻っていた。
「……まったく君は本当に邪魔だな?」
リファレスは血の刀を構える。
だが、シズクは小太刀を腰の鞘に納めた。
「……何の真似だい?……もしかして諦めたのかい?」
「・・・」
シズクは何も構えずただ突っ立っている。
「……君もやっぱり“あの女”と同じでつまらないな……死ね」
リファレスの血の刃がシズクの頭上へ振り下ろされた。
―
――
―――
―此処は何処だ?なんで俺はこんな所にいるんだ?―
辺りが全くの闇、暗闇の世界の中にレイスはいた。
「俺、死んだのか?・・・ハハハ、情けないな」
レイスは俯き目を閉じた。
―シズク、ゴメン。仇取れなかった―
ふと、いきなり空間の景色が代わり少し寂れた町の景色へと、変わった。
「此処は・・・」
オレは回りを見渡した。
そう此処はオレが子供の時にいた町だ。
いや、オレが捨てられた町だ。
「なんでこんなところに・・・?」
と、いきなりオレの横をスッとなにかが通りすぎた。
オレは後ろを向いた。
「!!」
少年が何かを持って走っていた。
この少年は?
昔のオレ?
少年は傷だらけで泥まみれおまけに髪はボサボサ、服は殆ど破けていた。
オレは少年の後を追おうとしたがまた、空間が歪み景色はまたさっきと同じ漆黒へと戻った。
「あれは確かに昔のオレだった・・・一体どうなってるんだ?」
そしてまた、景色は変わった。
今度も少し場所が代わっていたが同じ町のようだった。
そういえば此処であの女性にあったんだよな。
オレは過去を振り返っていると・・・
「金を出せ!!」
また、さっきと同じ少年がナイフを持って今度は紅髪の女性に金を要求していた。
女性は背中に大きな十字剣を背負っている。
あっ、このヒトは!!
オレがさっき思い出していた女性がそこにいた。
「ダメよ?脅迫とかしたら」
女性は少年(昔のオレ)を右手で殴り飛ばした。
少年は吹っ飛び建物にぶつかった。
うわっ、痛そう・・・ご愁傷様昔のオレ・・・
女性が少年に近付く。
だが又しても景色が漆黒へと戻った。
「・・・今のは確かに“シズク”だった・・・」
今のシズクと、同じ姿をしている女性。
オレに人を信じられる事を教えてくれたヒト。
オレに闘い方を教えてくれたヒト。
そしてオレをリファレスから守ってくれたヒト。
だけどそれであのヒトは・・・
「まさか此処はオレの記憶の中なのか?」
「そうだ・・・ここはお前の精神の世界・・・」
「誰だ!?」
「さぁな、俺に名前はない、誰でもない」
何処から現れたのか解らないがオレの目の前に全身真っ黒な男がいた。
「誰でもない?」
「あぁ、俺に存在などない・・・闇だ」
「ふぅん、で何のようだ?」
俺は“闇”を睨んだ。
「そんな恐い顔をするな・・・まぁまずはこれを見ろよ?」
“闇”は天に手を翳した。
すると、景色が夜の街の景色へと変わった。
そしてオレの前に血だらけのシズクがオレに背を向け立っていた。
そしてシズクの前にはリファレスが血の刃を振り下ろそうとしていた。
「!?これは・・・」
また、幻影なのか?
「これは今まさに起きていることだ・・・すでにこの少女は能力を使い切っているようだ・・・まさに万事休すだな?」
闇がオレに振り向き言った。
「この少女を助けたいか?」
「何故そんなことを聞くんだ?」
「見殺しにするのか?」
「まだシズクは戦えるぞ?あいつの力はまだ使い切っていないぞ?」
「だが、その力を使えばアレのココロが壊れてしまうんじゃないのか?」
「貴様!!」
オレはやつに掴み掛かろうとしたがやつの体をすりぬけてしまった。
「いっただろう?俺は存在していないと・・・で、その様子だと図星のようだな?どうするんだ?このままではあの少女はただの化け物になるぞ?本能のままにただ敵を切り裂く化け物に・・・」
「お前、それを止める方法をしってるよな?」
「ククク・・・よくわかったな?あぁ、知っているよ?だけどお前は首を縦にふるとは思わんがな?」
“闇”は苦笑しながら言った。
「・・・どうすればいいんだ?」
「俺を受け入れろ・・・そうすればあの男を倒せる」
「ようするにオレに吸血鬼になれと、いいたいのか?」
「あぁ・・・」
「わかった・・・」
「以外だな?後戻りはできないぞ?」
「わかってる・・・」
オレは瞳を閉じた。
また、あんな想いをするのはもう嫌だ・・・だからオレは・・・
「・・・シズク」
オレの声が暗闇の世界に広がりそして儚くきえていった。 |