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いつまで続くの?

本日二話更新? まぁ、一話は昨日の分ですが。



 クロから貰ったガイドブックをパラパラとめくりながら、これから行く店を考える。

 流石に一ページずつ丁重に読んでいく時間は無いので、挿絵と評価の星を参考に大まかに選択する。

 季節ものの料理がお勧めな所で、今の時期に合わない店。夜間のみの営業の店。予約が必須な店などを除外しつつ、出来るだけ近場で探してみると……二つの候補が目に止まった。


 片方はクロの評価は八つ星……かなり高評価な超高級レストラン。予約は不要だが値段が高く、その割には量が少ないが、味は一級品と感想が書かれている。

 もう片方はクロの評価では五つ星……先の店に比べると三つ低い。この店は超がつくほどではないが高級料理を扱う店で、やや穴場的な場所に店を構えているので予約が無くとも大丈夫らしい。なにより目に止まったのは、この店の料理は非常に量が多く、ガッツリ食べる事が出来るらしい。


 どちらの店も今居る場所からそれなりに近いし、この二つの候補のどちらかで良いだろう。

 問題はどっちにするか……高級志向の八つ星、量重視の五つ星。まぁ、どちらも高級店ではあるのだが、比べてみれば量か質かといったところだ。


「……なぁ、アリス」

「なんですか?」

「沢山食べれるそこそこの高級店と、量は少ないけど超一級品の店……どっちがいい?」

「ふむ……まぁ、私は違いの分かる女、アリスちゃんですからね。量の多い方で!!」

「……」


 迷いなど全くない、力強い返答である。うん、なんとなくそんな気がしてたけど……やっぱりこいつは、質より量か……。

 今回の主役はアリスなわけだから、俺としてはアリスの望む方でOKだ。


「よし、じゃあ、この店にいこう」

「は~い……どれどれ? おぉ、ミートタワーがある店じゃないっすか! これはいい店ですよ」

「ミートタワー?」

「書いて字の如く、肉の塔ですね」


 よ、よく分からないけど、大食い御用達っぽい響きだ。自称乙女として、その単語に目を輝かせるのはどうなんだろうか?









 芸術広場から移動すること十分、目的の店に到着した。

 木造りの落ち着いた雰囲気の店内は、流石高級店だけあって上品さも感じられる。

 ただ、それほど客数は多くない。穴場というのも頷ける感じだ……ただ一つ気になるのは、店内にやけに大柄な客が多いという事。

 よく考えれば店の扉も結構大きかった。って事は、この店はそういう体の大きい魔族等を専門にしている店なのかもしれない。


 そして店員に案内されて席に座り、アリスが言っていたミートタワーなるものを頼んでみる事にする。


「量をお選びいただけます。半分、通常、二倍、五倍、十倍です」

「……アリス」

「十倍で!」

「かしこまりました。では、少々お待ち下さい」


 コイツ……躊躇なく十倍を選びやがった。店員さんも、アリスを二度見してたし……やっぱりあのサイズで、十倍とか食べられる気がしないよなぁ……。


 そのまま少しの間アリスと雑談をしながら待っていると、奥の扉が開き……店員『六人がかり』で巨大な皿と、そこに積まれた山のような肉を運んできた。

 こ、これが、ミートタワー……なるほど、文字通り肉の塔である。


 テーブルに置かれた巨大な肉の塔を見てみる。一目見て高級だと分かるきめ細やかで、美しくすらある肉は、ローストビーフになっているのか、赤い宝石のようにすら見えた。

 肉の塔の周りには、野菜の飾り切りが並べられ、その隙間に色とりどりのソースが添えられていて、豪華絢爛な感じだ。


「……す、凄いなこれ……」

「この店はオーガ族とかオーク族に人気のある店ですからね」

「なんか、もの凄く納得した」


 十倍でこのサイズ……たぶん俺、一人前でも食べられないな。

 美しく高級感溢れる料理……なのだが、やっぱりサイズが常識外であるため、俺はむしろ若干引いていたが、アリスは目をキラキラと輝かせている。


「じゃあ、食べるか」

「はい! ……あっ」

「うん?」

「……」


 それでもアリスが喜んでくれるなら満足なので、俺は控えめに食べて、アリスがしっかり味わえるようにしようと、そんな事を考えながら、食べ始めようとした。

 すると何故かアリスが、なにかを思い付いたような表情に変わり、視線をキョロキョロと動かし始める。


「どうかしたのか?」

「……うっ、うぅ……ちょ、ちょっとだけ待ってください! 今覚悟を決めてるんで」

「……覚悟?」


 料理に手を付けないアリスが気にかかり、尋ねてみるが、どうにも要領を得ない。

 なにやら頬も微かに赤くなっているし、緊張してるのだろうか? 覚悟って、なんの覚悟だろう?


「……大丈夫……出来る……私なら……出来る」

「お、おい、アリス?」

「私と、カイトさんは恋人同士……大丈夫……」

「お~い」


 ブツブツと下を向きながらなにかを呟くアリスには、どうやら俺の声は届いてないみたいだ。

 そしてアリスはそのまま少しの間ブツブツとなにかを呟き、それからガバッと顔を上げ、ミートタワーにフォークを向ける。


 ようやく食べる気になったのかと、疑問を感じつつ、俺も食べようと食器を手に取ったところで……


「か、カイトさん!?」

「うん?」

「あ、ああ、あああ、あ~ん!!」

「……」


 真っ赤な顔で完全にテンパりながら、アリスがフォークに刺さった肉を差し出してきた。


「……なにしてんのお前?」

「はは、早く食べてください! は、恥ずかしいんですから!」

「……いや、だからなんでそんな事を……」

「こ、恋人が出来たら、い、いい、一度くらい、やや、やってみたかったんです」


 しどろもどろになりながら、仮面から覗く目を潤ませ、羞恥に耐えながら肉を差し出してくるアリス。

 その様子は大変可愛らしく、出来るならもっと見ていたい気分になったが、それは流石に可哀想なので、俺は少し身を乗り出してアリスが差し出してきた肉を食べる。


 舌触りがよく柔らかい肉には、少し酸味のあるソースが染み込んでおり、口の中に広がる肉の味を引き立てていて、本当に美味しい。

 その美味しい肉をしっかり味わっていると、アリスがジッとこちらを見ているのに気が付いた。


 ああ、これはアレかな? 俺の方にも食べさせてほしいって事か……


「ほら、アリス。あ~ん」

「……あ、あああ、ああ~んん、あむっ!」

「お前動揺し過ぎだろ……」


 地震でも起きてるんじゃないかと思う程体を震わせながら、アリスは俺が差し出した肉を食べ、真っ赤な顔で咀嚼する。

 すると少しずつ、嬉しそうな顔に変わっていったので、肉の味が気に入ったみたいだ。


「次も同じようにして食べるか?」

「……な、な、な……」

「今度はどうした?」

「なんでカイトさんは平気そうなんですか!?」

「いや、なんでって言われても……」

「わ、私は、顔から火が出そうなのに! カイトさんだけずるいです!!」


 いや、俺が平然としてるのは……お前があり得ないほど動揺してるから、逆に冷静になってるだけなんだけど……。

 それにしても、アリスは怒ってるんだろうけど……真っ赤な顔でプルプル震えながら、こっちを睨む姿は、なんて言うかその……。


「可愛いな」

「にゃっ!? にゃにをっ!?」

「いや、真っ赤になってるのが可愛いなって……ほら、アリス。あ~ん」

「むぐッ!?」


 俺の台詞を聞いて、真っ赤になりつつパクパクと動かしていたアリスの口に、新しい肉を食べさせてあげる。

 するとアリスは、爆発音でも聞こえそうな勢いで顔を赤くして、静かに肉を食べ、それが終わると口を開いた。


 どうやら恥ずかしいけど、このまま食べさせて欲しいらしい。なんとも分かりやすく、可愛い反応に思わず笑みが浮かぶのを自覚しながら、再び肉をフォークに刺してアリスの方に向ける。


「あ~ん」

「あ、あ~ん……もぐもぐ……カイトさん、絶対私に対してだけSですよ……」

「うん?」

「なんでもないです! 次ください! も、もうこうなれば、全部カイトさんに食べさせてもらいますからね!!」

「ぷっ……はいはい。了解」

「なに笑ってるんすかあぁぁぁぁ!」


 むきになって叫ぶアリスが面白く、ここがそれなりの高級店だという事も忘れて、和気あいあいとアリスと互いに食べさせ合う形で食事と進めていった。

 こうしてると、やっぱり恋人同士になったって気がして……嬉しくなってくるな。もっといっぱい食べさせてあげたいものだ。


 ……っと、そう思っていた……『そこまでは』……


「もぐもぐ……カイトさん、次お願いします!」

「……な、なぁ、アリス? これ、いつまで続けるの?」

「勿論、全部食べ終わるまでですよ……あっ、店員さん! これと同じミートタワーを『三つ』追加で!」

「ちょっ、も、もう手が痛……アリス!?」


 そう、俺はなめていた。アリスの底なしの胃袋を……

 食べ始めたばかりの頃に、全部食べさせてあげるといった発言を後悔しつつ、俺は痛みで震える手を伸ばして、次の肉をアリスの口に運んだ。


 拝啓、母さん、父さん――アリスと来た店は、そこそこの高級店で、あまり格式ばった所じゃなくて、可愛いアリスを見ながら楽しく食事をする事が出来た。出来た……けど……本当にこれ――いつまで続くの?







「あっ、他のメニューも一通り持って来てください!」

「も、もうやめてえくれえぇぇぇ!?」





シリアス先輩「……いいか、良く聞け皆……作者は、快人をアリスの家に数日泊まらせていちゃつかせると言った。しかし、まだ一日も経過していない……この意味が、分かるな? ここからが、本当の地獄だ」

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