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Re:ゼロから始める異世界生活 作者:鼠色猫/長月達平

第四章 永遠の契約

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第四章55 『クリスタルの少女』

 ――クリスタルの中に閉じ込められている少女を見て、スバルは思わず呼吸を忘れるほどに見惚れてしまっていた。

 それほど、眼前の光景には心を揺さぶるほどの、恐ろしい美しさがあった。
 透明質の、うっすらと青みがかかったクリスタルの中に、膝を折って座るような姿勢の少女が閉じ込められている。
 氷漬け――という表現が近いようで、しかし溶ければ解放される氷と違って、クリスタルは砕かれない限り永遠だ。
 そしてこのクリスタルを砕くということは、間違いなく中に閉じ込められている少女の体までも砕くことを意味している。

「なんで……こんな、ことに」

 ぽつりと、思わず漏れた言葉にはかすかな憤りがあった。
 スバルは静かに、だが確実に怒りを感じている。

 クリスタルの中に閉じ込められた少女は、どうあっても無事にそこから解放されることはない。これをやった人物にどんな意図があって、この少女とどんな関わり合いがあったのかもわからない。わからないが、ひどく心を掻き毟られる。

「リューズさん……じゃないのか?」

 部屋の中に入り込む。――以前の記憶と違い、部屋の床には大穴が空いていることもなく、穴があったはずの地点にクリスタルが安置されている形だ。
 縦に長いクリスタルは、鉄製の土台によって支えられており、その器具だけは手入れを欠かされていないのか、廃墟も同然の施設の中にあって新品同様の輝きを放っていた。

 クリスタルの正面、立ち並ぶいくつかの机があり、それも以前の世界では破壊されて部屋の隅に転がっていたはずのものだと気付くことができた。
 照明のない部屋には以前同様、壁から淡い光を放出する苔がびっしり生じており、ある程度の視界は確保されている。
 壁際に散乱する工具、医療器具のようなものは健在で、記憶の中との差異を探しながらスバルは一つの結論を出す。それは、

「ここが、今から六日後までの間に壊されて、行われてた『何か』もわからなくされちまうってことだ」

 この場所を知られては都合の悪いものがいるのだ。
 そのものは今から『聖域』を大兎が襲うまでの数日の間に、この施設の重要な部分を破壊、破棄して闇に葬ろうとする。
 今回、スバルはそれに先んじてここに到達することができた。

「最有力なのは……やっぱり、ガーフィールだよな」

 今回のスバルの捜索自体、ガーフィールの不審な行動への違和感が発端だ。
 『聖域』を守ろうとする気概と、隠し切れないリューズへの親愛が見え隠れするガーフィールならば、スバルの知らない事実を理由に、それをすることが考えられる。
 単純に、ガーフィールぐらいの実力者でなくては、あの施設の破壊自体が難易度を極める、ということも理由に挙げられた。
 あとの問題があるとすれば――、

「ここがなんのための施設なのか、見当もつかないってことだ」

 破壊されていないのを幸いに、部屋の中を検めてるスバルだが、目立った収穫は今のところない。リューズ瓜二つの少女を閉じ込めたクリスタルも、固定されて部屋に安置されている以外、突出して気にかかる部分がないのだ。
 部屋の奥、立ち並ぶ机の向こう側の壁に目をやれば、以前スバルが匍匐前進して通り抜けた排気用ダクトが見える。その先、進めば入ってきた待合室に出るはずだが。

「……今さらだけど、部屋の間取りがおかしい、か? このでかい部屋と待合室だけってのは、いくらなんでも」

 外観から察せられる施設の大きさと、中の部屋の配置が一致しない。
 頭に思い描いた施設の地図と外観をトレースし、スバルはぼんやりとではあるが違和感を察する。――部屋が丸々一室、隠せるほどのスペースがどこかに余っている。

 部屋を横切り、スバルはダクト用の開閉扉の壁の前に立つと、ぺたぺたと壁の感触を確かめる。苔に覆われた壁面の触り心地は草というより獣の体毛の感触に近い。
 叩いてみても音が反響しない点など、照明としての役割以外にも役立っているらしい。位置的に、謎の空間があるとすればこの壁の向こうだが。

「匍匐した距離を考えると、この部屋の半分ぐらいのサイズの部屋があるはずだ。壁が回転式でなもなけりゃ、こっちからいけそうにないけど……」

 そうなると、可能性があるのは待合室の方になるだろうか。
 前回、それぞれの部屋を隅々まで調べる心の余裕などなかったスバルだ。狭い待合室の中、隠し部屋の痕跡を探す余力などあったはずもない。
 クリスタルの中の少女のことを気にしながらも、スバルはまず待合室の方から調べなくては――と、振り返る。

「――――」

 直後、振り返ったスバルと、部屋の中に入り込んでいた人物との目が合った。

「……ぁ?」

「――――」

 感情のない目と目が合って、スバルは思わず声を漏らした。
 そんなスバルを、丸い瞳でじっと見つめる人影――薄い赤の髪を長く伸ばし、ぶかぶかの白い布切れを体に巻くだけの少女だ。
 リューズそっくりの人物だが、見知ったあの女性とは感じられる雰囲気が違う。否、伝わってくる雰囲気というものが存在しない。
 まるで空気のように、ただそこに突っ立っているのだ。つまり、

「ぁ、リューズさんの……」

 クローン、という単語が脳裏を掠めて、スバルは目の前の少女をどう呼ぶべきか躊躇した。クローンというのも、そもそもスバルの想像上の名義でしかない。実際に少女の素姓が明らかになっていない現状で、そう呼称することは心が咎めた。

「かといって……」

 他に、少女をなんと呼べばいいのかもわからず、口ごもってしまう。
 そうして言葉を見失うスバルを視界に入れながら、少女は静かに立ち尽くしている。表情は動かず、呼吸すらしているか疑わしい静の存在だ。

 声をかけるのを躊躇うスバルに、声をかけられるのを待っている人形。
 ――立ち尽くす少女がそんな風に見えて、スバルは意を決して口を開く。

「お前……いや、君? 俺の言葉がわかるか?」

「――――」

「名前は? ここになにしにきたのか聞いても? そもそも、ここはなんなんだ?」

「――――」

「……『聖域』、ガーフィール、リューズ。このあたりの単語に聞き覚えは?」

「――――」

 三つの問いかけには三つの静寂。
 質問のいずれかで表情の一つでも変われば、と思ったのだが、どの問いかけに対しても少女の表情はぴくりとも動かない。表情筋そのものが機能していないかのようだ。

 暖簾に腕押し――途方に暮れてしまうスバル。
 と、頭を乱暴に掻いてため息をこぼすスバルの前で、ふいに少女が動いた。

「……?」

 とっさに身構えかけたが、動き出す少女の足取りはゆるやかだ。
 スバルが入ってきたのと同じ、待合室側の扉からやってきた少女は部屋の中に踏み込み、ゆったりとした歩速で部屋の中央――クリスタルの前へ。

 水晶の中に閉じ込められた少女と、歩み寄る少女はやはり瓜二つだ。
 目覚めることのない眠りの中にある少女の前で、自由の身である側の少女は腰を折り、クリスタルを支える土台の下部へ手を伸ばす。

「――――」

 音を立てて土台の一部が外されて、目を丸くするスバル。どうやら土台の下部は開閉式の扉になっていたようで、空洞の中になにかを収納していたらしい。
 しゃがみ込んで作業する少女の体で、その内側が見えずにスバルは首を伸ばす。位置を変えて、その土台の中身を確認しようと足を踏み出し、

「――うっ!」

 ふいに鼻孔を貫いた、強烈な悪臭に顔を押さえてスバルはのけぞっていた。

 刺激臭が鼻の粘膜を侵し、嗅覚に感じるものは刺激というより痛みに近い。涙目になってえずき、胃の中身が込み上げるほどの圧迫感にスバルは震えた。
 悪臭――嗅いだ記憶のあるそれは、以前にこの施設の内部に漂っていた腐臭そのものに相違ない。化学薬品をぶちまけたような、人体に有害な物質を孕んでいることを疑わせる類の臭気だ。
 あれは確か、崩落したこの部屋の地下から漂っていたものと思っていたが、

「実際は、あの土台の中から……つまり、あのクリスタル周りの環境か」

 鼻に手を当てて、結論を出すスバルは涙目のまま場所を移動。
 目に沁みる錯覚すらある臭気が漂う中を、顔色一つ変えずに作業を続けている少女に内心で戦慄。それからそっと、横から彼女の手元を覗き込んで、目を見開いた。

 ――少女の手が土台の中でいじくり回しているのは、不可思議な紋様の刻まれた内装部分と、その各所に取り付けられていた魔鉱石だった。

 魔鉱石はその内に溜め込んだマナを吐き出しながら淡く光っているが、一部にはその中身を枯渇させたのか光を失っているものがある。少女はそれを丁寧に外し、代わりの魔鉱石を土台の中のストックからはめ直しているのだ。

 複雑な紋様を見ながら、スバルはそれも以前のループの渦中で、この施設内で目撃したものであったことを思い出す。
 魔方陣――異世界ファンタジーものではありがちでお約束な技術だが、とんとこの世界では見かけてこなかったものだ。それだけに印象深く、なんの効果があるものなのかと疑問に思ってはいたのだが。

「魔鉱石とこうして繋がってるところを見ると……機械とかの回路とか、そんな感じのイメージになるな。魔方陣が機械仕掛けの部分で、魔鉱石が電池とかのエネルギー部分って考えると……」

 そうしてイメージしてみると、そうとしか思えなくなるから不思議だ。
 魔法科学、あるいは魔科学とでも呼ぶべき技術だろうか。

 首をひねるスバルの前で、少女が作業を終えたらしく、使用済みとなった魔鉱石を取り出し、開閉扉を閉める。
 そして数秒の間をおいて、スバルは肌にざわめく感覚があるのに気付いた。

 ――大気が、小さく細かく、震動している。

「これって……魔法を使ったときの」

 大規模な威力の魔法――白鯨との戦いや、ペテルギウス戦でのユリウスのネクトが発動したときのものに近い感覚だった。
 おそらく、大気中のマナに何らかの干渉があったことで、それに応じるマナの動きを肉体が敏感に察しているのだ。
 今回の場合、マナが何に反応しているのか、考えるまでもない。

 眼前で、クリスタルの淡い輝きが急激に光を増していくのをスバルは見た。
 透明な青ではあったが、薄暗い部屋の中で暗調であったクリスタルの輝きが増し、中にいる少女の体もいっそう鮮明になる。
 土台の内側にあった魔方陣が、クリスタルを支えている上部にも発生し、青白い光が眩く部屋の中を照らし出した。

「……セーブポイント」

 思わずこぼれたスバルの呟きを、現代世界の住人ならば誰が咎められようか。
 魔方陣の上に設置されたクリスタル。青い輝きを放ちながら、部屋を明るく照らすそれはまさしく、スバルにとっては慣れ親しんだゲームの中で見るセーブポイントそのものだ。

 視覚的にこれだけ鮮やかな演出にも拘わらず、ひたすら無音で行われたことがかえってその神秘性を増しているようで、息を呑むスバルは感想を口にすることもできない。
 ただ、そうして圧巻の光景を前に硬直するスバルを、

「――――」

 さらっと無視して、魔鉱石の交換を終えた少女が部屋の外へと足を向ける。なお、交換して吸殻となった魔鉱石は、そのへんに投げ捨てられている安定の雑な廃棄。
 足音もささやかに立ち去ろうとする背中に気付き、スバルは慌ててその肩に手を伸ばした。

「おい、ちょっと待って……お、触れた」

「――――」

 あまりに薄弱な生命感と存在感に、スバルは伸ばした手がすり抜けることすら予想していたが、幸いにも指先は少女の肩をしっかり掴み、その足を止めることに成功していた。
 一瞬、『嫉妬』の魔女との相対時、触れた先から爆裂した少女の同類のことを思い出して、警戒心が首をもたげたが、

「――――」

 静かな目つきでスバルを見つめ返す少女に、少なくとも弾け飛ぶ兆候はない。
 そのことに安堵しつつ、スバルは消えてなくならない少女を真っ向から見つめ返した。

「作業の邪魔して悪かったけど、問いかけの続きだ。今度はなるたけ無視してくれんなよ。俺も色々と、余裕がないとこなんでな」

「――――」

「今、ここで何をしてたんだ? どうしてこのクリスタルを光らせた? ここに入ってる女の子のことを、君は知ってるのか?」

「――――」

 暖簾に腕押しのリテイクだ。
 スバルが何度問いかけを繰り返しても、少女から戻ってくるのは沈黙と視線のみ。回答を拒否しているのではなく、そもそも選択肢を持っていないようにすら思える。
 少女に抱いた、『人形』という印象もあながち否定できないところだ。

「せめて、はいかいいえなりで応じてくれる程度にコミュニケーションがとれればやりようもあるってのに……」

 現状ではそれすらままならない。
 手を離せばそのまま立ち去ってしまいそうな少女を捕まえたまま、スバルは首をめぐらせて視線をクリスタルの方へ。
 眩いばかりの光を放ち続ける水晶、中の少女の様子は依然変わっていないが、明るくなったことではっきりとわかったことがある。

 呼吸も鼓動も、血のめぐりも当然ない。
 ――水晶の中に閉じ込められた少女の体は、生命活動を止めてしまっている。

「……仮死状態、ってのは楽観的すぎるか」

 氷漬けになった肉体を温め直せば、それで蘇生するというほど簡単なものではない。ましてや、この少女の場合は肉体を結晶化されている。
 解放はそれこそ、夢のまた夢だろう。

「また、無力なのか、俺は……」

 堪え難い無力感に打ちのめされながら、スバルはクリスタルの表面に指で触れる。
 指先から伝わる冷たい感触、それが常に少女を蝕んでいる事実と、それを感じることすらない彼女の状態に、安堵と憤りのどちらを覚えればいいのかわからない。
 と、そんな感傷が胸を掠めたときだ。

「――え?」

 触れた指先から伝わる冷たさが、ふいに熱となってスバルの腕を伝い、全身を駆け巡った。

「――お、ぉ、あっ!?」

 最初は温もりに感じられたものが、即座に炎の熱さとなって全身を炙る。
 体の内側を炎の指先でなぞられるような感覚に、スバルはその場で苦鳴を上げながらのたうち回った。

 熱さが息苦しさを生み、叫びが部屋の中に反響する。
 地面の汚れを気にする余裕もなく、スバルは床の上に四肢を投げ出して倒れた。痙攣しながら、明滅する視界――そして、

「――ふ、ぅ?」

 唐突に、いつ終わるともしれない地獄の時間が終わりを告げた。
 荒れ狂っていた熱は急速にその火の勢いをひそめ、スバルの体は苦痛の嵐の中から突然に解放される。

「……い、いったい、なにが」

 横たわっていた体を起こし、手足の調子を確かめながらスバルは呟く。
 今しがたの苦痛と、その唐突な幕引き。原因もわからなければ経過も結果もわからないそれが残したのは、疑問と痛みの記憶だけだ。

「なんとも、ない。けど、なんともないならそれこそなんのために」

 クリスタルに触れた直後、やってきた苦痛だ。
 原因はおそらく、クリスタルを中心とした魔科学装置。ひょっとすると動力部に触れて感電、それに近い事態に陥っていたのかもしれない。
 と、そこまで考えたところで、スバルは自分が痛みにかまけて、リューズ似の少女のことをすっかり意識から手放していたことを思い出した。

「しまっ……」

「――――」

 慌てて立ち上がろうとするスバルだったが、顔を上げた先に変わらず少女がいるのを見て、安堵に緊張感がゆるんだ。そして、そのゆるんだ緊張感の前で、

「――――」

 ――少女がうやうやしく、その場に膝をついて頭を垂れるのを見た。


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 頭を下げて、膝をつく少女の姿にスバルは困惑する。
 見間違いでなければ、その仕草、その姿勢が、眼前にいるスバルに対する敬意を表し、服従する態度にしか見えなかったからだ。

「突然、なんのつもりなんだ?」

 ここまで、スバルの言に耳を貸さないばかりだった相手の態度の豹変に、スバルは驚きよりも先に疑念と警戒が先立つ。
 そうして身構える程度には、スバルと少女の間の関係の溝は深い。互いの素性もなにも交換していない状態だ。それでこの立ち位置、疑わずにいれようか。

「――――」

 警戒するスバルの前で、膝を折っていた少女が立ち上がる。
 それから彼女は少し視線を上に向け、スバルの頭の向こう側へ目を向ける。つられてそちらを見るが、視線の先に何かがあったりはしない。
 どうやら今のは、考え事をするためになんとなしに空を見る、といった仕草の一部だったようだ。スバルが首を元に戻す。すると、

「うお!?」

「――――」

 すぐ目の前、再び息のかかる距離に少女の姿があり、スバルはのけぞる。が、のけぞったスバルの腕を伸びてきた少女の手が取り、

「……? ついてこいって?」

「――――」

 無言のまま、袖を引く少女がスバルを連れ出そうとするアクション。
 問いかけに無言で頷かれて、スバルは立ち止まったまま思案顔。

 ここまで頑なに口を利かないということは、ひょっとするとこの少女は喋ることができないのかもしれない。それでも、スバルの問いかけの意味は察しているらしい。つまり、スバルを連れ出そうとするのは、スバルとの交渉に何らかの形で応じる意思があると考えるべきではないだろうか。

「虎穴に入らずんば虎児を得ず、だな」

「――――」

「こっちの話だ。――よし、案内してくれ。ついていくよ」

 スバルが頷き返し、少女についていく意思を示すと、袖を引く少女が歩き始める。その足に続きながら、スバルは最後にもう一度だけクリスタルを振り返る。
 ――変わらず、青白い輝きの中、少女は眠りについたままだった。

 袖を引かれたまま部屋を出て、施設の通路を抜けて待合室へ。そのまま、先を行く少女はスバルを連れて施設の外へと出ようとする。

「中じゃ、ないのか。外に出るのはいいんだが……」

 『聖域』の方まで顔を出すことになると、スバルが施設の中に忍び込んだことがばれてしまう。もちろん、咎められるようなことはしていないと開き直ることもできるが、ガーフィールとの関係上、今回はそれは望ましくない。
 少女の足が『聖域』へ向かい始めたらどうするか、スバルがそんな考え事に煩悶としていると、

「――なんじゃ、ずいぶんと難しい顔をしとるの、スー坊」

「……おいおい、このタイミングかよ」

 施設の外に踏み出して、外気にさらされたところで声をかけられた。
 その声の方へ目を向けて、見つけた人物にスバルは唇をゆるめた。それが安堵によるものか、それ以外の要因があってのものかはわからないが、

「色々と話したいこともあると思うが、まずは場所を変えんといかんじゃろうな」

「ああ、そうしようぜ。ホント、積もる話が多すぎるよ」

 同意を示して肩をすくめるスバル。
 そんなスバルが、彼女にはどんな風に映るのだろうか。

 ――自分と瓜二つの少女と並び立つスバルの姿が、月明かりを背に受けるオリジナルのリューズには、いったいどんな風に。

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