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Re:ゼロから始める異世界生活 作者:鼠色猫/長月達平

第一章 怒涛の一日目

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第一章18 『盗品蔵の攻防』

 うぐ、と思わず息が詰まったのを見られて、スバルは己の失策を悟る。
 ここでこそ、さっきまでのような軽口が発動すべきだったというのに、弱味をわざわざ見せるような真似はコミュ能力の低さの賜物だ。

 交渉事において、弱味を握られるほど優位性を失うものはない。
 結果、スバルの選んだ沈黙にフェルトはほんのわずかに口の端をゆるめた。

「アタシに依頼してきた姉さんも話したがらなかったけど、兄ちゃんもそーだな?」

「……そもそも、盗み自体がいかがわしい話なんだから、後ろ暗い理由があるのは誰でも一緒だと思うんですがー」

「でも、特にアンタは後ろ暗いわけだ。ま、落ち着いて考えてみりゃー、盗みを依頼された品物を横からかすめ取ろうってんだしな」

 獲物をなぶる猫のような残酷さで、フェルトはスバルの至らなさを攻め立てる。
 彼女は嗜虐的な笑みを浮かべたまま、押し黙るスバルを突き放し、

「この徽章は、なんだ? 実はこいつには、この見た目以上の価値があるんだ。だから欲しがるんだろ? それはつまり、魔法器以上の金になる価値ってことだ」

「待て、フェルト。お前、その考えはマジに危ないぞ。話の流れ的に何を言い出すのかだいたい予想がつくのがゲーム脳でアレだけど……それはマジにやめとけ」

 フェルトの守銭奴ゲージが上がるのを見て、スバルは冷や汗を浮かべながらも制止する。このままだと、彼女の釣り上げは限度を知らずに上がるだろう。
 そうなった場合、交渉が長引き、待ち構えているのはBADENDの運命だ。

「聖金貨二十枚以上、その価値で手ぇ打っとけ! それ以上は欲しがるな! エル……お前に依頼した奴だって、聖金貨二十枚が限度だ! それ以上は出してこない!」

「なんでアンタがそれを知ってんだよ」

「あ……」

「語るに落ちてるぜ。――関係者だってな」

 『死に戻り』があるから知っているだけだ、と言い張れればどれほど楽か。
 だが、実際にその説明をしたとしても、信じてもらえる要素がない。

 疑いの目を深めるフェルトにとって、もはやスバルの言葉は対案なくして信じられる価値はないのだろう。
 こうなってはいっそ、力ずくで彼女から徽章を奪い取るしかないが、

「それには、こっちの筋肉ジジイが邪魔だ……」

「いいようにやられとるのぅ、小僧っ子。年下の小娘に情けない」

「あんたの手ほどきの所為だろ、これ。手強すぎて泣きそうだ」

 暴力沙汰に持ち込めば、ロム爺に叩き伏せられるのがオチだ。
 仮に奪い取るのに成功したとしても、かけっこでフェルトに勝てると思えない。長距離走になった時点で、スバルの戦闘力は学年でも下から数えた方が早いのだ。
 それ以外の能力で学年トップ3をいくつも持っていても、長距離走のブービーっぷりでA判定を逃すのが通例、そのレベル。

「フェルト、頼む……」

「お願いされてもダメだ。アンタを交渉相手としては認めるよ。でも、相手方の意見も聞かなきゃフェアじゃねーだろ? これの価値を話して、相応の対価を用意するなら話は別だけど」

 問い詰める瞳には微塵の容赦も慈悲もない。
 少女の双眸はスバルの態度から、真実を掴み取ろうと懸命な様子だ。だが、事実としてスバルを監視していても徽章の価値は知れない。
 スバルが徽章を欲する理由はエルザのそれと違い、ただの恩義に関わるものだ。
 それ以上は宝石のはめられた徽章、といった外観の内容しかわからず、フェルトの知識と大きな差はない。

 故に、スバルはフェルトの求める答えを差し出すことはできないのだ。

「俺がそれを欲しがるのは……元の持ち主に返したいからだ」

「――は?」

 だからポロリと、本音をこぼすのがスバルの持てる誠意の全てだった。

「俺はそれを持ち主に返したい。だから徽章を欲しがってる。それだけだ」

 目を見開くフェルトに対して、スバルは顔を上げて同じ言葉を告げる。
 紅の双眸が敵意をはらんで威嚇してくるが、スバルはそれを受け止めた上で押し黙っているしかできない。
 悪ふざけをする余裕もなく、誠意を込めて膝をつき、頭を下げるだけだ。

「……フェルト。どうもこの小僧、嘘をついてるようには見えんが」

「ロム爺までほだされんなよ。冗談に決まってんだろ? 持ち主に返す? 大金まで払って盗んだ相手から買い戻してかよ? 馬鹿馬鹿しい。衛兵のひとりでも連れてきて、アタシをとっ捕まえちまえばそれで済む話じゃねーか」

 それはできない相談だ。
 偽サテラはこの件に、衛兵が関わることを是としていない。
 故に、協力を申し出るラインハルトの好意すら断ったのだ。

 それが彼女の不利益につながるのであれば、スバルにはそれをすることはできない。
 それだけがスバルにできる誠意であり、命を救われた恩義への答えなのだ。

「つくならもっとマシな嘘をつけよ。真剣なふりしても騙されねーよ。そうじゃなきゃ、アタシは……そうさ。アタシは騙されない」

「フェルト……」

 なにかを振り切るように、フェルトは絞るような掠れた声を出す。
 気遣わしげなロム爺は彼女の胸中を知っているのか、その表情は痛ましげだ。

 ただ、その頑なな態度がフェルトの心変わりを固く禁じているのがわかる。
 つまり交渉は、失敗に終わったということだ。

「――誰だ」

 ロム爺がその表情を変えて、盗品蔵の入口を睨んだのはそのときだ。

 膝をつき、頭を下げていたスバルは交渉が決裂したショックで呆然としていた。
 それ故に、今一歩、思考がその答えに達するのが遅れる。

 鋭いノックの音が何度か続き、沈黙にロム爺が振り返る。
 その視線を受けて頷いたのはフェルトだ。彼女は自分を指差し、

「アタシの客かもしれねー。まだ早い気がするけど」

 言いながら扉の方へ向かい、まだ怒気の冷めやらない顔のまま戸に手をかける。
 その背中を見つめていて、スバルは急速に込み上げてきた焦燥感に気付く。

 盗品蔵、ノック、フェルトの客――それらが符合し、導き出される答えはひとつ。

「――開けるな! 殺されるぞ!!」

 予定より早い。窓からわずかに差し込む日の光はまだやや高く、橙色に染まり始めてこそいるが日没というには輝きが強すぎる。
 一回目の世界でも、二回目の世界でも、絶望は日没のあとにやってきた。

 まだ時間はあると、高を括っていたわけではない。
 そんなわけではなかったが、まだ早すぎる。

 ――まだ何ひとつ、世界を変える条件を満たしていないというのに。

 そんなスバルの悲壮感に満ちた叫びもむなしく、制止の声は戸を開けるフェルトの動きを躊躇させることはできなかった。
 扉が開かれて、夕焼け色の光が盗品蔵の薄闇をぼんやりと淡く振り払う。

 そして、

「――殺すとか、そんなおっかないこと、いきなりしないわよ」

 仏頂面で唇を尖らせて、銀髪の少女が蔵の中へと足を踏み入れていた。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「よかった、いてくれて。……今度は逃がさないから」

 踏み込んできた銀髪の少女――偽サテラの姿に、フェルトが声もなく後ずさる。
 下がる彼女の表情は悔しげで、忌々しさに唇を歪めながら、

「ホントに、しつっこい女だな、アンタ」

「盗人猛々しいとはこのことね。神妙にすれば、痛い思いはしなくて済むわ」

 歯ぎしりしそうなフェルトに対し、偽サテラの声の温度はひどく冷たい。
 実際、部屋の気温が急速に下がり始めているのを感じ取り、スバルは変わりつつある室内の雰囲気に思わず身震いを堪えられなかった。

 ――どうして、ここに偽サテラが!?

 時刻はまだ夕方に差し掛かった頃合いで、スバルの体験からいえばまだ貧民街の入口にすら辿り着けていないぐらいの時間のはずだ。
 そこから聞き込みを初めて、さらに二時間近く。それでようやく盗品蔵へ到着するのが一回目のルートだったというのに。

「ってことはアレか。俺がいなければこんだけ早く辿り着くってことか」

 路地裏でのスバルの治療イベントがなければ、彼女は自力でここまで辿り着くのだ。それもこれだけの速さで。
 時空を超えて自分の役立たずぶりが証明され、なんとも言えない気分になる。

 そんなむなしさを覚えるスバルを置き去りに、事態は刻々と進行している。
 後ずさるフェルトはすでに部屋の中央から奥側へと移動し、偽サテラは自然な動きで扉への道を塞ぎながら掌をこちらへ向ける。
 かすかに空気がひび割れる音が鳴るのは、彼女の掌を起点に魔法が展開しているのが原因だ。得意魔法が氷系統なのか、宙に氷柱が生み出されるに従って室温が低下していく。

「私からの要求はひとつ。――徽章を返して。あれは大切なものなの」

 宙を浮く氷柱の数は六本。先端が丸く潰されていて、威力は鋭さより重さを重視している。が、命中すれば飛礫と比較にならない打撃があるのは間違いない。
 自然、その標的に自分が入っていることに冷や汗をかきつつ、スバルは下手を打たないように無言で彼女たちのやり取りを眺めているしかない。

「……ロム爺」

「動けん。厄介事を厄介な相手ごと持ち込んでくれたもんじゃな、フェルト」

 静かな呼びかけに、しかし巨体を緊張させるロム爺は首を横に振って答える。
 その手の中にはいつの間にか、見知った棍棒が出現していたが、それを握りしめる豪腕はどこか頼りない。迷うように、戸惑うように、握り手を開いては閉じてを繰り返していた。

「ケンカやる前から負けなんて認めんのかよ?」

「ただの魔法使い相手なら儂も引いたりせんがな……この相手はマズイ」

 挑発的なフェルトをたしなめるロム爺。
 彼はその灰色の瞳でわずかに細めて、氷柱を展開する偽サテラを見やる。
 彼女を見下ろす双眸――そこに浮かぶのは強い警戒と、それを上回る畏敬だった。

「お嬢ちゃん。……あんた、エルフじゃろう」

 唇を震わせてのロム爺の問いかけ、スバルは思わず顔を上げて反応してしまう。
 エルフ、というのはこの手のファンタジーもので欠かせない種族のひとつだ。
 耳が長く、長命で、そして美しい。

 ロム爺の問いに偽サテラはしばし瞑目、それから小さく吐息して、

「正しくは違う。――私がエルフなのは、半分だけだから」

 痛みを告白するような口ぶりに、スバルは痛ましさを感じて眉をひそめる。
 だが、彼女の告白に大きく反応したのは残りの二人だ。
 特にフェルトの反応は顕著なもので、彼女は大きく身じろぎしながら下がり、

「ハーフエルフ……それも、銀髪!? まさか……」

「他人の空似よ! ……私だって、迷惑してる」

 スバルにはわからないやり取りだったが、それがどれほど偽サテラにとって不本意なやり取りなのかはいくらか伝わってくる。
 事情のわからない否定を受けて、しかしフェルトの表情は和らがない。

 それどころか、彼女はこの場において黙り込んでいるスバルの方を見ると、その赤い双眸に厳しい敵意を浮かべて睨みつけてきた。
 当惑に顔を強張らせるスバルに、フェルトは自嘲気味に笑うと、

「兄ちゃん。さてはまんまとアタシをはめたな?」

「なに?」

「持ち主に返す、とか言いやがるから怪しいとは思ってたんだ。路地の連中に横入りさせなかったのも作戦だろ? グルだったんじゃねーか」

 怨嗟すら込められた追及に、スバルは誤解が生じていると気付く。
 が、その一方で、偽サテラがこの短時間でここまで辿り着けた事情に関する考察もまた一部出来上がる。
 やはり本来、偽サテラがこの時間にここに到着することはあり得ないのだ。そう、本来ならばフェルトに雇われた貧民街の面々の邪魔があり、到着が遅れるはずなのだ。
 それが今回はスバルの邪魔によって発生せず、偽サテラがこのタイミングでここに登場することになった。

 因果関係的にはスバルの影響の大きい話であり、フェルトの怒りも見当違いというほどではない。実際、状況はスバルの望む方へ傾きつつあるのだ。

 このまま決定打がフェルトとロム爺の手になければ、徽章は武力交渉によって偽サテラの手元に戻らざるを得ない。
 本音を言えば徽章を取り戻し、彼女に手渡すのはスバル自身でありたいところだが、結果的に彼女の手に戻るのならば贅沢は言えない。
 この流れのまま押し切られれば次善の策と言えるだろう。しかし、

「……? どういうこと? あなたたち、仲間なんじゃないの?」

 フェルトとスバルの仲違いを見て、偽サテラがそれに反応してしまう。
 困惑している偽サテラに、フェルトは鼻で笑うような態度で「ハッ」と息を吐き、

「小芝居すんなよ。追い詰められてんのはこっちだ。堂々と徽章を取り返して、アタシの間抜けさでも笑うといいじゃねーか」

「卑屈すぎんだろ、それ。形勢ちょっと不利なぐらいで大げさな」

「この状況に持ち込んどいてそれ言うかよ。あーあ、クソ。騙された!」

 金髪を掻き回し、悔しげにうなり声を上げるフェルト。
 その乙女っぽさ皆無の態度を見ながら、さらに眉間の皺を深める偽サテラ。
 彼女らの微妙にすれ違ったやり取りを見やりながら、スバルは手を叩いて間に入り、

「まあまあ、ややこしくなるからもういいじゃねぇか。フェルトは徽章を返してやれよ。そんでサテ……君は早くこっから出ていく。もう盗られたりしないようにな」

「なんで親身になってくれてるのかわからなくて釈然としないんだけど」

「納得いかねーのはアタシも一緒だよ。兄さん、アンタ、何なんだよ?」

 うまく取り成してうやむやにする作戦は見事に失敗。
 逆に渦中の二人の注目を一身に集めて、集中砲火を浴びる裏目に出た。
 説明の難しさに助けを求めてロム爺を見るが、彼は太い腕を組んで、

「魔法でなく、精霊術が相手じゃ。滅多なことでは動けんよ」

 と、こちらの意図とは違う考えでもって援軍を拒んできた。
 さりげなく新単語が出現していたのも気にかかるが、女性陣二人からの視線に鋭さにも耐えがたい。
 どうにかうまく逃げ道を――と、ちらりと扉を見たときだ。


 ――滑るように黒い影がそっと、銀髪の少女の背後へと忍び寄っていた。


「――パック! 防げ!!」

 嫣然とした微笑みが室内の影を通り抜け、銀色のきらめきが白い首にのたくるような動きで飛びかかる。
 刹那のあと、見開くスバルの目の前で少女の首がはね飛ばされて吹き飛ぶ――それが本来ならば、起こり得た未来だっただろう。

 ――快音。
 それは鋼が骨を断つ音ではなく、鋼がガラスを割るような響きでもって鼓膜を震わせた。

 わずかに身を伏せる偽サテラの後頭部、そこに淡く青に輝く魔法陣が展開。
 それが叩きつけられる刃を正面から受け止め、凶刃からその白いうなじを完全に守り通していた。

「パック……っ」

「間一髪だったね、まさに」

 身を前に飛ばして振り返る偽サテラ。
 彼女の動きに遅れて従う長い銀髪、その肩口から覗くのは灰色の体毛の小動物だ。
 ピンクの鼻を得意げにふふんと鳴らし、パックはその黒い瞳でちらりとスバルを見ると、

「なかなかどうして、紙一重のタイミングだったね。助かったよ」

「助かったのはこっちだ。あんがとよ」

 親指を立てるような仕草に対して、こちらも弱々しいサムズアップ。
 日没前の偽サテラの出現――それはとりもなおさず、彼女の心強いバックアップの勤務時間中であるということでもある。
 とっさに声に出たとはいえ、予想以上のパフォーマンスで彼女の身は守られた。

 そして、まんまと奇襲を防がれた形になった襲撃者は、

「――精霊、精霊ね。ふふふ、素敵。精霊はまだ、殺したことがなかったから」

 ククリナイフを顔の前に持ち上げて、恍惚を浮かべるのは見慣れた殺人鬼――エルザだった。
 その唐突な出現に警戒するスバルと偽サテラ。しかし、彼女に対してアクションを起こしたのはどちらでもなかった。

「おい、どーいうことだよ!」

 叫び、前に踏み出して怒声を張り上げるのはフェルトだ。
 彼女はエルザに指を突きつけて、自分の持つ徽章を懐から取り出すと、

「徽章を買い取るのがアンタの仕事だったはずだ。ここを血の海にしようってんなら、話が違うじゃねーか!」

「盗んだ徽章を、買い取るのがお仕事。持ち主まで持ってこられては商談なんてとてもとても。だから予定を変更することにしたのよ」

 怒りに顔を赤くしていたフェルトが、その殺意に濡れた瞳に見つめられて思わず下がる。そんなフェルトの恐怖を、エルザは愛おしげに見下して、

「この場にいる、関係者は皆殺し。徽章はその上で回収することにするわ」

 慈母の微笑みのまま、酷薄に告げて彼女は首を傾け、

「――あなたは仕事をまっとうできなかった。切り捨てられても仕方がない」

「――――ッ」

 フェルトの表情が苦痛に歪んだのは、恐怖ではない別の感情に見えた。
 それがいかなる彼女の琴線に触れたのかはわからない。わからなかったが、

「てめぇ、ふざけんなよ――!!」

 実力差も忘れて怒鳴りかかるくらい、スバルを怒らせる原因にはなった。

 驚いたようにスバルを見るエルザ。フェルトやロム爺、偽サテラも例外ではない。だが一番驚いているのは誰でもない。スバル自身だった。
 自分でも、なんでこんなに怒り狂っているのか原因がわからない。
 わからないから、込み上げてくる感情に任せて、全部吐き出すことにした。

「こんな小さいガキ、いじめて楽しんでんじゃねぇよ! 腸大好きのサディスティック女が!! そもそも出現が唐突すぎんだよ、外でタイミング待ってたのか!? うまくいくかもとかぬか喜びさせやがって、超恐いんだよマジ会いたくねぇんだよ! 俺がどんだけ痛くて泣きそうな思いしたと思ってやがんだ! 刃物でブッスリやられるたんびに小金貰ってたら今頃俺は億万長者だ! それは言い過ぎた!」

「……なにを言ってるの、あなた」

「テンションと怒りゲージMAXでなにが言いてぇのか自分でもわかんなくなってきてんだよ! そんなお日柄ですが皆様いかがお過ごしでしょうかチャンネルはそのままでどうぞ!」

 意味不明なスバルの怒声に、エルザが珍しく呆れたような小さく吐息。
 そんな彼女の態度に微妙に傷付きつつ、スバルは唾を飛ばした勢いのままに、

「時間稼ぎ終了――やっちまえ、パック!!」

「見事な無様さだったね。――ご期待に応えるよ」

 地面を踏み鳴らすスバルに飄々とした声が応じて、エルザが顔を上げる。
 立ち尽くす彼女の周囲、全方位を囲むのは先端を尖らせた氷柱――それが二十本以上。

「まだ自己紹介もしてなかったね、お嬢さん。ボクの名前はパック。――名前だけでも覚えて逝ってね」

 直後、全方位からの氷柱による砲撃がエルザの全身に叩きつけられていた。
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