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ゲームのような異世界で、チートライフを楽しみたい! 作者:ラズベリーパイ

第3章

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“原初の魔族”

 現れた魔王ロリィは、元気が無い。
 どうしたのかと俺が思っていると、そこで俺がいるのに気づいたらしく、

「む? 何故こんな場所に? 家を追いだされたか?」
「……自分で逃げてきたんです。それよりも体調が悪そうですね、どうしたのですか?」

 それに深々とロリィがため息を付いて、

「今日はうどんを沢山食べるために昨日から何も食べていないのだ」

 どうやら鈴のうどんが楽しみで、食事を抜いたらしい。
 そこまでの魅力が鈴のうどんにあるのかと俺はある種の職人技的な何かを感じ取ったが、人それぞれに好物があるのだからあまり関係ないのかもしれないと思った。
 と、そこで魔王ロリィが変な顔をした。

「……何だか変な気配がする。お主、また変なことに巻き込まれていないだろうな」
「……いやいや、何でまたとか言うんですか。俺はあれから特に何もありませんよ、リズさん達にも状況を話したりして、ギルドのイベントで宝箱を開いて手に入れた種が触手だったりしただけで」
「触手……よくあんな珍しいものを引き当てたな。確かに今世界にあるものをコピーして創りだすが、たまに世界の何処かにあるものをあの宝箱は転送するからな」
「そうなのですか?」
「うぬ、異界と近い遺跡の宝箱なので希に遺跡の物が転送されたりする場合があって……おそらくは触手の邪神様がたまたま遺跡にいたのだろう」

 そうロリィが説明するが、そこで俺は女神様が以前言っていたのを思い出す。
 男も女も容赦なく襲うと。
 しかも女の子だけ襲っていたらすでに神様になっていると。

 理屈としては納得できる気がしないでもないが、何かがおかしい気がする。
 第一、それでは男女ともに幸せにならない。
 だから邪神なのだろうが、

「……もうちょっと夢があってもいいと思うのだけれどな?」
「ん? 何がだ?」
「いえ、その触手の邪神が男女見境なく襲うのに」
「なるほど、私は男だけでいいと思うのだがな」

 あっさりといってのけたロリィに俺は、男性と女性の間にはやはり大きな壁があるらしいと痛感した。
 それは良いとして、先ほどの、

「変な気配とは? 俺、特に何もしていませんが」
「いや、何かと接触……いや、この気配は“持っている”だろうな。今までお前は、何の気配もしていなかったのだから。匂いもしないし」
「……そうですか?」

 試しに自分の手を鼻に近づけてみるがよく分からない。
 そもそも自分の体臭はそんなふうに簡単に気づくものだろうかという気もするが、確かちょっと前に同じようなことを言われた気がした。
 なのでちらりとそれを言ったマーヤを見ると、未だに美味しそうにうどんを食べている。

 やはりうどんにはこの世界の人間を魅了する何かがあるらしい。
 このまま本当に“うどん”的な意味で世界征服が行われてしまうのではないか、そんな予感が俺の中を駆け巡るが、そこで鈴がやってきて、

「天むす(天ぷらを具にしたおにぎり)できたよーって、ロリィちゃん、もしかして食べに来たの?」
「うむ、鈴のうどんは美味しいからな。ということで、月見うどんと、力うどんと、かき揚げうどん、たぬきうどん、きつねうどんを1つずつ」
「はーい。何時もありがとうね。……多めに作ったから、この天むすもどうぞ。マーヤちゃんと一緒に食べてね」

 そう言ってお盆に乗った握り飯……二十個ほどを俺は受け取って、俺達はマーヤの隣りに座ったのだった。






「このおむすびとやらは美味しいな。異界の食事がこんなに美味しいとは思わなんだ」

 天むすの魅力に取り憑かれたらしいロリィ。
 マーヤもうどんを汁も残さず平らげていたが、このおむすびは別腹のようだった。
 そしてこれも美味しいと思うのだが、それよりも俺は気になることが、

「それで、俺からするそのへんな気配ってなんなんですか?」
「? もしやお前、全然気づいていないのか? こんなに気配がするのに」
「……わかりません」
「うーむ、もしくは魔族だから分かるのか? そこな少女も分かるだろう?」

 そんな魔王ロリィの問いかけに、もう一人の幼女のマーヤが目を瞬かせて、

「うん、変」
「そうだ、変なのだ。だがこのお兄さんはそれが変だと分かっていないらしい」
「変態?」
「そうだな、完全変態なのかもしれない」

 気づけば幼女二人に俺は変態と言われていた。
 全くご褒美じゃない発言なのは、大人な俺なので我慢して、

「そ、それで、何の気配なのですか?」
「異界の気配だ」
「そうですか……俺がい世界から来たからでは?」
「……だからさっきから言っているように、お前からは何の匂いもしない“無臭”なのだ。それが女神様の加護の影響なのかは知らないが、なのに私達がいた世界の臭がするのだから、違和感があって当然だろう」
「まさか……この世界に進行しようとしていたあの?」
「そうだ。それで何か思い当たるものはないか?」

 ロリィが俺を問いつめるが思い当たる節はなくて、けれどそこで鈴が、

「うどんで来たよ、ロリィちゃん」
「!」

 その表情を見て俺は悟った。
 これから暫くロリィは俺の相手をしてくれないと。
 しかたがないので考えてみるが、思い当たる節がない俺は、さらなるヒントを求めて何の種族かわからない魔族のマーヤに、

「その匂いって、どんな感じなんだ?」

 それに天むすを食べていたマーヤが首を傾げて、

「懐かしい感じ?」
「昔いた場所の匂いと似ているから」
「……遺跡に昔はいたのか?」
「違う、草が茂る草原の一角。3つの月が空に浮かぶこことは違う不思議な場所。私は何故そこにいるのか分からなかったけれど、暫く歩いていたら、自分と同じようなモノが遠くて近い場所に感じたから、手を伸ばしたら……木々の中にいて、リズに拾われた」

 まるで物語を語るように告げたマーヤだが、少なくともこの世界に月は一つしかなかったので、どう反応したならいいのか分からないでいると、そこでロリィが驚いたようにマーヤを見ていた。
 何でだろうと俺が様子を見ていると、

「何故、お主はあちらの世界を知っている?」
「……」

 ロリィの口調が思いの外強かったからなのか、マーヤ人型を解いて、以前のトロトロの液体状の姿になってしまう。
 もしかしたならこの形態の方がマーヤは強いのかもしれないと思っていると、ロリィが更に目を丸くして、

「“原初の魔族”だと?」

 驚いたように、マーヤを見て告げたのだった。

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