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赤 い 波
作:凪沙 峻






東京都港区桜田門
鷲武秀介と伊達英章の二人は警視庁八階にある警視総監室にいた。総監室には警視庁刑事局長の高柳邦弘警視監も同席していた。
「クソッタレめ!。おれの面を見りゃ二人でブツクサ言いやがって!」
鷲武が空になった煙草の箱を握りつぶして怒鳴った。警視総監の薗村忠相が鷲武と高柳を見比べて渋い顔をしている。
「なぜキーを持ってこなかったと言っているのだ。子供に預けたままとは、きさまはいったい何を考えている!」
高柳が鷲武をにらんだ。顔に焦りの色が浮かんでいた。
 せっかくキーの行方をつかみながら、鷲武ともあろう男がそのまま置いてきたのだった。もしも制御ボックスを奪った相手に襲われでもしたら大変なことになる。キーを奪われるばかりではなく、伊達の妻や娘、それだけではない。御母衣村の住民まで皆殺しにされるかもしれないのだ。
いくら二百人の自衛隊が村を警備しているとはいえ、相手は重機関銃とサブマシンガンを使って十八人の警察官を皆殺しにしている。もしも村が襲われたらどうなるか。それがわからない鷲武ではないはずだ。
「なら、おまえが行って取り戻してこい。年端もゆかない女の子を締めあげてな…。それに、どうにも手におえんクソ女もいる」
鷲武は伊達が差し出した煙草にテーブルの上にあった卓上ライターで乱暴に火を付けた。伊達は鷲武の言葉を聞いて苦笑いした。
鷲武も出来ることならキーを持ち帰りたかった。あれが伊達の娘じゃなかったら、いや、フライパンで二度も自分の頭を殴り付けたクソ女の子供じゃなかったら、鷲武は問答無用に取り上げただろう。
 だがあの親子が相手ではそれも出来なかった。ましてや場所は御母衣村だ。いかに鷲武といえども、村のなかで子供からむりやりにキーを取り上げるわけにはゆかなかった。
 あのクソ女どころか、下手をすれば村の住民全部の反感をかいかねない。それに、鷲武はどうもあのクソ女と伊達の娘は苦手だった。
 まあ、あのクソ女なら置いてきた土産で何かあっても対処できるだろう。鷲武は心の中でそう思っていた。
 だが、そのことは今は口には出せない。出せば薗村や高柳が目くじらをたてるに決まっている。鷲武は苦虫を噛みつぶしたような表情で煙草を吸っていた。
「刑事局から、御母衣村にもう少し人員をだせんのか」
薗村が高柳に言った。
「伊達くんの家族にもしもの事があったら大変だ。奴らに尾行されなかったとは断言できんからな」
薗村が腕を組んだ。
「機捜(機動捜査隊)の中から絶対に信用できる刑事を十人ほどまわすか、伊達くんの家族をどこかに隔離するしか方法はないか…」
高柳がそう言って煙草の煙を天井に向かって吐き出した。
「それはだめです」
伊達が立ち上がった。
「なぜだ」
「村人がいます」
伊達は高柳に言った。
「わたしの家族を隔離するというのなら、村人も同じように隔離してください。もしも我々が尾行されているのなら、危険なのは村の人たちも同じはずです」
伊達が高柳と薗村を交互に見た。
「わかった…」
伊達の言葉に薗村が顔を上げた。
「心配するな。きみの家族と御母衣村の住民の安全はこのわたしが保障する。それに、わたしと高柳も御母衣村の年寄りたちには少々借りがあるしな…」
薗村は高柳と顔を見合わせて笑った。
高柳の脳裏に、車のタイヤの空気を抜き、すまなそうな顔をしていたトミという老女と、ナタやカマを手に持って村の入り口で待ち構えていた三十人ほどの年寄りたちの顔が浮かんだ。
 変わった年寄りたちだった。ヘソまがりで一匹狼の鷲武を村人たちは慕っていた。その村人たちを、薗村はなぜか放っておけないような気がした。
総監室のドアがノックされて制服の警察官が入ってきた。警察官は小さな箱を持っている。
「警務部の青田です。次長に命ぜられた品物を持ってまいりました」
巡査部長の階級章をつけた制服の警察官は、薗村に右手で敬礼をした。
「手数をかけてすまなかった。ここに置いてくれ」
鷲武に言われた警察官は、箱をテーブルに置いて敬礼をして出ていった。
「伊達、立って右手を顔の高さに上げろ」
鷲武がそう言って立ち上がった。
「なぜだ?」
「なぜでもいい。言われたとおりにしろ」
鷲武は右手で箱の封をしていたガムテープを剥いだ。
伊達は薗村の顔を見ながら立ち上がって右手を顔の横まで上げた。薗村も高柳も伊達を見て首を傾げている。
「だれが敬礼をしろといった。手のひらを正面に向けろ。きさまは宣誓のしかたも知らんのか」
鷲武は伊達が上げた右手を見て毒づいた。
 伊達はその言葉に苦笑いをしながら上げていた手のひらを正面に向けた。
「正義の名の元に、身を挺して日本国民を守ることを誓え」
鷲武は伊達をにらみながら言った。
「なに…?」
「面倒だから質問はするな。黙って誓うと言え!」
鷲武が伊達を睨んだ。
「わかった、誓うよ…」
右手を上げたまま伊達は言った。薗村も高柳も口を開けて鷲武と高柳を見つめている。   鷲武は箱に入っていた黒い皮表紙の警察バッヂを広げ、伊達の顔と見比べた。
 手帳は二〇〇二年から改良され、表に真鍮で作られた警察マークのバッチが貼られ、ポケットから出すとバッヂの重さで身分証明が正面に向き、向けられた相手が警察官の写真などを確認できるようになっている。アメリカの警察官が持っているものと同じだ。
「よし伊達英章。きさまは今、警視庁刑事局の刑事に任命された。階級はおれと同じ警視長だ。文句はないな」
鷲武はそう言うと、警察バッヂを伊達に投げ渡した。
「おい、鷲武くん…」
薗村が驚いた表情で椅子から立ち上がった。
「総監、文句はなしにしてくれ。税金で雇うデカが一人増えただけのことだ」
鷲武はそう言ってソファーに座った。
「おれが刑事に?…」
伊達は、箱の中の皮ケースに入った手錠と、腰に付けるホルスターに収められている自動拳銃を見つめた。拳銃はベレッタの十五発弾倉のM92だった。予備弾倉が三本と二十発の実弾の紙箱もふたつあった。
「そうだ。民間人の身分では、きさまに何かあったとき家族に申し訳がたたん。デカなら、たとえ殺されても殉職ということでカタがつく。それだけの理由だ」
鷲武は無表情でそう言った。
「拳銃はきさまの得意なのを選んだ。手錠の使い方は自分で覚えろ。官給品は絶対に無くすな。万が一無くしたときは、このおれがきさまを叩き殺してやる」
「わかった…。これが必要になるかどうかはわからないが、あんたに叩き殺されないように注意する」
伊達はそう言って腰の後ろに拳銃を付けた。バッヂを広げてみると伊達の顔写真が貼られ、所属と名前、階級がパソコンで印刷されている。
鷲武に連れられてここにきたとき、写真撮影室で顔写真を撮られたのを伊達は思い出した。警視庁という特殊な建物に入る民間人は顔写真を撮る決まりになっているのかと思ったが、まさか自分の警察バッヂを作るためとは想像もつかなかった。
「いくぞ」
鷲武は伊達に言った。
「どこへだ?」
伊達も立ち上がった。
「捜査だ。行く先は盛岡だ。高柳、必要経費を出せ。それと、御母衣村の伊達の家族あてに二億円振り込んでくれ。北海道のダメになった病院と精神的慰謝料だ」
鷲武の言葉に苦笑いした高柳が経理に電話をかけている。
「病院のことなら気にしなくていい。生活には困っていない」
伊達は電話をかけている高柳と鷲武を交互に見ながら言った。
「心配するな。刑事局の年間予算から見れば、二億なんてのはハナクソみたいなものだ。宝くじにでも当たったと思って黙ってもらっておけ」
鷲武はそう言いながらドアのほうに歩きだした。伊達も鷲武についていった。
「よろしく頼む」
薗村警視総監は、椅子に座ったまま後ろ姿の二人に言った。
「それから、伊達くん。ちょっと話がある」   薗村の言葉に伊達は立ち止まった。
 鷲武がかすかに鼻で笑って総監室を出ていった。
「なんでしょう」
伊達は薗村の机の前に立った。
「警視庁刑事局という組織は特殊だ。局長の高柳警視監を筆頭に、下は巡査部長までさまざまな刑事がいる。しかし、刑事局の捜査に階級は存在しない。一番下の巡査部長でも、いざ捜査となれば、地方の警察署長さえも指揮下に入れることが出来る。刑事局の刑事は検察検事と同じ権限を持っているのだ。だから、刑事局の事件解決率は百パーセントであるし、日本全国の警察署長も、刑事局の刑事となれば全面協力をする。きみもそうだ。あの鷲武が選んだのならばそれ相当の人間だと思っている。もちろん、わたしも高柳局長も異存はない。活躍を期待している。鷲武ときみの肩に世界の命運がかかっているのだ」
 薗村が伊達を見つめて言った。
「わかりました総監…」
伊達はそう答えて薗村と高柳を見つめた。
「我々に敬語は必要ない。それから、鷲武はあのとおりの男だが、人間性は悪くはない。捜査能力も刑事局ではずば抜けた男で、警視庁、いや日本国警察の切り札だ。色々と乱暴な面もあるが、多少気にさわっても、鷲武の鎖骨を折るのは、もうやめてもらいたい」
薗村の机の横に立っていた高柳がそう言って笑った。
「あれだけは余計でした。わたしも後悔しています」
伊達も笑った。
「では、鷲武が待っているだろうから行ってくれ。それから、今回きみたちの任務に関しては、いかなる事案が起きようとも、後始末は警視庁と政府がクリーニングをする。我々との連絡手段は、刑事局専用の秘話無線と警察署の有線電話が基本だ。携帯電話は盗聴の恐れがあるから使用禁止だ。当面は彼の指示で動いてくれ」
薗村の言葉に、伊達は軽く頭を下げて警視総監室を出た。
庁舎の玄関で鷲武が待っていた。
「薗村と高柳の、ありがたい話は終わったか」
鷲武が少し笑いながら吸っていた煙草を靴で消した。
「ああ、あんたのことを色々と聞かされた」
「どうせろくな事じゃあるまい」
「そうでもない…」
伊達は笑って鷲武の横顔を見た。
「あんたは、刑事局で一番優秀な刑事だそうだな。高柳局長は人間性もいいと言っていたが、本当なのか?」
「ふたつのうち最初のほうは本当だ。後のほうに関してはおれ自身何とも言えん」
鷲武はそう言って歩きだした。
 駐車場にゆくと制服の警察官が覆面パトカーのキーを鷲武に渡した。
「おまえが運転しろ。おれは、おまえの言う一か月間は左手が使えんのだ」
警察官から受け取ったキーを、鷲武が伊達に投げて助手席に乗った。
「やれやれ、しばらくは恨まれそうだな」
伊達は笑って運転席に乗り込んだ。
「高速で盛岡まで行くのか?」
「いや、調布飛行場へゆけ。そこからセスナで盛岡まで飛ぶ。盛岡からは車だ」
「わかった」
伊達の運転する覆面は、刑事局の官用車専用に作られたナビゲーションの誘導にしたがって警視庁から調布飛行場に向かって走りだした。
その日のうちに薗村警視総監の要請で、防衛大臣の命を受けた千葉県習志野の第一空挺団から、百人のレンジャー隊員が完全武装して岐阜県の御母衣村の警備についた。


盛岡空港に着いた鷲武と伊達は、空港に準備してあった覆面で上飯岡に向かった。
十月十一日と十二日に、上飯岡の研修センターで伊達は学会に出席した。そして十月十二日の夕方、錦織の袋を前脚にからめたビリーが、砂場で遊んでいた美子の前に現われた。ビリーがどこから来たのかは伊達にもわからない。
「ここだ…」
伊達は美子がビリーと出会った上飯岡第四公園で車を止めた。公園は研修センターの前にある。鷲武はパトカーの無線を握った。
「県警か。機捜38の刑事局の鷲武だ。この無線を刑事局長につないでくれ。極超短波の秘話装置をかけろ」
鷲武の声に『了解、しばらく待て』という声がした。間もなく無線はつながった。
『高柳だ。どうした』
スピーカーから高柳警視監の声が流れた。
「伊達が飼っている犬の写真をもとに、以前の飼い主を東北全域で調べてくれ。判明したら住所を知らせろ。おれ達はこれから高速道路を調べる。襲撃された場所の前後二キロを、十分後から二時間封鎖しろ」
鷲武が早口で言った。無線は極超短波の秘話装置がかけられている。秘話装置の周波数は五分おきに自動的に変えられるから盗聴は不可能だ。
「それから…」
鷲武は伊達の顔を見て、思い出したようにマイクのスイッチを押した。
「以前の飼い主が見つかったら、現在の飼い主については不明だと言っておけ」
『わかった。道路封鎖についてはすぐに処置する』
そう言って無線は切れた。
「気がきくじゃないか」
伊達は美子がビリーを可愛がっているのを知り、飼い主に申し訳ないと思いながらも、高柳に飼い主を知らせないように依頼した鷲武に感謝した。
 しかし、本当の飼い主もいなくなった犬を探していることだろう。そう思うと伊達の心は痛んだ。
「ふん…。高速にいくぞ」
鷲武は無表情のまま車に乗り込んだ。伊達は黙ったまま運転した。

東北自動車道の上飯岡で、核ミサイルの制御ボックスが強奪されたのは十月十二日の早朝だった。
 海上自衛隊の横須賀水雷基地で、日本が開発した無人原子力潜水艦の[あかしお]に積まれるはずだった核ミサイルの制御ボックスは、青森県警の機動捜査隊員十六名が拳銃と自動小銃で武装して輸送する途中、この上飯岡付近で襲撃され、制御ボックスを積んでいたバスを破壊されて奪われた。バスの乗員二名も殺されている。
襲撃されてからすでに二十日が過ぎている。手がかりを見つけるには極めて難しい状況だ。だが、なにかしらの手がかりを見つけなければならない。手がかりがなければいかに鷲武といえども捜査は進まない。
相手は事故に見せかけて上り車線をふさぎ、輸送車と警護していた県警の覆面四台を止めて機関銃で警官十八名を射殺してバスを襲った。
 はじめから制御ボックスを輸送する一団と承知で襲ったのだ。
 犯人は制御ボックスはもちろん、日本が核を開発したことも、原子力潜水艦を作ったことも知っているということだ。当然、制御ボックスを十月十二日に輸送することも知っていた。つまり開発チームか青森県警の中に制御ボックスの輸送計画を犯人に洩らした人間がいるということになる。
鷲武と伊達は封鎖した高速道路の上にいた。
「なんでもいい。何かを見つけろ。必ず何かが残っているはずだ。岩手県警のバカどもでは見つけきらん何かを、おれ達は見付けなけりゃならん」
鷲武は厳しい表情で路面をにらんでいる。
自分が担当して今まで解決しなかった事件はなかった。その自負が鷲武にはあった。
 どんな些細なことからでも鷲武は事件の核心へとたどり着いた。何も痕跡のない事件などはこの世にはない。どれほど完全犯罪といわれる事件でも、探せば必ずなにかしら痕跡があるものだ。それを見つけられるかどうかに解決の鍵があるし、そのささいな痕跡を見つけるのが刑事の腕だ。
「わかった」
伊達は鷲武が白い手袋を取り出したのを見て自分も手袋をはめた。
襲撃された地点はわかっている。鷲武は地面を這うようにして何かを集めてはビニールの袋に入れている。どんなものでも見逃さないという鷲武の鋭い目を伊達は見た。
 これが刑事という仕事か…。
 伊達は何か手がかりを見つけようと地を這う鷲武の姿を見て、改めて警察官の捜査あるいは捜索という仕事の重さを知らされた気がした。
伊達も地を這った。
 日頃何気なく通っている道路には伊達の知らなかった様々なものが落ちている。糸くず、ガラスの破片、煙草の吸い殻、小石、虫の死骸、人間か動物かわからない毛、タイヤのゴムの破片など、見つけたそれらのものを伊達はビニールの袋に入れた。
 鷲武がガードレールに付いた何かの痕跡をカメラで撮影している。遠くから見ると少し黒っぽい痕跡がガードレールに付いている。車のバンパーのこすった痕だろうと思われる。
地面に這いだしてから二時間あまりが過ぎていた。そろそろ道路封鎖を解除する時間だ。だが鷲武は相変わらず地面に這うようにして路面から何かを拾ってはビニールの袋に入れていた。ギブスの左腕を支えにしている。
その時、岩手県警の高速機動隊のパトカーが赤色灯を点滅させながら進入してきた。
 パトカーは這っていた伊達のところで止まり、ヘルメット姿の警官がおりた。
「県警本部から連絡は受けていますが、封鎖は二時間という命令も受けています。道路公団からも苦情が出ていますので、そろそろ解除してくれませんか」
高速機動隊の警官は地面に這っている伊達に言った。
「まだだ」
鷲武が地面を這いながら言った。
「しかし、県警も十分協力したでしょう。いきなり命令を出して二時間も道路を封鎖するなんて、本庁といえども非常識じゃないですか。この道路を一時間に何台の車が通ると思っているんですか。いいかげんにしてくださいよ!」
警官は、這いつくばっている鷲武と伊達に強い語気で抗議した。
「伊達、そいつを黙らせろ」
鷲武は地面をにらんだまま言った。
 伊達はゆっくりと立ち上がって警官を見据えた。
「我々がいいと言うまで道路封鎖は継続する。封鎖と解除命令は県警本部長の権限でもなければ、きみの権限でもない。いまおれ達が調べている事は、きみが日常やっているスピード違反や交通事故などとは比べものにならないくらい重要なものだ。馘になりたくなかったら黙って言うとおりにしろ。どうしても文句があるのなら警視総監にでも言え。わかったらさっさとここから出ろ。警視庁刑事局の命令だ」
伊達はそう言ってまた地面に這った。
 高速機動隊の警官は顔を真っ赤にして興奮を押さえている。警官は派手な靴音を残してパトカーに乗り込み、乱暴にドアを閉めた。
「おい、これは何だ!」
パトカーが走りだそうとしたとき鷲武が何かを見つけた。
 その声に発進しようとした高速機動隊のパトカーは急ブレーキをかけて止まった。先程の警官は運転席の窓から顔を出し舌打ちをしてまた走り去った。
「伊達、無線で刑事局の刑事を乗せたヘリを呼べ。大至急、科研にこいつを届ける手配もだ」
鷲武の顔は青ざめている。とうとう何かを見つけたのだ。伊達が覆面パトカーの無線で高柳を呼び出した。高柳はすぐに手配するといって無線を切った。
「なんだ、これは…」
伊達は鷲武が持っているビニール袋の中身を見つめた。袋の中には黒いものが付着した小さなガラスの破片が入っていた。
「ひょっとすると、こいつが事件の核心におれたちを誘導してくれるかもしれん…」
鷲武はそう言って煙草を取り出した。そして覆面の無線で道路封鎖を解くように県警に連絡した。













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