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UFO~闇の主と少女の世界~

 ――八月の街。
「ねえ、見てあそこ」
 少女が人差し指を向けていたのは誰もいない空であった。
「ゆー・えふ・おー」
 ゆっくりな声で少女はそう言った。その時、少女の言っていることを誰も信じることはなかっただろう。
 でも、本当だったのだ。少女は嘘をついていなかった。
 <UFO>は確かに空に飛んでいて、その動きは明らかに、人間に対して好意的ではなかった。
 まだ、<UFO>を見つめている少女を心配したのは母親である。
「ユッフォーなんて、ありませんよ。きっと疲れているのね」
「いや、あるもん」
「帰ったらお昼寝しましょう」
「やだ! だっているもん」
 この母親には<UFO>が見えなかった。薄い円盤状の、鼠のような色をした巨大宇宙船が見えないのだ。
 でも、少女には<UFO>が見えた。この親子には見えているものとそうでないものがあった。
 母親の方は、<闇の主>が路地裏に屯しているに気付いていた。
 だが、少女にはそんなものが見えなかった。

 ――九月の事件。
 精神のイカれた人間が街を歩いていた。その男のポケットにはナイフがあり、煙草を吸っているような感覚で大麻を吸っていた。
 男は髪を染めていた。金髪であり、体の所々に殴られた痕が酷く残っていた。
 その男は全てを憎んでいた。憎むが故に苦しみ、苦しむが故に憎んでいた。
 この日には憎しみは膨大なものになり、抑えきれなくなっていた。
 ――男はジーンズのポケットからナイフを取り出した。それには鋭い刃が附いている。
 男には殺気が憑いて離れないようであった。その殺気に操られるようにして、男は街中の人間を襲い始めた。
 まずは老人であった。眼鏡の爺が血を吐き出して倒れた。それを見てショックで動けなくなってしまった人間を悉く男は刺した。
 それが規定事項であり、この事件がなければ社会は回らないのだというぐらい自然に人は死んでいく。
 拳銃を持った警察官すら、ナイフの斬撃に耐えることはなかった。そのナイフには闇が纏っていた。
 この街にいる人間の多く、約七割くらいがナイフによって命を絶たれた。ただ、一人のナイフによってである。
「<ヤミ>ガソコニアルノカ? ヒトヲコロセルトイウノカ?」
 男は、更なる殺戮を求めて路地裏に入っていった。
 その後の男の行方は誰も知らなかった。

 ――十月の街。
 そこには、狂った人間しかいなかった。――――狂った人間が、狂った人間を襲う。
 一見、それは愚かなことに思えるが、<全てを消すため>には好循環であり賞賛すべきことだ。
 世界は乱れていた。それ故に愚かな人間は自分たちが愚かであることに気付かなかった。
 街全体が闇に支配されていった。噂を聞いて街に駆け付けた人間はその闇に吸い込まれていった。
 吸い込まれた者は、警察官であり、野次馬であり、マスコミであり、自衛隊であり、様々であった。
「お母さん、どこにいるの?」
 少女は大声で叫んだ。少女は<UFO>を見ていた。
 すると、<UFO>から小さなブラックホールのようなモノが出現し、人間達を呑み込んでいった。
 街には少女一人だけがぽつりと誰にも気づかれずに滴る一粒の雨のように残り、少女だけが<UFO>の行く先を見ていた。

 ――――数年後の春。
 女の子は元々住んでいた街から離れて、別の街に住んでいた。
 だけれど、その街の空にも<UFO>があることに少女は気づいた。
 少女は、街を離れた。二度と同じ悲劇を繰り返さないために。
 でも、少女がどれだけ歩いても、少女がどれだけ走っても、そこには<UFO>があった。
 少女は自分が死ぬことによって、総べての人間は救われるのではないかと思った。
 そして、少女は山に登り、流れの急な川を見つけ、その中に身を投げた。
 でも、少女が死ぬことはなかった。
 川へ飛び込んだはずなのに、その体は宙に浮き、元の位置に戻っていた。
 だが、変化は起きた。少女の目に、<UFO>が映ることがなくなったのだ。
 少女は山から下りて、街に戻ると、そこには何もなかった。
 すると、少女の周りに宇宙が広がり始めて、また<UFO>が現れた。
 <UFO>の機体から、人が出てきた。
「貴方は誰?」
「<闇の主>だよ、この世界を破壊した」
「何故私だけを残したの?」
「それが、愛だよ」
 少女には、昔見ることのできなかった闇の主を目で見ることができるようになっていた。
 何故だか、少女は<闇の主>に恋をしていた。
 二人だけの恋愛をするために世界は破壊されたのだ。

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