happy sky。+゜
ビルの屋上のフェンスに立ち、不適な笑みを浮かべる…
彼こそ、今世間を騒がしている月下の奇術師怪盗キッド、またの名を
─────黒羽快斗。
静寂という言葉が最も似合う真夜中、彼にとっては朝飯前である仕事を済ませて今に至る…
ふと時計を見ると23時59分…
彼は何の気なしにカウントダウンを始める…
(父の日か…)
空を見上げ雲間から差す月光を仰ぐ…
『3、2、1、0…』
「へっ?」
少し似てはいるが確実に自分の声では無かった…
そしてゆっくりと振り返る…
いつのまにいたのだろうか…
「よぉ、名探偵」
声の主に自然な笑みをこぼす…
「よくここが分かったなぁ」
時刻は12時を十秒ほど過ぎたところだ…
「今日、何の日か覚えってっか?」
(父さん…)
『父の日。』
「その通り。」
『そしておめぇの誕生日、だろ?』
(えっ?)
一瞬ポーカーフェイスを忘れた彼の顔はまさに、マヌケと言うに相違ない…
『やっぱ忘れてるみてぇだな。俺もいっつも忘れて蘭のやつに思い出させてもらうんだ。』
「そーいや…」
(すっかり忘れてた…6月21日は俺の誕生日か…)
「だからさっき俺が変装してる時に父の日についてあんなに言ってたわけね。まさかそんな最初っからバレてたとはな…」
『あぁ…あのメイドさん、元は左利きで右に直したんだけど箸だけは今でも左で使うらしいぜ?なのにおめぇは箸も右で使ってたからなぁ…』
「へぇ…なかなかだな、名探偵くん?」
『まぁ、とりあえず誕生日…おめでとう』
「これはこれは、光栄です…」
いつもの様に怪盗キッドとして気障な振る舞いをしていたのだが、言ってから少し照れている少年を見てついつい黒羽快斗に戻ってしまう…
「おめぇ、その姿で照れてると可愛いなぁ」
そう言って少年の頭に手を乗せ、偽りのない笑顔を零す…
ポカーンとした顔の少年は何を思ったか目をキラキラさせて本当の弟のように振る舞ってみた…いや、妹といった方がいいのかもしれない…
女の子らしく、頬を赤らめて、精一杯の上目遣い、そして声をできるだけ甘くしてみた。
『そ、そんなことないよ…お兄ちゃん?
誕生日おめでとう…』
極めつけで少し微笑む…
みるみると赤くなり、沸騰したかのような顔をした黒羽快斗…
それを見た少年は空気を口にこれでもか、というくらい溜めて一気に吹き出した。
『ぷっはー!はっはっはー!』
腹を抱えて笑い出す少年…
「て、てめぇ!」
『どうだ?可愛かったか?可愛かっただろ?』
笑うことを止めない少年とふてくされた彼…
「てめぇなぁ!」
『いいじゃねぇか!誕生日プレゼントだと思ってさ!別に悪い気はしねぇだろ?』
少年はなおも笑い続ける彼…
「おまぇも俺も最高の恋人に誕生日を祝ってもらってるみてぇだな」
少し嫌みを込めて言い、少年がやっと笑いを止めた時だった。
目の前には蘭が…
一瞬考えることを忘れた少年にとどめをさす…
「コナン君、ありがと!だーい好きだよ!」
そう言って頬に短いキスをする…
今度は立場が逆転し、少年が林檎のように顔を赤らめ、彼が大笑いするのだった。
『て、てめぇ!』
変装を解いた彼が笑いを止めるのに一体どれほどの時間がたっただろうか…
「ま、まぁ、ありがとな!」
『今日は見逃すけど、次こそぜってー捕まえるからな!んで、牢にぶち込んだら飽きるほど祝ってやるよ!』
「楽しみにしてるぜ!」
そう言って彼は空にハンググライダーを広げて消えたのだった。
HAPPY BIRTHDAY
────K,K。
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