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神様は働かない 作者:shiro
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邪神さんと生贄さん 7

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次の日、
「フィルさーん。朝ですよー起きてですー」
ソファーで寝ていたフィルは、
体を揺すられながら聞こえるフラウの声で目覚めた。
外を見れば日は出てはいるものの、
日の高さを見る限り、まだまだ早朝であり、
不規則な生活が長年続き、すっかり夜型の生活に慣れてしまった身としては、
この時間の起床は一人ならば断固拒否しているところだ。

だが楽しそうにフィルを揺すってくるフラウを見ていると、
そんな決意は一瞬で崩れ、ごくごく素直に呼びかけに応じる。
「ううん、おはよう……フラウは早起きだなー」
すごいなーえらいなーと頭を撫でるフィルに、
少し不思議そうに首をかしげるフラウ。
「そうです? いつももっと早いですよー」

少女の家では、いつもは早朝の鐘で起きて、畑の準備をするのだという。
なるほど、農民などは、朝方にしなければならないことが沢山ある。
フラウもその仕事の手伝いをしていたのだろう。
「うん? ああ、そうか、畑仕事とかあるからかー。確かに朝早くみんな起きるよね」
なるほど、とフラウを見ると既に着替えも終わっており、
昨日のメイド服ではなく、生贄衣装に再び着替えていた。

「ああ、もう着替えているんだね。じゃあ僕も着替えるから廊下で少し待っていてもらえるかな。そしたら朝ごはんにしようか」
「はいですー」
てててと、扉に向かい廊下にでるフラウ。
それを見送り手早く着替える。
ローブを着て、ブーツやベルトを装着し終わったところでフィルも続いて廊下に向かう。


「そおいえば、金貨の光、消えちゃってたのです」
フラウが部屋に置いてあった金貨を見せる。
昨日は、夜中に使うかもという事でサイドテーブルに入れていたのだが、
今朝開けてみたら消えていたのだと言う。

「ああ、ライトは僕だと三時間ちょっとぐらいで消えちゃうんだ。そうそう、それだから今日は消えない光を作ろうと思ってね」
昨日の夜、準備しておいたんだというフィルに、
なるほどー?といまいち理解できず、不思議そうに返事をするフラウ。
そんなやり取りをしながら厨房に入った二人は
前日食べた麦粥の入った鍋の蓋を開け覗き込む。
幸いなことに、昨日作った麦粥は、まだ十分に残っていた。
いや、十分すぎるぐらいに残っており、
食べきるのにはまだまだ当分先だと思い知らされる。


「ううむ、これしかないとは言え、連続でとなると、少し飽きるな」
「あ、でしたらフィルさん、私、少しお料理に手を加えてみたいです」
冒険中や非常時には贅沢は言わないフィルだが、
さすがにこんな平和な時に毎日同じものを食べるのは避けたい。
そう考え、食料庫に何か追加できるものがないか確認しようとしたところで、
フラウからの助け船が差し出される。

大丈夫と尋ねると、家ではご飯もお手伝いしましたからと
腰に手をあて、自信そうにポーズをとるフラウ。
それならとご飯当番の全権をフラウへと渡し、自分は厨房の椅子に座って待つことにする。
「何か手伝うことがあったら言ってね。あ、干し肉なら僕のがあるから、必要なら言ってね」
「はいー。任せてです!」

食材庫をのぞき、使えそうなものを物色するフラウ。
そんなフラウを少し心配そうに見守るフィル。
フラウは食料庫の中からニンニクとカブとソーセージを見つけるとキッチンへと運んだ。
キッチンの前に椅子を置き、その上に立って腕まくりをすると包丁を手に料理に取り掛かる。
ニンニクは薄切りに、カブは厚めにスライスし、青い部分も適度な長さに切りそろえる。
少し拙いながらも、なかなかの包丁遣いに、見ているフィルはほうと感心する。
食事と言ったら酒場か野営ぐらいだったフィルにとって
こうして誰かが食事を作ってくれるのはずいぶん久しぶりな気がする。

野菜をすべて入れた後、ソーセージを入れ、さらに塩で味を整える。
そのあとも、何度か味見をしつつ鍋をかき混ぜ、具材を入れていく。
そしてとうとう味見に満足いったのか、うんと頷くと振り返った。
「フィルさん。できましたよー」

居間へと料理を運び、二人席に着き食べ始める。
相変わらずパンもサラダも無い、一品料理だが
昨日と比べて具沢山になり、ニンニクの風味のおかげで香りもずいぶん良くなっている。
口に入れるとカブとウィンナー、共に良い歯ごたえで楽しめることはもちろん、
カブとソーセージからも出汁が出ているようで、
ニンニクと合わさり良い味に仕上がったスープは
昨日の質素な粥と比べれば、段違いに美味しい仕上がりになっていた。

「ふむ、これは美味しいな。なんだか久しぶりに美味しいものを食べた気がするよ」
「もう、褒め過ぎですよー」
女の子の手料理なんて何時頃振りか、普段以上に料理を褒めるフィルに、
満更ではないのだろう、ニコニコと自分の分を食べるフラウ。
二人が食事を終わらせる時には鍋の中はかなり減らすことが出来た。

「いやぁ、これなら、これからもご飯はフラウに手伝ってもらえると助かるな」
フィルは鍋と食器を洗いながら。それとなく助力を依頼してみる。
お母さんのお手伝いだけで、きちんとした料理は知らないからと、
少し躊躇っていたフラウだが、
どうせ二人だけだし、僕が作るよりは美味しかったからという懇願により、
とりあえず、これからもご飯を作るときは二人で作ろうという事に落ち着いた。

「でも、パンもミルクもチーズも無いと、作れるものが無くて少し大変なのです。お野菜もほどんど使っちゃいましたし、ソーセージはさっきので使い切っちゃったのです」
食材の不足はフラウの言う通りで、食料庫の中身は随分寂しくなっていた。
フィルも、念のためと覗いてみるが、何か新しいものが見つかる訳でもなく
ため息とともに扉を閉める。

「今残ってるのは、せいぜい麦やカブ、ジャガイモが少しか……。今日は村に行く途中に食べれる野草とかあれば採っていこうか、後は獣を……一人じゃ処理できないから、魚でも獲るか……」
「フィルさんって、なんだか魔法使いさんというより猟師さんみたいです」
「はは、こう見えて、旅の途中に食料調達とかするからね。弓だって使うことができるよ」
ただ、今は仲間がいないから、大きい獲物は処理できないんだよねと
困った笑顔になるフィル。
よくある魔法使いのイメージとはだいぶ違ったのか少しぽかんとしてから、
やはり困ったような笑顔を向けるフラウ。
そんな会話をしながら食器も片づけ、屋敷を出発する頃には日もだいぶ昇り、
空気も朝から昼に変わろうとしていた。

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