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神様は働かない 作者:shiro
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邪神さんと冒険者さん 2

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戦場における、それぞれの位置関係を確認したフィルは
手前で戦闘をしている一団へ向けて駆け出す。

暴れている男達は、フィルから見て手前にいるのが
バンデッド・メイルに身を包み、
ライトシールドとロングソードを巧みに操る戦士。
三人の中で最も装備が整っているところを見ると
この戦士がリーダー格なのだろう。
動きも他の二人よりも場慣れしているように見える。
この男を相手に戦っている兵士たちは、防戦一方に追い込まれており、
捕まえるどころか、男になぶり殺しにされているといった印象すら受ける。

そして、もう一人、奥で戦っている男、
スケイルメイルにロングソードを両手で振り回している戦士。
装備や立ち回りを見る限り、他の二人と比べ格下のようだが
劣るとはいえ、兵士二人を相手にする実力はあるようで
少しずつだが確実に兵士たちに傷を負わせている。


「盾持ちとやってる二人! 加勢する!」
フィルはわざと大声を張り上げて突進する。
バックアタックを狙っても良かったのだが、
じりじりと削られている兵士たちが何時までもつのか分からない以上、
先に、盾持ち男の注意をこちらに誘い、
彼らが離脱する隙を作りたかった。

先ほどの戦闘音で、こちらの存在には気づいていたのだろう。
声が聞こえるや、すぐさま兵士達から距離をとり、盾を構えこちらの出方を窺う。
フィルは突進の勢いそのままに剣の腹を向けると、
その盾めがけ、両手で握った力を込めた一撃を打ち込んだ。

本来ライトシールドやバックラーといった軽量な盾は
扱いやすく、捌き、受け流す際に効果を発揮するが
反面、重い攻撃を正面から受け止めるには向かない。

盾持ち男は相手が魔法使いで、
得物がロングソードであることを見て
フィルの攻撃は威力もそれなりだろうと判断したのだろう。
受け止め、そのあとで一撃をねじ込もうと盾を掲げ待ち構える。
だが、圧倒的な速さで繰り出された一撃は
受けることも捌くことも許さず木製の盾を粉砕し、
衝撃で男を腕もろとも弾き飛ばす。

想像を遥かに超えた重い一撃に、
バランスを崩しよろよろと後退する男。
フィルはその隙に間合いを一気に詰め、
わき腹めがけてロングソードの腹を叩き込む。
チェインメイルの上に、細長い板金で補強されたバンデッド・メイルは
高い防御を誇る鎧ではあるものの、
盾を粉砕したものと同じ一撃をもろに食らった男はたまらず崩れ落ちる。

(あと一人)
悶絶する男を捨て置き、最後の一人の方へ向き直る。
「三人目! おとなしく武器を捨てるんだ!」
そのまま、今度は歩いて近寄っていく。
既にフィルが二人を倒したことは把握していたのだろう。
フィルの呼びかけに、男は剣を捨て、両手を上げた。

「いまだ、取り押さえろ!」
対峙していた衛兵二人に、三人目が取り押さえられるのを見届けたフィルは
周りに人が戻ってきているのに気が付いた。
随分遠巻きではあるが、皆、建物から出て、フィル達の様子を窺っていた。

(さてと、どうしたものかな)
幸いというか、兵士のうち二人は昼に門でフィル達の相手をした兵士だった。
「ありがとうございます。おかげで助かりました」
見知った顔の加勢に、手を出したことへの叱責はなく
素直な協力への感謝のみでフィルは内心、胸をなでおろした。

どうやら兵士達はフィルが何者かを把握しているらしく
言葉遣いも、対応も、目上の者へ対する態度だった。
この辺りは、様々な身分、種族の人と接する門番だけあって、手慣れている。
フィルもこれ幸いと、穏便に済ませてもらえるよう、それとなく依頼する。
「丁度、大通りを歩いてたところで悲鳴が聞こえたもので、邪魔をしてしまったようなら申し訳ありません」
兵士達もあのまま増援を待っていたら全滅も免れなかったと
街の中で暴れた点については不問としてくれた。

「それにしても、凄まじい威力ですね」
男の腕に残った、粉砕された盾の残骸と、
衝撃のあおりを食らい、あらぬ方へと折れ曲がった腕を見ながら
これなら火竜殺しも出来る訳だと半ば呆れ、納得する。
「いやぁ、ははは……」
そんな兵士たちの様子をなんも言えず、曖昧に笑ってごまかす。
本当ならもっと静かに暮らしたいのだが、
どうにもここ最近、厄介事ばかり舞い込んでくる気がする。

「フィルさん! すごかったですよ! かっこよかったです!」
離れて見守っていたフラウが、とととっと駆けてきてフィルに飛びつく。
続いて、その後を、先ほどまで避難していた商人や、他の住人たちがやってくる。
皆、口々にフィルへと感謝の言葉を贈るが、当のフィルは何とも微妙な表情になる。

正直なところ、自分の噂が外に広まってしまうのはなるべく避けたい。
破壊神の一件を知る者なら、フィルが生きていて好き勝手しているとしれば、
討伐隊を送りつけてくる可能性もある。
一応、今いる国は、あの国からは随分離れているで、
噂になっても伝わるまではそれなりにかかるとは思うが
あまり派手に動くと、それだけ相手の危機感を煽ってしまいそうで怖い。

「と、とりあえず、ここはもう大丈夫そうだし、この場を離れようか?」
「ふぇ?」
フラウの手を取り、この場を立ち去ろうとするフィル。
何で離れたいのか分からず、笑顔のまま、ぽかんとしているフラウ。
そんなフラウに、目立つのは少し苦手なんだと伝え、
人ごみから離れようとする。

「あー、皆さん、それじゃあ僕たちは宿に戻りますので失礼します」
さらに増えていく住人達に対して、愛想笑いを振りまきながら、
この場を去ろうとするフィルだったが、
動こうとした時、フラウを引いているのとは別の手が何者かの手に掴まれた。
感触からして少女の手の様だが、結構力強く掴まれ前に進めない。

「うん?」
振り返って見れば、先ほどのバード少女が、
ものすごく期待に満ちた表情でフィルを見つめていた。

「あ、あの、ありがとうございます! 良ければお礼をさせてください!」
営業用スマイルのようにも見える満面の笑顔を張り付け、見上げてくる少女、
笑顔にもかかわらず、両手でしっかり掴まれた手は、
押しても引いても外される気配がない。

気合十分絶対逃がさないぞというプレッシャーが
先ほどの戦闘とは別の意味でフィルに突き刺さる。

「ああ、いや、気にしないでくださいお嬢さん。僕は名乗るほどの者ではありませんから。それと……」
フィルはフラウからいったん手を放し、
バード少女の頭に優しく載せる。
おや?っという顔をする少女の頭を固定すると、
近くで後処理をしている衛兵を呼びつける。

「兵士さん。この子の事情聴取まだですよね? 聞いておいてもらっていいですか?」


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