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神様は働かない 作者:shiro
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邪神さんと冒険者さん 1

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店員への支払いを済ませ、
ロングソードを二振り受け取ったフィルは
フラウのいた場所の方が、静かになっていることに気が付いた。
見れば少女はうつらうつらと座ったまま舟をこいでおり、
必死に眠気に耐えているようだった。

「フラウ、用事が終わったよ。そろそろもどろう」
「あ、寝ちゃってました?」
フィルがフラウの肩をそっと揺らすと
少女ははっと意識を戻し、ついで、
フィルの方を見上げて、すこしばつが悪そうな笑顔になる。
「いろいろ歩き回ったからね。少し疲れたんだろう」
用事は全て終わったし、一旦宿に戻ろうという提案に、
はいですと元気よく返事すると、
嬉しそうに差し出された手を取る。

「またのお越しをお待ちしてますよ。出来上がった剣は、他より高めに買い取らせてもらいますからね」
店員に見送られて、店を出た二人が大通りに出て暫くした時、
通り沿いにそのまま進んだところにある
街の入り口の方から何人かの怒号や叫び声が聞こえてきた。
しばらくすると、女性の悲鳴、それから子供の泣き声まで聞こえきた。

あの辺りは門を護る兵士の詰め所がある場所だし
フラウを連れている今は、あまり関わらないほうが良いかもしれない。
「フィルさん、なんだか向こうのほうが大変みたいです」
「あ、うん、そのようだね」
フラウに、この場を離れようと提案しようとしたフィルだったが、
既にフラウは助けに行く気満々の様子でフィルの手を引いている。

「フラウ? あの辺りは兵士達もいるだろうし、邪魔になるだろうから行かないほうが……」
「でもでも! 大変そうですよ! もしもダメな時は助けてあげないと!」
兵士さんが危ないかもしれないですと、
一生懸命フィルの腕を引きながら訴えるフラウ。
結局、少女の熱意に押されて、
二人は騒ぎが起きている広場へ向かった。

広場に到着し、周囲を見渡すと、既にほとんどの人は避難したのか
人のいない広場の、外へと通じる門の近くで、
兵士達と二人の男とが戦闘をしているのが目に入った。
それぞれ皆、武器を手に取り、
兵士は男一人に対して、二人がかりで動きを封じようとしているが
相手の技量の方が上らしく、人数が勝っているにもかかわらず
防戦一方の展開となっている。

「これは……」
フィルは状況を見極めるため、さらに周囲を見わたした
どうやら馬駅乗合馬車の待合所で派手に暴れたようで
建物がかなり破壊されていた。
軽く見ただけでも、軒先の柱が大斧か何かで叩き切られ、
それ以外にも同じ武器でつけたとみられる斬撃の跡や
血の跡もいくつか見られる。

「あ、あんた達、危ないよ! こっちに来なさい!」
近くの建物から様子を窺っていた誰かがフィル達を見つけ呼び掛けてくる。
急いで建物に向かうと、どうやらその建物で商いをしている商人のようで
何事か尋ねると
「あそこの男が急に暴れ出したんだよ。そしたら仲間らしい男達も一緒に暴れだして、大騒ぎさ」
そう言うと兵士と男達から少し離れた場所で対峙している二人の冒険者風の男女を指さした。

そこにいたのは少女と大男だった。
どちらも旅の冒険者らしく、武器と防具で武装している。
が、それぞれの職種はかなり違った。

少女の方は動きやすさを重視してか、
防具は最小限でベスト型のレザーアーマーを着ているが、
その他に防具らしい防具は見当たらず
下に至っては、短い丈のスカートにブーツ、
脚は膝上まで伸びる靴下程度と、
だいぶ割り切った装備となっていた。

対する大男の方は下半身こそ革製のズボンだが
上半身には金属製のブレストプレートを着込み、
更にはブーツやガントレットも金属で補強されているなど
明らかにこちらは戦闘職なのが見て取れる。
とはいえ、その装備は随分とくたびれたというより
みすぼらしいと言えるぐらいに使い古されており
冒険者というよりは、傭兵崩れかゴロツキか、
といった印象がぴったりくる。

(ローグ……いや、バードか? それとバーバリアンというところか)
少女は腰から抜いたレイピアを持ち、装備は軽戦士のそれであったが、
バックパックと一緒に背中に背負ったリュートが彼女が盗賊やレンジャーではなく
吟遊詩人……バードなのだろうと推測させた。
さらに言えば、その動きは無駄も多く、
明らかに戦い慣れしていない、おそらくは、
せいぜい冒険を数回したぐらいの駆け出しだろうと思われた。

一方のバーバリアンは迷うことなく斧を振りぬく。
こちらも見る限り腕はそれほどでもないが
戦い慣れという点では明らかにバーバリアンのほうが上だった。
くたびれた装備も、それだけ使い込んだという事なのだろう。
今でもバード少女が生きているのは、
攻撃を諦め回避に専念している点が大きいのだろう。

とはいえ、少女の武器であるレイピアは
大男が持つ大型の斧と比べるとあまりにも頼りない。
両手で握りしめ、何度も繰り出される大斧に対して
回避がいつまでも成功するとは限らない。
増援が来ることを期待しての戦術だろうが
危険な状態であることには変わりはなく、
状況は一方的に大男に有利な状況となっていた。

「フィルさん、助けてあげないと!」
「フィル? あんた、いや、あなたはもしかして、火竜殺しの?」
扉の前で戦いを見守っているフィルとフラウ。
バード少女の危機を見ていられないという
フラウの言葉に商人の目が期待に変わる。

相手から火竜殺しと言う言葉が出るに至って
フィルは何となく、もう逃げらないことを予感し、
心の中でため息をついた。
ここで関わってしまった以上、
見捨てるのはさすがに忍びない、
とりあえずこれを解決して
暴れたことには後で謝ろうと気持ちを切り替える。

「ああ、そうです。ええと、あれを止めるのに部外者が少し暴れる事になるので、その時は兵士達に口添えしてもらえると助かるんですが……」
「ええ、もちろんです! どうかよろしくお願いします! ですが、殺さないようにお願いしますよ!」
「わかりました」
商人からの激励を受けて、まずは少女と大男の方へと向かう。
走りながら剣を抜き、そのまま、大男へと突き進む。


バード少女と大男との戦闘はまだ続いていた、
少女は大男の斧の一撃こそ受けていないものの
避ける際に転んだり、壁にぶつかったりと
あちらこちらに軽い傷が出来ている。
だが、傷よりも重要なことがあった。
極度の緊張状態は想像以上に体力を消費するらしく
既に息は上がり、体は重く、足も思うように動かない。
このままでは、そう遠からずに斧の餌食となるだろう。
そんなことを考え気が散ったのか、
それとも疲労が限界になったのか、
一瞬少女の動きが止まる。
そして、その隙を逃さずに大男は斧を打ち込んだ。

その時、何かが横を追い越していった。
金属と金属のぶつかり合う音が激しく響く
「え?」
斧で討たれたと覚悟したが、どうやら自分は生きているらしい。
目の前にはローブを着た青年が一人。
斧は青年の剣によって受け止められていた。
「ここは僕がおとなしくさせるから、君は後ろの女の子のいるところに行ってるんだ」
そう言うと、青年はそのまま剣を押し出し、斧をはじき返す。
自分の力をはるかに超える力で斧をはじき押し返された大男は
思わず後ろに数歩よろめくが、すぐに体勢を立て直すと
ひどい形相で青年を睨みつける。

(今ので、力の差を理解してくれれば楽なのにな)
大男がまだやる気満々間のを見てフィルは舌打ちをする。
魔術師風の男が、並の戦士を超える怪力を出してる時点で
少しは危機感を持ってもらいたかった。
神になってからというもの、
身体能力も上がったようで
この程度の戦士相手なら、
素早さだろうと、筋力だろうと
押し負ける気はしない。
逆に言うと、あまりこの力を他人に見せてると
いつか破壊神という事がばれそうで怖い。
(今度、力を抑えるアクセサリーでも作るか……)

そんなフィルの思いの甲斐も無く、
大男は、間合いを取り直して、大斧を握りなおした。
どうやら、そのままの間合いでは危ないと判断したらしい。
(勘は良いらしいな、やはりバーバリアンかな)
とはいえ、降伏してくれるほど素直ではないらしい。

「君、まだ動けるかい?」
大男の動きが止まったところで、フィルは後ろにいた少女に声をかけた。
そして返事を待たずに、左手で自分が来た方を指さす。
「あっちの建物の扉に、白い服を着た女の子がいるから、そこまで避難するんだ」
「え、でも」
戸惑った様子が背後の声から伝わるがとりあえず無視する。
「ここは、僕が任された。後は僕が何とかするよ」

大男は少女を諦めたわけではないようだったが、
動こうとした瞬間、フィルが斧を狙って剣を振りぬく。
反応できない速さの剣速は、そのまま斧をはじき、大男をよろめかせる。
その瞬間を逃さず少女は後ろに下がってフラウのいる建物へと駆け込んだ。
(あの子は大丈夫そうだな、さてと、こっちはどうしようか)
大男は完全にフィルの方へ向き直ると武器を構えなおす。
どうやら、まだ戦意は削がれていないらしく
加減のない本気の殺気がフィルに突き刺さる。

(相手の練度によってはスリープ効かないし、そもそも街中で魔法を使うのは面倒なことになりそうなんだよな)
大男は一気に間合いを詰め、
斧を横に振りかぶる、
大質量の鉄の刃がフィルに向かって飛び込んでくる。

(剣でも殺しかねないし、やっぱこれがいいか)
瞬間、フィルの姿が消える、
否、斧を振る方向と逆に飛び、
斧の軌跡の紙一重でかわす。
そのまま大男が斧を振り切らないうちに懐まで飛び込むと
重心を低くし、大男の脚を払う。
ダメージこそ致命的ではないが
大きく体のバランスを崩す大男。
なおも転倒を耐えようとするが、
そのままフィルは左手で拳を作ると思い切り男の顔面へと打ち込む。
顔に拳をめり込ませた大男は、そのまま後頭部から倒れこむ。
刹那の出来事、先ほどまで破壊の限りを尽くしていた大男は
一瞬にして地面に倒れることになった。
間髪入れず手を思い切り蹴り飛ばし、大斧を弾き飛ばす。
その衝撃でおそらく骨折したのだろう、
手首はあらぬ方向へと曲がっていた。

(よし、まずは一人)
残りは後二人、先ほど兵士たちが戦っていた場所を見ると
まだ、戦闘が続いているのが見える。
兵士たちはさすがに日ごろ訓練しているだけあって
少女とは違い、息が上がるようなことは無かったが
技量の差はどうしようもないらしく、
劣勢のまま、何とか耐えしのぐという流れが続いていた。


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