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神様は働かない 作者:shiro
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邪神さんと生贄さん 21

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さっそく次の店をのぞき込むフラウ、
あっちの服可愛い、あの服もいいかもとフラウが服を見ている間、
フィルはする事も無く、辺りを見回していたが
すぐ裏の通りの露店で本が売られているのに気が付いた。

本といえばこの世界では珍しくは無いが安くはない物だった。
一から文章を作成する場合は手書きで作成しなければならないのはもちろんの事、
アマニュエンシスの魔法で既にある本から書き写したとしても、
一分で七百文字程度しか書き込むことが出来ず
しかも、文字以外の挿絵や魔法の文字を写すことはできない。
さらに言えば、呪文の効果時間には限りがあるため
長大な書物などは、複数回唱える必要があった。

幸いなことに、呪文自体は使用するのに必要な難易度が低く
見習いの時点で覚えることが出来る魔法のため、
使用できる術者の数は多いのだが、
呪文のリソースを消費して書写される以上
書物はそれなりに高価な品となる。

更にいえば、挿絵は完全に手描きとなり時間も労力もかかり、
本の素材となる羊皮紙も材料費が馬鹿にならないため
魔法のかかっておらず、挿絵も無い書物でも殆どが金貨数枚の金額となってしまい、
庶民にとっては高価な娯楽となっていた。

それゆえ必然的に本屋は高価な商品を扱う商人となり、
高価な商品を扱うゆえ、ごく普通の本を扱う商人でも稀に魔法の品が紛れることもあった。

「フラウ、ちょっと僕はそこの本屋を見てみようと思うんだけど、欲しいものが決まったら呼びに来てもらえるかな?」
「はいです~」
フラウに自分のいる場所を伝え、
フィルはさっそく本の露店に向かった。
露店には二十冊ほどの本が売られていた、
書物は中古だったが、どれもしっかりした装丁の物で
聞けばどれも金貨五枚とのことだった。

「へぇ、結構お買い得な感じだね」
「ははは、古本だからねぇ。どうだい? 何か気に入ったのがあれば、今なら金貨四枚でいいよ」
店主の呼びかけに興味を持ったフィルは本を確かめてみる、
歴史、物語、草木図鑑……魔法や錬金術関連の品が無いのは少し残念だが
庶民が楽しめる本を中心にそろえているようだった。
(寓話集とかあればフラウも興味持つかもしれないな……おや?)
気になる本を見かけたフィルは、
店主の了解を得て本を手に取ってみる。

タイトルには「良き夫人のための喜ばれる料理集」と金箔で文字が書かれており
その下には、美味しそうな美味しそうな夕食の一コマが描かれている。
どうやらこの本は、上流階級の婦人向けに作られた料理書らしく、
比較的手の込んだ料理や夜食で手軽に作れる料理、
子供に喜ばれるデザートなど、
難易度はそこそこながら無理なく作れそうなレシピが多く載っているのだという。
本当に手間のかかる料理は
料理人に任せるべきだと序文に書かれているところをみると、
料理の不慣れな婦人が実際に料理するための実践本といったところなのだろう。

いい加減な男の手料理ばかり食べさせるのも忍びないし、
これで勉強してみるのもいいかもなと、
本を少しめくってみる。

「おや、それが気になりますか。恋人へプレゼントしたりすれば喜ばれますよ」
自分で使うつもり、というのは少し寂しいので、
愛想笑いで返しつつもう少し見てみる。
中を見る限り、特にページ抜けとかもなさそうだし、
これを買ってもいいかなと考えているところでフラウが戻ってきた。

「フィルさん、おまたせしましたー。あれ、何の本を見ているのです?」
「これかい? 料理の本なんだけどね、ほら、少しはましなものを作れるようになりたいなってね」
フィルは開いた本のページをフラウの目線の高さにもっていく。
そこには上手な筆遣いで描かれた料理の挿絵と、その料理の作り方が載っていた。
「おいしそう料理ですね! こんな料理作ってみたいのですけど、私、字読めないんです……」
確かに農民の間では文字を読めなくてもそれほど困ることは無いため、
長男など以外は読めない家は多い。えへへと、少し寂しそうに笑うフラウ。
「そっか、うーん……」
本を閉じて少し考えるフィル。
このまま文字が読めなくても、それほど困ることは無いかもしれないが
多分、フラウが字を読めるようになる事は
少女自身にとっても、喜ばしい事になるはずだ。
あとはフラウのやる気次第か。
それから、少ししゃがみ、自分の顔をフラウの顔の高さに合わせる。
「それじゃ、フラウさえよければ、今度僕が字を教えてあげるよ。そうしたら、一緒にこの本の料理を作ってもらえるかな?」
「ほんとですか!? ありがとうございます!」
フィルの提案を大喜びで承諾するフラウ。
それは、文字を覚えられることを喜んでか、
それとも、この本の料理を作れることを喜んでか、
そのどちらもだと良いなとフィルは思った。

本屋で料理本を購入した二人は、
先ほどのフラウが見ていた露店へと戻り、
フラウの見つけたという服を購入した。
それから、さらに何件か服を見て回り、
全部で三着ほど購入した後は
家で足りない分のランプを購入し、
当初の目的をすべて終えることができた。

市場の門へ向かう道すがら、
お気に入りの服を買うことができたフラウは、
上機嫌な足取りで歩いていた。
「フィルさん、今日は本当にありがとうございます」
奮闘の戦果の入った袋を胸に抱きよせるように持ちながら、
興奮で冷めやらぬといった様子でこれからどうするかを尋ねる。
「そうだなー、一度向こうの広場の露店街に行って、何か屋台で買っていかないか? 少し喉も乾いたし、座って休みたいしね」

ランプの入った布包みを持ち、
フィルは大通りの向こう側にある食料市場を見て言う。
さきほどは、外周にある食品問屋が目的地だったのと
昼食を食べたばかりで、何かを食べたいという事も無かったので
広場の露店市へは寄らなかったが、
服を探して露店を駆けずり回った後では
喉も乾いたし、少し休憩をしたい。
たしか、さっき外周の道から見た時は
広場には露店で買った食べ物を
座って食べることが出来る
フードコートがあったはずだ。
「はいです!」

フィルの提案にフラウも同意し
二人は再び食料市場へと向かった。
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