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神様は働かない 作者:shiro
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邪神さんと生贄さん 20

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雑貨屋の女主人の頼まれ物を済ませた二人は、
他の食材を手に入れるために、店員の勧めた肉屋と乳製品の店に寄り、
生肉やソーセージ、ベーコン、バターなどの購入を済ませた。
「ふぅ、これで欲しかったものは一通り買ったかな」
先ほどの商店とは違い、
両手に購入した食材の入った袋を抱えながら店を出たフィルは
人気の無い路地に入り、そこでバッグに食材を詰め込む。
「これでよしと、さてと、それじゃあ服とか雑貨の市場へ行ってみようか」
「はいです!」
元気よく返事したフラウは、荷物が無くなり、
ようやく空いたフィルの手を取る。
「これで市場に入っても迷子になりませんね」
そう言うとにっこり笑うフラウ。
そのまま二人は、食料市場の外周の道を通り、
大通りを挟んで向かいにあるという雑貨の市場を目指した。

「たくさん買いましたね! でも、生のお肉とか、食べきる前にダメになっちゃいませんです?」
食品の問屋が並ぶ通りを歩いている途中、
フラウが少し心配そうに尋ねた。
今は夏も近づく季節、
気温と湿気で食べ物が特に傷みやすい季節と言える。
多くの家庭では生モノの扱いには特に気を使い、
生肉などは食べられる量だけ買ってすぐ使い切る
というのが賢い主婦の一般常識だった。

そんな賢い主婦見習いであるフラウもまた、
今回購入した肉の量には少し不安があるのだろう。
干し肉とかにしたほうが良いかもです?とか
肉の保存方法について、フィルへと色々たずねる。
そんなフラウに少し笑ってフィルは答える。
「大丈夫だよ。あの家の食料庫は腐敗や乾燥を防ぐ魔法がかかってるからね」
「ふはいです?」
単語が分からずきょとんとするフラウ。
「うん? ああ、あそこの食料庫に入れた食料は、それ以上腐ることが無くなるんだよ。まぁ既に腐ってしまったものを入れても元に戻るとかはないから、なるべく新鮮な物を入れたほうが良いのは確かだけどね。それに、このバッグも乾燥は防げないけど、腐敗は殆どしなくなるんだ。だから、今日買った肉も、このバッグに入れておけば、とりあえずは問題ないと思うよ」

フラウが単語を繰り返す時は、大体意味が分からない時だ。
これまでの生活で少女のことを少しずつ分かってきたフィルは、
もう少し具体的に説明をする。
フラウの方もバッグの効果が伝わったのだろう
「すごいんですねー、それじゃあ、あそこに入れておけば、ずっと蓄えておけるんですね!」
感心した様子でフィルのバッグを見るフラウ。
「たくさん入って、しかも腐らないなんてすごいですね!」
「そうだね、入る量に制限があるとはいえ、僕らが食べていく分には十分だし、気軽に食べ物を買っておけるっていうのはいいよね。お、見えてきたかな、あれが市場だね」

話しているうちに大通りへと出た二人は。
大通りを挟んで反対側にある、大きな門から中へと入った。

門の向こうは、食料市場の中央にある広場と同様に
雑貨の露店が立ち並ぶ広場となっており
広い広場に様々な服や雑貨、
アクセサリーなどの露店が並び、
それを取り囲むように、
様々な衣料品や雑貨を取り扱う大き目の商店や
材料を扱う問屋などが軒を連ねていた。

広場の露店を見てみると、
交易により遠くの土地から持ってきた布や
地元の工房や家庭で作られた服やアクセサリーが並んでいる。
特に個人の制作のアクセサリなどは問屋を通さない分
お安くなっているようだった。
市場ではこうした雑貨目当ての客も多く
旅人から地元住民まで、人間からエルフにドワーフまで
市場の中は様々な人たちが行きかい、随分な賑わいだった。
「ほう、結構賑やかだな。フラウ、移動するときははぐれないように気をつけないとだね」
「えへへ、はいです!」
そう言うと、フラウは握っているフィルの手に少しだけ力を込める。

「うわぁ……フィルさんっフィルさんっ、あそこの洋服屋さん見てみたいです!」
見渡す限りに並ぶ、
様々なかわいらしい服や小物の露店を前に
大喜びのフラウは、はぐれないようにと
繋いだ手をぐいぐいと引っ張り店をめぐる。

服屋の前でかわいーと言い、
小物屋の前でやっぱりかわいーと目を輝かせる。
あまりのテンションの高さに三着ぐらいで済むかなと少し心配になりつつ、
フィルはフラウに付き従った。

「ははは、フラウ、焦らず選ぶといいよ。あ、でも、あまり離れないようにね?」
「はいです! ……あ」
と、言っている傍から駆け出すフラウ。
何かを見つけたのだろうかと引っ張られる先を見てみると、
少女は露店に売られているアクセサリに見とれているようだった。

真鍮でできているのだろう、
銅貨五枚程度の安物の指輪だが、
よほど気に入ったのだろう。
随分と熱心に眺めている。

とはいえ所持金ゼロの少女にとっては高根の花、
今日は服が必要だから買いに来たので、
アクセサリを買いに来たのではない。
そうは言っても欲しい……。
そんな雰囲気がフィルのほうまで届いてきた。
「その指輪が気に入ったのかい?」
「あ……はい! でも……」

返事をしてから少しためらう。
甘えてばかりいては良いのか悩んでいるのだろうか。
ふにゅうっという表情で
何度も視線をフィルと指輪をの間で行き来させるフラウ。
そんな少女の葛藤する様をみつつフィルは女店主の方を見やる。
女店主の方はというと、
女の子だねぇ、ゆっくり悩んでお行き、
とばかりに笑顔で見守っている。
どれだけ店の前に居座ろうとも、
とことん付き合うわよと言わんばかりの落ち着きようだった。

フィルとしては、フラウのかわいらしい悩みを見ていたい気もするが、
さすがに人様に迷惑をかけるのも気が引ける、
仕方ないなと女店主のほうに向くと購入の意思を伝える。

「それじゃあ、すみませんがこの指輪をもらっていいですか?」
「はいよ。銅貨五枚になるよ」
銀貨を渡し、毎度ありねと主人の笑顔と共にお釣りの銅貨と指輪を受け取ると、
それをぽかんとしているフラウの指につけてやる。
その指輪は大人向けの指輪だったらしく、
少女の手にはは少し大きくぶかぶかだったが、
もう片方の手を指輪に当てて、
自分の物になったことを実感する。

「ほんとうにいいのです?」
「ははは、もう買っちゃったしね。でもそれ、少し大きいみたいだね。後でペンダントにでもしようか?」
「はいです! あ、ありがとうございます!」
「きちんとお礼が言えたね。えらいぞ」
頭を撫でられ、えへへと笑うフラウ。
指輪の事もあってか、いつもよりも少しだけ顔色が赤い。

「うんうん、喜んでもらえて何よりだ。あ、そうだ」
ふと思いついたフィルは、
近くの小物屋を探し小さなポシェットと巾着袋を購入する。
その中に手持ちの銀貨を五枚ほど巾着に入れると
それをポシェットに収めフラウの首から肩へとかける。
「フィルさん?」
「フラウにカバンとお小遣いをあげるよ。食べたいものとかあったら、それを使うといいよ。思いつかなかったら貯金してもいいしね」
「え、いいのです?」
「無くさないようにするんだよ?」
「わぁ、ありがとうございます!」
自分だけのカバンなんて初めてだというフラウ。
えへへとくるりと回ったり、ポシェットの口を開けたりして感触を試すフラウ。
そんな少女の嬉しそうな様子にフィルも満足して目を細める。

「さて、服を見て回ろうか?」
「はいです! フィルさんあそこのお店行ってみたいです!」
「よーし、わかった。行こうか」
先ほどよりも、さらに元気になったように見えるフラウに引かれて
フィル達は次の露店へと向かった。
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