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神様は働かない 作者:shiro
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邪神さんと生贄さん 16

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街の門をくぐると、そこはちょっとした広場となっており
街にたどり着いたばかりの旅人や
これから街を出ようとする行商人などで賑わっていた。
周囲には、馬車や馬を預けるための厩があり、
行商人や旅人が自分の馬車や馬を預けているのが見える。

その広場から街の中央に向かって
馬車が三台は通れるであろう大通りが伸びており、
少し上り坂になっている大通り沿いには
様々な商店が店を構え、
その商店のさらに手前の道路には、
所々に野菜や小物、串に刺した肉といった
簡単な料理を売る露店が店を構えており
通りは商店で買い物をしたり、
露店で軽食をする人でかなり賑わっていた。

「わぁ……すごいですね! フィルさん、あの小さなお店は何です?」
大通りに入ったフラウは、
立ち並ぶ建物、村にいた時には見た事も無い数の人に驚き、
そのあと、美味しそうなお菓子を売る露店を見つけ、目を輝かす。
「あれはお菓子の露店だね。買ってみるかい?」
街中だからとグローブを外し、ポケットに入れつつフィルはフラウに答える。
「いいのです? ありがとうございます!」
さっそく屋台へと向かうフラウと、そのあとを続くフィル。
ドライフルーツやナッツをふんだんに使われた焼き菓子が二つで銅貨一枚
フラウはかなり悩んだ末に、
ドライフルーツのタルトとナッツのクッキーを選ぶ。
丁度よく、すぐ近くにフルーツを絞ったジュースを売る店を見かけ
ジュースを二人分購入したあと、近くのベンチに腰かけて休憩することにする。

「えへへ、ジュースもお菓子もおいしいです」
「そうだね、途中は水だけだったからなぁ。もう少し気の利いたのがあればよかったんだけど」
柑橘系の果実を絞りいれたジュースを飲みながらフィルも答える。
冷たく甘酸っぱいのど越しが、初夏の日差しには心地よい。

冒険をしていた時はワインを薄めたものを持ち歩いており
今でもワインならば問題なく手に入るのだが、
幸いなことに家ではきれいな水が手に入るし
さすがに幼い少女に朝から飲ませるのは気が引けて控えていたのだった。
「フラウはワインを水で薄めたのとか飲んだことある?」
「ええっと、晩御飯の時とかに飲んでいましたよ?」
薄めたワインはそれなりに普通に飲まれており
ピケットと並んで、子供の時から良く飲まれるものの一つだが、
場所によっては飲まれないどころか、忌避される所もあったりするので
知らない土地では気を付ける必要があった。
「晩御飯は飲んでたんだ。それじゃ今度出しても良いかな?」
「はいです。あ、でも、朝から飲んじゃうとお昼ごろに眠たくなっちゃうので、飲んじゃダメなんです」
「そうだよねー。さすがに朝からはないよなー」
やはり、朝は別のものが欲しいな。
そんな事を考えながらも、一休みを終えた二人は、
用事を済ませるためにベンチから立ち上がった。

「まずは……とりあえずは、領主の用事を済ませてしまおう。そのあとで宿をとって、それが終わったらこの辺りを一緒に見て回ろう。あ、それと、ここだと迷子になってしまうかもしれないから、手をつないでいこうか?」
「はいです!」
そう言うと、フラウは嬉しそうにフィルの手を握る。
「えへへ、これなら迷子になりませんね」
「ああ、ここから、人も多くなるからね。それじゃあ行こうか」
二人は街の中心、少し小高い所に建てられた領主の館を目指す。
道の途中、フラウはずっと店や露店を物珍しそうに見て回り、
何か面白そうな店を見つけてはフィルに報告する。
フィルもそんなフラウを楽しそうに見ながら
少女の見つけた店に立ち寄り、店をひやかしてみる。

そんな感じで大通りの坂道を登って行くと、
領主の館の門が見えてくる。
領主の館はほかの建物と比べても一際大きな建物となっており、
随分離れていても、すぐに見つけることが出来た。

「なんだか、すごいですね……あ、あの……フィルさん、私の服変じゃないです?」
「うん? いや、とてもかわいいと思うよ?」
近づいてくる正門と、その前に立つ衛兵を見ながら
急に自分の服を気にし出したフラウに、
いたって普通な感じで答えるフィル。
「ううう……でも、この服って普通の服なのです。怒られたりしないでしょうか?」
不安そうに見上げながら訴える少女に
なるほど、と理解すると、大丈夫だよと安心をさせることにした。
「ああ、大丈夫だよ。到着早々の訪問だし、仕方ないさ。僕なんていつも同じ服だしね」
それでもなお不安そうな少女にもう一度大丈夫だよと言って、
館の正門へと向かう。

すでに連絡が届いているのだろう、
正門の前に立つ衛兵に紹介状を渡すと、
丁寧な対応で控えの間へと案内される。

建物の作りこそ、フィル達が住んでいる家と似ているが
広さはその何倍もある屋敷を、衛兵に案内されて進む二人。
街に来たのが初めてなら
こんな豪華な屋敷に入るのも初めてで
さらには領主様という偉い人に会うのも初めてなフラウは
フィルから見ても分かるぐらいにカチコチに緊張した様子だった。
「僕の都合でごめんね。後で服とか買いに行こうね」
可哀そうなことをしてしまったかなと
少し反省したフィルは、控えの前に着くと、
先にフラウをソファに座らせ
フラウの頭を撫でながら謝る。
「だ、だいじょうぶです。でも、やっぱり緊張します」
撫でられて少しだけ緊張が解けたのか、
えへへと、少し強張りながらも笑顔を向けるフラウ。

暫く待つと、別の衛兵が現れ、
領主の執務室へ二人を案内する。
先導する衛兵の後を、フィルは緊張しているであろうフラウの手をとって続く
暫く廊下を歩き、執務室の前に到着すると
衛兵は前に立ち、ドアをノックする
「どうぞ」
中から男の声で返事が返り、衛兵は一歩下がるとドアを開ける
二人は衛兵に礼を言って部屋の中へと入った。

執務室は一方の壁には街と周辺地域の地図と、今月の予定表
もう一方の壁には資料庫を兼ねているのであろう大きな本棚
そして、その部屋の真ん中の事務机では中年の貴族が作業をしており
ドアの開く音に気が付くと、顔を上げフィルに向かって挨拶を送ってきた。

前に来た時から思っていたことだが、
貴族の部屋にしては「質素」な部屋だった。
とはいえ、飾り気が無いながらも、よく整頓されており
部屋の主人の性格が良く表れているように思えた。

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