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神様は働かない 作者:shiro
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邪神さんと生贄さん 15

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街に到着する少し前、
もう暫く道を進むと街の領域に入るという所で
フィルは周囲に人がいないことを確認すると
道から少し外れ、木陰へと馬を寄せた。

「あれ、どうしたのですか?」
フラウが不思議そうに後ろのフィルを見上げる。
「この辺で、馬から降りておこうと思ってね」
「町までお馬さんではないのです?」
どうして馬から降りるのか分からずに質問するフラウ。
「ああ、この馬は魔法で作り出しているからね。時間が経つと消えちゃうんだ。明日の夜ぐらいまで大丈夫だろうけど、万が一、街中で馬が消えたら、いろいろ面倒になるだろうからね」
「あ、確かに驚くかもですね。泥棒がいるかと思っちゃうかもです」
なるほどーと、フラウも納得する。
「そういう事、まぁ他にも、街に入る時に徒歩のほうが安く入れるだろうし、街で厩を借りるのもお金がかかっちゃうしね」
どうせ街中では馬はそこまで使わないだろうから、
消していったほうが良いかなと思ってね。
そう言いながら馬を止める。
「さてと、この辺でいいかな。ここで馬は消していこう」
フィルが先に馬から降り、フラウを支えて降ろす。
フラウの小柄な体は、楽々と持ち上がり、ゆっくりと地面に足を着く。
「えへへ、ありがとうございます」
「どういたしまして、ずっと座っていてお尻痛くなってない?」
「ちょっとだけ痛いですけど。でも少し歩いていれば大丈夫ですー」
元気に笑うフラウの頭を撫でてやり、二人は街道へと戻る。

暫く街道を徒歩で進む二人
道沿いは最初は民家も何も無い荒野だったが
次第にあたりの景色は牧草地となり、それから麦畑へと変化する。
少し離れたところには、農家であろう家が四、五軒、身を寄せ合うように建っており
その近くでは農作業をしている農夫達の姿が見える。
「この辺までくると賑やかな感じがしてきますね」
「確かに、ここまでくれば盗賊も来ないだろうし一安心だね」
この辺なら、何かあれば街の衛兵が出動することも可能なのだろう。
農夫達の動きは危険を感じられない、のんびりとしたものであり、
フィルも安全な領域に入ったのだと実感する。

更にしばらく歩くと、街に入らない旅人や
夜たどり着いて、中に入れなかった旅人などを相手にしているのだろう
街道沿いに宿屋や商店が立ち並ぶ通りを抜け、
更に進むと、ようやく街の門が見えてくる。
「やっと着いたね。歩きだとこれだけの距離でも結構かかるもんだね」
「はい。でも街ってすごい賑やかなんですね。さっきのお店の通りもすごく人が沢山で」
通りには宿屋や食堂だけでなく、
雑貨屋や土産物屋まであり
近くに住むの農民や、
街の中に入らず素通りする旅人などでそれなりに賑わっていた。
村と比べて賑やかで活気がある通りを、
フラウはずっと興味深そうにあちらこちら見ていた。
特にどこにも寄らずに真っすぐここまで来たが、
やはり気になっていたのだろう。

「ははは、街の中には、もっと色々あるはずだから、後でゆっくりまわろうね」
「はいです!」
楽しみですと、本当に嬉しそうなフラウ。
そんな風にのんびり歩き、いよいよ街の入り口間近となり、
二人は街に入るために並んでいる人の列へと向かった。

門の入り口では兵士が二人立っており
その兵士へ向かうようにして、、
行商人や、野菜を売りに来たらしき農民、
傭兵など、老若男女、様々な人々が並んでいた。

兵士は彼らを一人ずつチェックし、中に入れていく。
片方の兵士がおかしな動きがないか常に見張り
もう一人が羊皮紙に書き留めながら、
街に来た理由を確認し、
応じた通行料を徴収し、
必要に応じて荷物を確認する。
時折、近所の農民と思われる老婆を気遣ったり、
商人に周辺の情報を伝えたりしている所を見ると、
顔なじみからの評判は悪くないようだった。

「わぁ……なんだか緊張しますね」
次第に短くなっていく列に、フラウが少し緊張した面持ちで話しかけてくる。
フラウの住んでいた村には兵士のような存在はおらず
どうしたらよいのか分からないのだという。
不安そうに話しかけるフラウにフィルは大丈夫だよ頭を撫でてやる。
「僕らは買い物に来ただけだし、普通に通る分には、通行料を支払えば通してくれるよ」
「そうなんですか? でも簡単に通しちゃってもいいのです?」
少し不思議そうにフィルの方を見上げるフィル。

「ああ、普通の人なら簡単に通してもいいんだよ。門番というのは、危険な相手が街に入ったりしないよう街の治安を守るための仕事だからね」
「ちあん、なのです?」
「そう。こうして壁を作って、出入りできる場所を制限するんだ。あとは門で見張っていれば、怪しい人が入ろうとしているか分かるようになるからね」
「なるほどですー?」
門の無い村でずっと育った少女からすると実感が湧き難いのだろう。
へぇという感じで門を見渡すフラウ。

そうこうしているうちに二人の番がやってきた。
「次の者!」
「はっはい!」
普段こういったきつめの呼びかけには慣れていないフラウは、
兵士の呼びかけに思わずうわずった返事をしてしまう。

少女のうわずった声におや?っと思った兵士は顔を上げると
納得した様子ですまなそうに笑顔を作る。
「お嬢さんはここへは初めてかな? 驚かしてしまってすまないね。」
「はっはい、初めてです!」
「そうかそうか、お嬢さんが悪いというわけじゃ決してないから、安心をしていいからね」
「はいっ」
それで、と、兵士はフィルのほうを顔を向ける。
事務手続きをお願いしますといった顔だ。

「それでは名前とこの街へ来た要件を。あと、通行料は二人なら銅貨二枚だ」
「名前はフィル・シグレス、この街にはフィード村の雑貨屋の女主人から食料を買ってきて欲しいと頼まれてやってきました。あとは、日用品の買い物をする予定です」
名前を聞いた兵士の方が、再度おや? という顔になる、
羊皮紙から顔を上げるとフィルの顔を再度よく確認をする。

「失礼ですが、フィル・シグレスというのは貴方の名前で間違いないですね?」
「はい、そうですが?」
口調が変わったことに少し疑問を感じながら答える。
兵士は暫くフィルの顔を見ていたが、ふぅっと息を吐くと、
門の奥にいる、別の兵士を呼び、何事かを伝えた。
兵士は了解の旨を伝えると、門の向こう、街の中へと行ってしまった。

「すみませんが、領主よりフィル・シグレスという方が来たら、呼んで欲しいと命令されているのです。内容は知らされていないので答えることができないのですが、今、紹介状を取ってこさせますので、暫くそちらで待っていてもらえますか?」
「はぁ……わかりました」

兵士の案内でフィル達は一旦列から外れ、詰め所へと入った。
兵士は部屋の中に置かれたテーブルを指さすと
「そこの椅子に座ってお待ちください」
といい、再び検問の業務に戻っていく。

詰め所の中、フラウと二人残されたフィルは
とりあえず辺りを見回してみる。
光の殆ど差し込まない詰め所は
誰も居ないせいか、少し重い雰囲気で圧迫感を感じる。
フラウの方を見てみると雰囲気に怯えてしまったのか
そわそわと、辺りを見回していた。

初めて訪れた街で、兵士に呼び止められ、
さらには詰め所に入れられてしまうという目にあったせいか、
傍目にも怯えているのがよく分かった。
「はは、大丈夫だよ。とりあえずは座って待っていようか」
フィルはそんなフラウの頭を撫でてやり、自分は席に座る。
「は、はい……そうなのです?」
大丈夫と言われたものの、
いまいち信用できないのか不安そうにフィルを見るフラウ。

この街の領主は、フィルが裏切り者を追い詰めるときに
手伝ってくれた人物であり、裏切り者の兄であった。
裏切り者を追っている時は、何度か行動を共にしたこともあり
フィルが徐々に若返っていたのを間近で見ていた人物でもある。
今のフィルを見てもややこしい事にはならないだろう。

そのため、あまり心配はしていなかったが、
何も知らないフラウの方は、そう言う訳には行かず
フィルの隣の席に座った後も、不安そうに辺りを見回している。
「大丈夫だよ。ここの領主とは以前会ったことがあるんだ。あの兵士も言っていたように、おそらく僕に用事があるだけなんだと思うよ。それも、たぶんそれほど大事な用事でもないんじゃないかな」
重要な要件なら村まで使いを出すはずだ。
たぶん、渡したい物があるとか、そんな所だろう。

知り合いという事で、ほっとしたのだろう。
ようやく肩の力を抜くフラウ、
代わりにひどいですと少しジト目でフィルを見つめる。
騙すつもりだった訳ではないので、言いがかりだとは思うのだが、
ごめんねと頭を撫でて許してもらうことにする。

暫く待っているうちに、使いに出ていた兵士が戻り、
彼から紹介状を受け取ったフィルはようやく街の中に入ることができた。

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