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神様は働かない 作者:shiro
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邪神さんと生贄さん 13

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風呂も洗濯も終え、ひと段落したところで、
昼間に雨を降らせて日照量を減らすよりは
今のうちに降らせておいた方が作物の成長を妨げないだろうという事で
フィルは明日の分の雨を夜のうちに降らせておくことに事にする。
フラウには雨に濡れないよう玄関の軒の下にいるように言うと、
庭に出てコントロール・ウェザーの呪文を唱える。

「あの高台でなくて大丈夫なのです?」
「ああ、場所は分かったからね。ここからでも、もう大丈夫さ」
戻ってきたフィルへと質問するフラウに、地形は把握したから大丈夫と答えるフィル。
確かにフィルの言う通り、
畑のある方角にかけて大きな雲が出来上がり、
じきに大ぶりの雨となり遠く畑のある場所へと降り注ぐ。

これで明日の分は大丈夫と屋敷へ戻ると、
二人はいよいよすることが無くなってしまった。
居間のソファーに二人、なかなか話題も見つからず、静かな間が少し居心地悪い。

「なんだか、話すことが無いと、何をしたらいいかわかんないですね」
「ははは、確かに。昨日はなんだかんだで一日忙しかったからね」
少し困った笑顔でいうフラウに、フィルも同意する。
昨日は色々することがあったおかげで、会話の話題もあったし
それこそ時間をつぶすに持って来いの事もあったのだが、
こうしてのんびり出来るとなると、
子供、それも少女と接する生活とは、十数年縁のないフィルには
どう話しかけたらよいのか分からず、必死に言葉を考える。

「フィルさんはいつもは夜は何をしているのです?」
そんな中で先に、話題を出してくれたのはフラウの方だった。
フラウの優しさに感謝しつつ、フラウの質問に答える。
「そうだなぁ、魔導書を読んだり、時間があるときはマジックアイテムを作ったりしてたかな」
「マジックアイテムですかーなんだか魔法使いさんっぽいですね!」
普段の生活では聞かない単語にフラウの顔が好奇心で一杯になる。
そんな様子をこちらも嬉しそうに見ながら、フィルは応える。
「ああ、簡単なアイテムだけどね、冒険に使うワンドとかスクロールを作っておくんだ。魔法使いは一日に唱えられる呪文の数に制限があるからね。暇を見てはスクロールを作って貯めておくんだよ」
「スクロールってどんな事に使うのです?」
「スクロールやワンドにはあらかじめ魔法を込めておくことが出来るんだ。いざとなったらそれを開放して魔法を使うんだよ。そうすれば、自分が唱えられる数以上の魔法が一日に使えるというわけさ」
なるほどーと、魔法についてあれこれを想像しているフラウを見ていると、
ついつい頭を撫でてしまう。

フィルはふと思った。
自分はこんなに子供の頭を撫でてやるような人間だっただろうか?
これまでの自分は、それこそ夜の時間の殆どは
戦力を補強するためにスクロールやワンドの補充や、
剣や魔法の修練に費やすような人間だった。
過去の自分とのあまりの違いに疑問を覚えながらも、
今、こうして喜んでくれている少女を見ると、
それでいいんじゃないか。この時を大事にしたいという気持ちが強くなる。

「ああ、そうだ、明日は街に買い出しに行こうと思うんだ。そのあとは一日向こうで宿に泊まるつもりなんだけど、フラウも一緒に来てくれるかい?」
「はい! 私、街って行ったことないんです。ちょっと楽しみです」
えへへ、と笑うフラウ。
そんなフラウを見ていると、もっと喜んでもらいたい、そんな気持ちになる。
「たぶん街なら、服もここで買うより可愛いものがいろいろ売っているよ。街に着いたら何着か買っておこう」
街ならきっと良い服が見つかるだろう。
フラウの事だからきっと喜んでくれるだろうと期待したフィルだが、
当のフラウからの反応はなく、おや?と思いフラウを見てみる。

フラウの表情は嬉しさと、少しの怯えが混じったような、
何とも言えない表情だった。

「他にも美味しいものとかも街にはあるはずだよ、いろいろ見て回ろう?」
フラウの頭を撫でてやりフィルは言う。
明日もきっと楽しいよと。

当のフラウはそんなフィルに聞いても良いものか。
幼いながらも考えて、何度かの逡巡の後、
意を決したのか、ようやく顔を上げて尋ねる。

「フィルさん、どうしてフィルさんは、こんなに優しくしてくれるのですか?」
不安そうにフラウが尋ねる。
フィルには私に優しくしなければならない理由などないはずなのにと。
「う~ん、そうだなぁ……」
考えるまでもないのだろうが、少し考えるふりをしてみる。
フラウを見てみると、
やはり聞いてしまったことを後悔しているのか、
不安そうな顔をしていた。
そんな顔をしなくてもいいのにと
フィルはもう一度少女の頭を撫でてやりながら
少し冗談めかして言う。
「まぁ、こんなかわいい女の子が目の前で悲しんでいたら、助けない道理はないさ」
「でも、それじゃあ、綺麗な人がいたらその人も助けるんですか?」
少しむくれた様子のフラウ。すこし気持ちを隠し過ぎたかなと反省し、
少しだけ本心を出す事を決心する。
「まぁ、助けるだろうけどね……でも」
と言うや、フラウをぐいっと抱き寄せる。
不意を突かれてフラウはフィルの腕の中に納まってしまう。

「その時は、フラウも一緒にその子を助けてるのを手伝ってほしいな」
だめかな? と、たずねるフィル。
本心としては、この子と一緒に居たいから助けた。それだけだった。
それは、これまでずっと戦いに明け暮れていたことの寂しさもあるし、
これから先、一人、神として孤独にいることへの恐怖もある。
ただ、それを口にするのはどうしても気恥ずかしい。
口に出すことが出来ないフィルはとりあえず行動で伝える。

フラウは少しの沈黙の後、
「……そうすれば、フィルさんとずっと一緒にいてもいいです?」
見れば、上目遣いにこちらをきちんと見据えている。
びっくりはしたみたいだが恐怖とかはしていない事に安堵して
フィルも不器用ながらも一生懸命優しく答える。
「ああ、もちろん。他にも一杯手伝ってもらいたいことがあるんだ」
「それじゃあ、お手伝いします。約束ですよ?」
「うん、約束だね」
えへへと抱きつくフラウ。
やっと機嫌を良くしてくれた少女にほっとしながら、
二人は明日に備えて休むことにした。

先にフラウをベッドに寝かせて、フィルは一人
ソファーで呪文書を開き、呪文の調整を行う。
明日は長距離の移動だから、マウントの呪文を用意しておくか
道中、盗賊がいる可能性もあるから攻撃呪文はそのままにしておくか
コンティニュアル・フレイムに取っていた分は
別の呪文にしておくか
そんなことを考えつつ、明日の呪文を準備し
全ての準備を終えたフィルは、ソファーに横になり、眠りについた。


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