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神様は働かない 作者:shiro
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邪神さんと生贄さん 11

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食堂を出た二人は、
雑貨屋に戻り紹介状を受け取り、
目下の用事を全て済ませると、
フィルの提案で高台から見えた放牧地の横を流れる小川に寄ることにした。

この川はフィル達の家がある山と、放牧地を分けるようにして流れており、
その流れは村の横を流れている本流へと続いていた。
村からしばらくはフィル達の家へと続く山道に沿って流れ、
途中から、山道は東へ向かい、川は北へと別れる。
村を出た二人は暫く川沿いの道を歩き、
道と川と別れる場所に到着すると河原へと降りた。

小川のこちら側の河原は渓流らしく木に覆われた山の中といった地形なのだが、
しばらく川を上流へ上ると、向こう岸に牧草地跡が見えてくる。
山の中を流れる渓流らしく所々にごつごつした岩が顔をだしてはいたが、
流れはそれほどきつくはなく、川幅が小さいこともあってか、
大分干上がってしまった本流とは異なり、
ここしばらく続いている日照りにもかかわらず十分な水量の水が流れていた。

「きれいな水だね。魚も結構いるようだ」
水の中を覗き込むと、村人たちが来ないせいだろうか、
大小さまざまな魚が泳いでいるのが見える。

「この辺りはドラゴンやオークが出るから、釣りや山菜採りに来ちゃ駄目だったんです」
水面に手をつけて、冷たさを楽しみながら、
それまでは釣りや川遊びとかで良く使っていたそうですと、フラウは説明をしてくれた。
フィルも一緒に水に手をつけ冷たさを楽しむ。
遠くの山々からの湧き水よってできたのであろう川は
初夏だというのにひんやりとした冷たさだった。

「なるほど……まぁ、今となってはどちらもいないし、ここもそのうち村人が来るようになるんだろうね。ああ、村人が来てないなら、今なら山菜も見つかるかもしれないな」
「あ、そうかもですね」
二人でしばらくキノコや山菜を探す。
あいにくキノコは見つからなかったものの、
山間の川沿いもあってか小一時間ほどでミズにミョウガにノビル、クレソンまで見つかった。

「これは大漁だね」
「はい! でも、これって食べられるのです?」
「ふっふっふ。結構おいしいんだよ、これ」
普段食べていない食材だからだろう。
少し心配そうなフラウに対して、
旅の途中、野宿の時に何度か食べているフィルは自信をもって答える。

元のパーティの時はレンジャーがおり、
山で野営をするときなどは彼に教わり
こうした食材を取っては食事の足しにしていた。

バッグのおかげで保存食の積載量を気にする必要がなく、
食料が尽きるなどの心配とは無縁のフィル達であったが、
さすがに何度も保存食を食べていると飽きが来てしまい、
急ぎでない時などは早めに野営の準備をして、
なるべく、このような現地で採れた食材や市場で買った食材などで料理を楽しんでいたのだった。

「僕もそこまで詳しいわけじゃないけど、これらは大丈夫なはず。あとは、魚を少し獲って帰ろうか」
「はいです! でも、釣り道具って持ってきてます?」
「もちろん!」

そういうとフィルはバッグから折りたたまれた釣道具とバケツ取り出す。
竿を組み立てると手ごろそうな場所を注意深く探し、
良さそうな岩を見つけると、その上に座り込み、糸を垂らし始めた。

「ここならたぶん大丈夫かな。少し待っててね」
「はーい」

フラウもフィルの横にちょこんと座り、釣竿の先を興味深そうに眺める。
暫くすると竿が揺れる。
テンポよく竿を持ち上げると、そこには大きく肥えた魚がぶら下がっていた。

「すごいです! もう釣れたんですか!?」
「あはは、実はこの竿が特別製でね、前にノームの職人が作ってくれたんだ」

水に入ると、針が近くの魚を見つけ目の前で本物の小魚のように動くのだそうだ。
おかげでプロの腕前の無いフィルでも殆ど苦労せずに魚を釣ることができた。
その後も三匹ほど釣りあげ、バケツも十分になったところで家へと戻ることにする。

「今日の晩御飯のおかずは魚の塩焼きと山菜の炒め物ってところかなー」
「うふふ、楽しみですね」
家まで続く山道を登っている間、フィルは今日の晩御飯の献立をフラウに伝える。
バケツの魚を覗き込みながらフラウも嬉しそうに言う。

「フラウは何か好きな魚料理はあるかい?」
「やっぱりフライが好きですけど、焼いたのも煮たのも大丈夫です」

でも臭い時があるので、実はお肉のほうが好きなんです。とフラウ。
「魚は傷みやすいからね。あの臭みは僕も苦手なんだよね」
「新鮮なお魚なら大丈夫なのですけど、焼いたお魚は臭い時が多いから少し苦手なのです」
「内臓を取り除けばだいぶ臭みは取れるけど、やっぱり新鮮でないと身も臭くなっちゃうんだよね」
「そうなんです。ですのでこうして生きたままなのは大事なんです」
大切なのです。と、さら力説するフラウに笑って答える。

「はは、それじゃあ家に帰ったら死なないようにタライに放しておこうか。泥抜きにもなるだろうしね」
暫く話しながら登ると、家の前へと到着する。
家に戻ると厨房へ向かい、さっそくタライに魚を放す。
魚達はどれも元気が残っているようで、のんびりとタライの中を泳ぎ出した。

その後、雑貨屋で買ってきたものや、採ってきた山菜を片づけると、
夕刻というにはまだ少し早いという時間になった。

特に昼の間にしておかなければならない事も見つからず、
晩御飯の支度にもまだ少し早いという時間なので、
フィルは今のうちにランプの準備をすることにした。

「まだ明るいですけど、もうランプを点けちゃうのです?」
「ああ、準備にも少し時間もかかるからね」
そう言うと、フィルはバッグから小袋を取り出し、
その中から赤い宝石を取り出した

「綺麗な宝石ですね!」
普段の生活では見ることがない大ぶりで美しい宝石に目を輝かせる。
「これはルビーだね。で、これを粉にします」
そういうと、さらにバッグから黒く光る金属のすり鉢と乳棒を取り出し、
ルビーをすりつぶし始めた。

「えーなんかもったいないです!」
「いや、今回使う魔法にはこれが必要になるんだ。試薬が切れてしまっていたんでここで作っておかないとね」
尚も勿体なさそうにみるフラウを宥めつつ、
宝石をすりつぶす。暫くすると宝石は赤い粉末になった。
粉末をすべて容器に入れ、そこから粉末を一つまみ取り出すと、
それをランプの芯につけながら呪文を唱え始める。
するとランプに炎がともり赤々と燃えだした。

「火をつける魔法だったんですか? でもそれだったら普通に火を点けれますし、宝石を使うのはもったいない気がします」
「ふふ、じゃあ、これはどうだい?」
まだ使った宝石に未練があったのだろう。
やはり宝石を使うのはもったいないというフラウに、
フィルは少し楽しそうに、炎に手を差し込んだ。

「危ないです! 早く手をどけないと!」
「大丈夫、大丈夫、見てごらん」
炎にあぶられ慌てるフラウに対し、
フィルは涼しい顔で炎の上で手を動かす。
「この炎は特別でね、熱くない代わりに消えることがないんだ。コンティニュアル・フレイムという明かりの魔法だよ」

この炎ならライトみたいに一つしか出せないというともないしね。とフィル。
買ってきた残りの二つと、昨日使用人の部屋で見つけたランプにも炎を灯し、
居間と、二人の自室、それと1階の廊下と階段前、
2階の二人の部屋の前の廊下に一つづつ設置する。

「さすがに通路に三つじゃまだ暗いけど、これで少しは怖くない……と思う」
取り付けてはみたものの、明らかに照らす範囲が足りておらず、
いまだ屋敷のかなりの場所が暗い状態だった。

「ごめんね、もう少し明るく出来ればいいんだけど、あの魔法、明るさは普通の炎と同じぐらいしか明るくないんだ」
「ううん、大丈夫です。とっても明るくなりました! あ、でも……夜はやっぱり一緒にいてくださいね?」
「うん、わかったよ」
ごめんねともう一度頭を撫でてやり、
夕刻も迫ってきたこともあり、そろそろ晩御飯の支度を始めることにした。


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